kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

ベーシックインカムについて久しぶりに

ベーシックインカムについて、2日のTBS「NEWS23」が取り上げていた。

http://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye2788434.html

全員に30万円!?ベーシックインカム導入是非、スイスで国民投票

 働いている・いないにかかわらず、国民1人あたり30万円、未成年には7万円を支給する・・・。スイスで5日、国民全員に一定のお金を支給する「ベーシックインカム」と呼ばれる制度を導入すべきか国民投票が行われます。議論を後押ししたのは「ロボット」技術の進化でした。

 「ここはチューリッヒの目抜き通りなんですが、ロボットに扮した集団が行進しています。ちょっと異様な雰囲気です」(記者)

 スイス・チューリッヒの町に現れたロボットに扮した集団。求めているのは「ベーシックインカム」と呼ばれる制度の導入です。これは、働いている、いないにかかわらず、全ての人に毎月一定のお金を支給する社会制度のことで、スイスでは、この制度導入を憲法に盛り込むかどうかをめぐり、世界初の国民投票が行われることになりました。

 導入を求める人々からは、成人1人に月およそ30万円、未成年に7万円を支給し、その代わりに、年金や失業手当などの社会保障を廃止するという内容が提案されています。それにしても一体なぜ“ロボット”が行進しているのでしょうか。

 「レギュラー、それともラージにしますか?」

 これは大手ピザチェーン店に配置される予定のウェイターロボット。おすすめ商品やカロリーまで教えてくれます。急激な進化を遂げるロボットや人工知能。将来、彼らに人間の仕事が奪われるという懸念が高まっていて、誰もが最低限の生活を送れるようベーシックインカムが必要だと訴えているのです。

 「全ての人間にはベーシックインカムが必要です。我々ロボットがいずれ、ほとんどの仕事をするようになりますから」(ロボットに扮した人)

 さらに、任せられる仕事をロボットに任せることで、人間は多様な働き方が選択できるようになるという主張も。映画業界で働くこの男性(39)は、妻と子ども3人との5人暮らし。提案どおりのベーシックインカムが導入されれば、受け取る金額は家族で月およそ80万円。スイスの物価は日本のおよそ2倍ですが、生活には困らない額です。

 「ベーシックインカムが導入されれば、働く時間を減らして子育てに充てられる。高収入の職を探すために苦労しなくて済むようになる」(賛成派 トビアスファウストさん)

 導入賛成派は、ベーシックインカムは働く意味を根本から変える提案だと話します。

 「『仕事』への意識や取り組み方を変えるべき。収入のために働くことだけが『仕事』ではない」(賛成派リーダー エノ・シュミット氏)

 しかし、スイス国民への世論調査によると、賛成は26%。「働く人が減るのでは」といった反対意見が多く聞かれます。

 「ベーシックインカムは働きたくない人のための制度。働きたくない人のために税金を払うなんて嫌だし、良くないこと」(反対派の市民)

 ベーシックインカムを導入すると、人々の生活はどう変わるのか。ドイツのベルリンでは実験が行われています。音楽学校で働くマイケさん。口座には毎月1000ユーロ、およそ12万円が振り込まれます。実験を行っているのは民間の団体。2年前からインターネットで寄付金を募り、抽選で選ばれた人に1年間、毎月12万円を支給しています。1人暮らしのマイケさんのもともとの収入は月20万円。受け取ったベーシックインカムは貯金に回しています。

 「安心感が生まれてリラックスできるようになりました。今の仕事は続けるつもりです。そのうえで、自分が本当に大切だと思うことや社会貢献ができるような気がします」(マイケ・シュミッツさん)

 これまでの受給者は36人。実験を行っている団体は受給者の印象をこう話します。

 「受給者は皆、イキイキと働くようになりました」(支給実験行う民間団体の代表)

 しかし、国レベルでの導入は社会制度の根本的な見直しが伴うため簡単ではありません。国民投票を前に、スイス中部の町では町民らが夜遅くまで議論を続けていました。

 「ベーシックインカムをもらったら仕事を辞めると答えたのはわずか2%です」(賛成派)

