kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

なぜ橋下徹が安倍晋三や石原慎太郎より「危険」なのか(後編)

前編(http://d.hatena.ne.jp/kojitaken/20120320/1332215280)より続く。

「きまぐれな日々」のエントリ「ナベツネは単なるワンマンマン、橋下徹の方が1万倍危険だ」*1のコメント欄より、橋下がヒューイ・ロングという1930年代のアメリカの政治家に似ているという話。


http://caprice.blog63.fc2.com/blog-entry-1246.html#comment14003

森田実という政治評論家は保守に属すると思うが、そのバランス感覚に富んだ姿勢を評価しています。
少なくともリベラルを標榜しながら、そのバカサヨぶりをさらけ出す福岡政行よりはずっとマシです。


さてその森田氏のHPで橋下と酷似したアメリカの政治家「ヒューイ・ロング」が紹介されています*2。紹介記事は産経12月14日。東谷暁氏「地域独裁がもたらす驚異」*3。全文引用すると長いので要点だけ挙げます。
橋下との類似点です。

  • 弁護士資格を取得して活躍
  • 刺激的な演説で支持者を増やし
  • 政敵たちを既得権者とくくって口汚く攻撃する
  • 富裕勢力に対しては、州法を改変し重税を課して貧しい州民の溜飲を下げさせ

ついには「反対派をたたくため新聞を規制し、民兵まで組織して独裁を確立」させたといいます。さすがにまだ橋下はここまでは行っていませんが、新聞を教員に置き換えればやっていることに大差はないように思えます。


なお橋下が主張する「資産没収」を思わせる「富裕層に増税」というのも富の再分配のためではなく、またロングもその有効性を信じてはおらず、「単に敵を設定して大衆の熱狂を背景に敵を倒し、さらなる権力を手にすることにつきた」ためでした。
ロングは暗殺されたという説と、暗殺自体が陰謀という説があり、どうもその死の原因がはっきりしません。彼の行為は「アメリカン・ファシズム」と呼ばれましたが支持者(信者)は彼の死後も彼を信奉し続けたと言われています。


ヒューイ・ロングは大恐慌時代1930年代の政治家です。おそらくはこうした事実を積み重ね、海外の先進国はポピュリズムの危険性を学んだのでしょう。日本はまだそうしたものへの警戒心が育っていないのかも知れません。


2012.03.19 13:58 飛び入りの凡人


森田実はヒューイ・ロングの名前を知らなかったようですが、私も知りませんでした。森田実が引用している東谷暁は右派だが反新自由主義の論者。森田・東谷両氏のサイトへのリンクは簡単に見つかったので脚注をつけておきました。また、ロングの名前でネット検索をかけると、副島隆彦が肯定的に引用している記事が見つかります。


http://caprice.blog63.fc2.com/blog-entry-1246.html#comment14008

というのか以前から思っていたことなんだけど、ドイツなどで躍進著しい「海賊党」を日本的に展開させたのが橋下じゃないかって気がします。「決定する政治」ってのとは裏腹に、橋下がオリジナルで打ち出した政策って案外少なくて、寧ろその時々の「時流」に乗って何トカ八策とかぶち上げている様に傍目には見えちゃう。米軍基地の引き受け然り、脱原発然り・・・・・反貧困の潮流もベーシックインカムとか相続税100%とかで巧い具合に取り入れてますからね。


>飛び入りの凡人氏
そう言えば、ベーシックインカムで最初に連想したのがロングの目玉政策「富の再共有」だったりします。自分も『アメリカン・ファシズムhttp://amzn.to/whjdSr って本を読んでみたんですけど、ロングの「富の再共有」とベーシックインカム二重写しになってしまうんですよね。
ベーシックインカムマルクス主義起源だって言うかたもいますけど、ファシズムの先駆者の一人であるソレルだってマルクス主義の流れから来てますからね。自らを左翼で無いとまで自認した宇野弘蔵というのもいますし・・・・・


