孝弘、勝一、そして若干の訂正 - Living, Loving, Thinking, Again より。
これっていつ頃のことだったか思い出せなかったのだが、ネット検索したらあっさり引っかかった。
http://www.bk1.jp/review/0000435488 に掲載されている「良泉」という人の書評より。
少し古いが,週刊金曜日2005年1月14日号・1月21日号誌上に,“あの”本多勝一同誌編集委員による小沢一郎インタビュー記事が載っている。記事から感じられる印象では,なんと両氏は意気投合。本多勝一氏「いま現実に政権を自公から奪える一番手が民主党だと思います。(略)党首は小沢さんが一番適任ではないかと思いました。」さらに,インタビュー後記でも本多勝一氏は,「かなり基本的な認識で小沢氏と共通するとは意外だった。」「論理の一貫性でも明晰な頭脳が感じられ,(略)」と絶賛に近い。
しかし,やはり,その言葉の豪快さやわかりやすさだけにごまかされてはいけない。小沢一郎を評価するには彼のウェブサイトに示される「日本国憲法改正試案」や「日本一新11基本法案」をじっくり読み解く必要がある。そしてかつて「壊し屋」と言われた政治手法も。
本屋で『週刊金曜日』に載ったこの記事を立ち読みした記憶は確かにあるが、2005年1月だったのか。ということは、岡田克也が民主党代表の頃で、「郵政総選挙」の8か月前。そんなに最近のことだったとは意外。だが、この頃から『週刊金曜日』が変質し始め、2007年の参院選以降は「小沢信者」御用達に近い存在になっていった。2005年に本多勝一が小沢一郎を絶賛したのと同じ頃、私は掲示板*1がネットの本拠地で、よくホンカツを批判していたものだった*2。
横路孝弘と本多勝一については、昨日たまたま本屋で下記の本を立ち読みしていたら名前が出ていた。

- 作者: 「週刊新潮」編集部
- 出版社/メーカー: 新潮社
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『週刊新潮』が朝日新聞に載った本多勝一の連載記事「中国の旅」(1971年)をこき下ろした記事の中で、当時30歳の社会党代議士・横路孝弘が本多勝一の当該記事を絶賛していたのだった。
なお、上記の本には「西山事件」の一審判決(1974年)にぶつけた形で出された、蓮見喜久子元外務省事務次官の「手記」が掲載されている。この手記が現在TBSテレビで放送中のドラマ『運命の人』の原作にそっくり引用されているのには驚いた。

- 作者: 山崎 豊子
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- 作者: 山崎豊子
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- 作者: 山崎 豊子
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『運命の人』は、当ダイアリーで取り上げた以上原作を読まなければ、と思って少し前に買って読んだ。『週刊新潮』から引用されているのは第3巻の第十章「明暗」において、171頁から186頁までであり、固有名詞が「西山」→「弓成」、「毎日新聞」→「毎朝新聞」、「安川」→「安西」などに書き換えられている他はすべてそっくり引き写されている。
昨日立ち寄った神保町の某書店の文庫本売場では、『運命の人』のすぐ隣に『「週刊新潮」が報じたスキャンダル戦後史』が置かれていた。おそらく、後者に蓮見元事務官インタビューが載っていることを知っている店員の仕業だろうが、なかなかやるなあと感心した。
これを読んで、著者の山崎豊子がしばしば「盗作」騒動を起こしたことを思い出した。この作品の初出は『文藝春秋』とのことだから、著作圏の問題はクリアされているものとは思うが。
ただ、一点だけ買えるのは、山崎豊子の『運命の人』は、いわゆる「ひそかに情を通じ」という文言のある起訴状でセンセーションを巻き起こした事件を扱いながら、小説を「三角関係の物語」にはしていない一方、過剰に主人公に思い入れしたストーリーにもしていないことだ。実際の事件に即して言えば、西山元記者寄りの立場に立ちながら節度を守っているといえようか。山崎が参考にしたという澤地久枝の『密約』の頁もめくってみたが、澤地のルポも同じスタンスに立っているように見えた。というか澤地のルポを下敷きにして山崎が小説を書いたというのが本当のところだろうけれど。

- 作者: 澤地久枝
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1974年1月に「西山事件」の一審判決が出た時の週刊誌や新聞報道については、すっかり忘れていたけれどもこの本で思い出させてもらった。女性週刊誌にも夫婦で出まくっていた蓮見元事務官を「哀れな被害者」一辺倒で見るのはやはり公正ではなかろう。澤地が指摘しているように、蓮見元事務官と西山元記者夫人との関係でいえば、元事務官が「加害者」、西山夫人が「被害者」になる。なお、当時ナベツネ(渡邉恒雄)は蓮見元事務官に疑義を呈する記事を『週刊読売』に書き、法廷でも証言台に立って西山元記者を弁護したとのことで、現在放送中のドラマで悪役として描かれている「山辺一雄・読日新聞記者」*3がそういう活躍をするシーンが今後出てくるのかどうか興味がある。
小沢一郎の話に戻ると、小沢と原発の件については、「『小沢信者』が鈴木善幸の〈手柄〉を横領している」とは確かにいえる。朝日新聞記事によると、小沢は原発誘致に「賛成を表明していた」とのことであり、石川知裕が何か書いているらしいとの話を聞いたのでこの本もついでに立ち読みしたが、小沢が言ったという「オレもあまり積極的に引っ張ってこようという気はなかったな」というのは、「積極的な原発推進派ではなかった」と小沢が弁解しているという以上の意味は持たない。同書によると、岩手県では「小沢先生が頑張ったから岩手には原発がない」という話がまことしやかに流されているそうで、リアルの小沢支持者もネットの「小沢信者」もやることは同じだなと感心した*4。小沢一郎は、自らについて流されるそういう風評を利用する政治家であるとはいえる。

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いろいろ立ち読みしたが、結局昨日買ったのは下記の本だった。

六ヶ所村の記録――核燃料サイクル基地の素顔(上) (岩波現代文庫)
- 作者: 鎌田慧
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六ヶ所村の記録――核燃料サイクル基地の素顔(下) (岩波現代文庫)
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この本への言及がある 横板に雨垂れ TPPへの懸念、小沢一郎氏への疑念 より引用する。
(前略)91年の青森県知事選における自民党政府および小沢氏の動きについて、鎌田慧氏のルポルタージュ「六ヶ所村の記録 上下」(岩波書店1991年) には下記の叙述がある。
「地方自治体の選挙に政府が干渉するのはおかしい。準公共企業体の独占企業の団体である電事連が選挙を請け負って、カネをふんだんにだしている」
これが「核燃選挙」といわれる知事選の実態である。やってきた自民党の小沢幹事長は遊説にまわらず、青森市内のホテルに陣取って土建業者を呼びつけ、ひとり3分ずつ面会した、とのエピソードは、よく知られている。現職候補と自民党は、県財界、農漁業団体はおろか、保育園のはてまで締めつけていた。(六ヶ所村の記録 下)
「岩手に原発がないのは誰のおかげか」云々よりこの件の方がよほど問題だとは、前々から主張している。