 「いったい財源はどこにあるんだ!」(反対派)

 賛成派は、年金などを廃止し、社会保障費を見直すことで制度に必要な年間23兆円を捻出できると主張。反対派は、それでは足りず、増税は避けられないと反発しました。国民投票は5日に行われます。スイス国民は、どのような判断を下すのでしょうか。(03日00:59)

(TBS「News i」より)

この報道に関して、「2ちゃんねる」に

【悲報】日本人の95%がベーシックインカムに反対 「労働意欲が落ちる」「働かざる者食うべからず」「ニートだけが無駄に得を制度」との声

というタイトルのスレッドが上がったようなのだが、「95%が反対」の文字は、上記TBSのサイトには出ていない。当日のNEWS23はテレビはつけていたがいつもと同じように半分くらいしかまともに聞いてなかった。日本では反対が多いようなことを言っていたような気はするが、断言はできない。

そのベーシックインカムについて、コメントをいただいた。

http://d.hatena.ne.jp/kojitaken/20160604/1465010337#c1465095794

id:suterakuso 2016/06/05 12:03

私がkojitakenさんと「昔えらく喧嘩した」原因の一つが、橋下氏のベーシックインカムや「預金に課税」に対して肯定的なコメントをしたり、「脱原発に頑張る橋下市長を応援しよう」という「超左翼おじさん」を支持したりしたことだと認識していますが、今でも、やはり、私のその姿勢の方向性に変わりはありません。誤解がないように、いちおう説明しますが、ベーシックインカムや資産課税や反原発などを率先して提唱したこと自体はしっかり評価して、それが裏切られないかどうかまで見届けることが大切だという姿勢です。(もちろん、現実としては、橋下は裏切り続けたのですが…問題は、世間がその裏切りに見合うだけのことを世間がしない、あるいは、世間にとって端から大した裏切りではないということにあると考えます…ですから、そんな世間を考慮すると、橋下氏に対する「応援」を一切すべきではないとするkojitakenさんの主張にも同意せざるを得ませんが…)

ベーシックインカムについては、現在の、窓口での匙加減に左右されてしまう生活保護に比べれば、よりよい制度だろうと考えます。もちろん、それは、ケースワーカーなど、福祉職員の削減であってはいけません。むしろ、今、一番求められるべきは、そうした部門の拡充です。私は最近、「置き去り事件」などでの「馬鹿な親」叩きの風潮に、非常に苛立ちを感じているのですが、そうした世界を自分たちとは関係ない別世界にしたがり、安全地帯に身を置こうとし、その金銭的負担さえ、「だらしなく馬鹿な奴らに出す金はない」と嫌がる風潮はなんとかならないのかと。どんどん脱線していきますが、ケースワーカーや、児童養護施設、障害児入所施設などの拡充こそが、今の日本にとって、本当の最優先課題だと考えます。しかし、それらが「市場原理」の名の下にアウトソーシングされ、削減されていく。私は、それらは資産課税によってこそ、負担されるべきだと考えます。ですから、フリードマンハイエクもクソです。

kojitaken様の気を害しそうなことから書き始めたり、単なる書きなぐりになってしまったりですが、いつか、こうした方向性から、「鍋パーティーのブログ」に寄稿したいと考えていますと、申し訳程度に、表明をさせていただきます。

別に「気を害し」などしませんが。私はsuterakusoさんと喧嘩をした記憶はありますが、何の件に関してかは覚えていませんでした。この日記や「きまぐれな日々」では「忖度」はいっさい無用ですし、少し前までは「小沢信者」に突出して観察された「忖度」は、今や現在マスメディアや国民の間に広く蔓延しており、それが今の日本を悪くしている元凶だと私は思っていますので、suterakusoさんに限らずコメンテーターの皆さまには率直な意見表明をお願いします。それに私が怒ったくらいで気にしないことです。

それはともかく、社会保障についてたとえば神野直彦は、「現物給付と現金給付を比較すると、現物給付のほうが優れている」と言ってるんですね。たとえば、「強い経済・強い財政・強い社会保障」の生みの親、神野直彦教授の話 TBSラジオ「dig」テキスト化 - sincerely my thought(2010年6月24日)から、神野氏と萱野稔人氏のやりとりを下記に引用します。

萱野 「強い社会保障」が「強い経済」を生み出すんだという話がありましたが、社会保障のあり方として、現物支給と現金支給のどちらが強い方が望ましいとお考えですか?