2012.03.19 21:34 杉山真大


橋下のように一方で「バサーット整理する」とか言っている人間の「ベーシックインカム」は間違いなく社会保障・福祉の切り捨てとセットになっているでしょうね。なぜなら歳出は絶対に拡大されない前提で現金給付をやるのだから、現物給付が縮小するに決まっています。そうじゃなくて、公共部門の財政規模を大きくする前提があってはじめてベーシックインカム社会保障や福祉の切り捨てを伴わないものになり得るのではないかと、私は単純にそう考えています。ベーシックインカムの財源が「ムダの削減」や「公務員の人件費カット」や「埋蔵金」だなんて思っているおめでたい人はまさかいないでしょうね。


http://caprice.blog63.fc2.com/blog-entry-1246.html#comment14011

(前略)
ヒューイ・ロングの場合は富裕税は単にルサンチマンをかきたて、自分への支持を高める材料でしかありませんでした。橋下は金を使わせて市場を活性化させようと強制的に買い物をさせようとしているわけです。これでは再分配とは無縁です。


福祉国家として知られるスウェーデンには富裕税も相続税贈与税もありません。
税収が安定すれば無理に貯金する必要はなく、相続などというものにたいした意味がなくなるからです。
要するに日本の政治家は考え方が反対なのです。資産がなくても生活できる(例えば医師になるためには2000〜4000万円かかります。これでは富裕層の子しか医師になれません)社会状況を作るのが先決です。


ちなみにスウェーデンの消費税は25%。ただし特定品目ありです。所得税は日本より高く、企業の社会保障費もはるかに高いです。日本での社会保障費の企業負担の低さは大きな問題です。


2012.03.20 07:17 飛び入りの凡人


「資産がなくても生活できる社会状況を作るのが先決」、これは本当にその通りだと思います。橋下や小泉純一郎新自由主義の方向性はこれとは正反対で、弱肉強食の世界になったから、成功者もいつ転落するかわからずビクビクしている。だから金を貯め込み、富裕層増税に反対する。企業も同じで、労働分配率を下げて内部留保を積み上げていく。そうじゃないて、まず社会保障ありきだろうと私は考えます。消費税増税派にしてもやみくもに増税に反対するだけの勢力(河村たかしの「減税真理教」もとい「減税日本」やそれを後押しする小沢一郎一派など)、もちろん橋下及び「維新の会」も、いずれも基本的に「小さな政府」志向の新自由主義的勢力であって、「資産がなくても生活できる社会状況」を現出させるビジョンを示し得ていないのではないでしょうか。それをやらずにおきながら、半ば強制的に金を使わそうとしてもうまくいくはずがありません。社会の混乱と荒廃を招くだけでしょう。


ここまで書いてきて、「後編」では「橋下がなぜ安倍晋三石原慎太郎より危険か」についてほとんど書いていないことに気づいた。要するに「看板に偽りあり」なのだが、「前編」を公開してからだいぶ時間が経つので仕方がない。

橋下が安倍より危険である理由は、「前編」で述べたように、ひたすら目標である改憲に向かって突き進むだけで国民感情を顧みない安倍よりも、大衆のルサンチマンを刺激することの得意な橋下の方が易々と改憲を達成し、その上ヒトラー的な独裁政治を行いかねないことに尽きる。石原慎太郎の場合は、もう年も年だし国政を牛耳ることなど結局できそうにもないことだ。なお、私は過去には今よりもずっと石原を恐れていた。たとえば2003年の都知事選に石原が出馬せず総理大臣を目指すとの観測が出て、ずいぶん神経質になったものだ。この時は、大嫌いな小泉純一郎ではあったが、石原の国政復帰だけは阻止してくれと念じた。結局小泉は石原に国政復帰のチャンスを与えず、石原はやむなく都知事選再選の道を選んだが、石原が総理大臣にならずに済んだことにほっと安堵した。その後、石原は東京都で威張るだけがせいぜいの人間となり、今年に入っての「石原新党」構想も、当初3月に立ち上げるとか言っていたのに現在ももめていて「立ち上がり」そうにもない。もはや「言うだけ番長」ならぬ「言うだけ老人」になってしまっており、橋下と比較したら100分の1ほどもアブナくないとしか私には思えないのである。あと小沢一郎については、橋下にすり寄るようではもうその政治生命は事実上終わったと見るほかない。

以上の理由により、現在もっともアブナイ政治家は橋下徹をおいて他にいないと考える次第である。