kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

「女エルズバーグ」になれなかった蓮見喜久子元外務省事務官

今週号の『週刊現代』にテレビドラマで話題の「西山事件」のグラビア記事が出ていたので立ち読みしたが、そこでも元外務省事務官の名前は徹底的に伏せられていた。

だが、光市母子殺害事件で死刑が確定した死刑囚とは異なり、蓮見喜久子氏を匿名にすべき理由はないと私は考える。その最大の理由は、TBSのドラマ『運命の人』で次回放送されると聞いている一審判決のあと、蓮見氏が積極的にメディアに露出したことだ。『週刊新潮』に掲載された「手記」は有名だが、テレビのワイドショーにまで出演した。本人にその気がなければ決して実現しなかったことだ。それから38年の月日が経つとはいえ、この事実は消えない。

ドラマや小説、それにナベツネの週刊誌への「寄稿」などによって、西山太吉毎日新聞記者が「ひそかに情を通じ」たとされてきたのはいささか事実とは異なり、むしろ蓮見元事務官の方が積極的だったのではないかとの見方がようやく浸透し始めているようだが、そうは言っても西山元記者と蓮見元事務官との関係においては、情報源を秘匿できなかった西山元記者が「加害者」であり、蓮見元事務官が「被害者」であることは揺るぎない事実だ。しかし、蓮見元事務官と西山元記者の夫人・啓子(ひろこ)さんとの関係においては、蓮見元事務官は紛れもなく「加害者」だった。さらに、週刊誌への「手記」の掲載(実際に書いたのはもちろん週刊誌の記者だろうが)や、ましてやテレビのワイドショーにまで出演して、「密約」を下半身の問題にすり替えることに大きく寄与したのはほかならぬ蓮見元事務官である。それら一切合財を考慮すると、蓮見氏の実名を出すのがタブーになっている理由は、私にはどうしても理解できない。『週刊現代』のグラビアも、蓮見夫妻が女性週刊誌などに露出しまくっていた事実を報じているが、実名は伏せられ、顔写真は両目のあたりが黒く太いラインで塗りつぶされている。

さらに言いたいのは、小説やドラマによって不当な戯画化をされた(ように私には思える)「蓮見さんのことを考える女性の会」の活動が、蓮見氏の実名を出さない限り「黒歴史」にされてしまうことだ。これはおかしい。前々回及び前回のテレビドラマでも、市川房枝氏をモデルにしたと思われる女性が「坂元弁護士」(史実では坂田弁護士)の自宅に押し掛ける滑稽なエピソードが挿入されていた。

私はネット検索をかけて、「蓮見さんのことを考える女性の会ニュース」を閲覧した。それらを読む限り、同会は真面目でまっとうな主張をしており、ドラマで描かれていたような「三木昭子元事務官の気持ちも考えない身勝手な女性運動」などではなかったことは明白だと思った。

一方、同会の支援を断り、西山元記者を有罪に追い込むための権力の動きに手を貸した蓮見元事務官は、現在の視点から批判にさらされても仕方がないと考える次第である。

なお、この件を調べていて何度か出てきたのが「エルズバーグ」という固有名詞だった。ベトナム戦争に関するペンタゴンの機密文書をニューヨーク・タイムズに流したダニエル・エルズバーグに蓮見氏がたとえられていた。しかし、蓮見喜久子氏は「女エルズバーグ」にはなれなかった。