神野 これは現金支給の方から現物給付にシフトしないといけません。産業構造がソフトになっていくと、女性の社会参加が増えますから、その時にはサービス給付にして、今まで女性が家庭の中で無償労働で担ってきた福祉や養老、こうしたものを社会的に提供していかないと、格差や貧困が拡大するんです。

萱野 そうですね。子ども手当は現金給付の典型で、現物支給となると保育所無料化などが挙げられると思うんですけども、

神野 これはセットじゃないと駄目だということです。

萱野 神野さんのご研究の中で、社会保障の中で現金支給の割合が多い国ほど実は格差が広がっているというものがあったと思うんですが。

神野 これは再分配のパラドックスと言いまして、貧しい人々に限定しての現金給付ですね。ユニバーサルに出さずに、生活保護のように貧しい人に限定して現金給付をすると、かえって格差や貧困が拡大します。

萱野 現物支給のほうが格差を縮小させたり、セーフティネットを張るという点では効果的ということですよね。

神野 ユニバーサルにということが重要で、日本の保育園のようにある一定の条件の人しか利用できませんよという事では駄目ですね。いかなる所得の人でも保育園を受けられるという風にしないといけません。

こういう議論を前提として、当時ベーシックインカム論を批判したものだったと記憶します。この観点から今回のsuterakusoさんのコメントについていえば、

ケースワーカーなど、福祉職員の削減であってはいけません。むしろ、今、一番求められるべきは、そうした部門の拡充です。

ケースワーカーや、児童養護施設、障害児入所施設などの拡充こそが、今の日本にとって、本当の最優先課題だと考えます。

などについては、本当にその通りだと私も思うのですが、ベーシックインカムに政府支出を使ってしまって、「ケースワーカーや、児童養護施設、障害児入所施設などの拡充」ができなくなってしまっては、元も子もないでしょ、というのが私の意見です。

しかも橋下のBI(ベーシックインカム)論にはもっと大きな問題があって、それは橋下がミルトン・フリードマンの提言を直接受け売りしたものなのですが、橋下はBIを定率所得課税と組み合わせています。これは実質的な富裕層減税にほかなりません。これに限らず、BIは単独では「やらないよりやった方が良い」とはいえるけれども(現に、新自由主義者の橋下が推奨する一方、宇野弘蔵系のマルクス経済学者である伊藤誠もBIを強く推しています)、話者が全体の政策としてどういう意図をもってBIを唱えているかを判断することが大事でしょう。橋下の場合、「バサーット整理(=削減)する」ためにBIを唱えているわけですから、これを批判するのでなければ、新自由主義者・橋下に塩を送る以外の何物でもありません。

ただ最近は、昨年の自公の「軽減税率」をめぐる議論などという、BIよりももっとダメな方向へと政治が動こうとしています。それに比べれば、BIや「負の所得税」と同じ発想に基づき、かつ民進党が推している「給付つき税額控除」の方がまだマシでしょ、とも思います。従って、「消費税の軽減税率をやるくらいならBIなり給付付き税額控除をやるべきだ」という意見になら、私は反対はしない、というより正しいと思います。

ただ、冒頭に引用したTBSのニュースで、月に12万円のBI支給を受ける月収20万円の音楽教師は「受け取ったベーシックインカムは貯金に回しています」と言っていました。仮に「ユニバーサルに出す」点でBIが生活保護にまさるとしても、「一定以上の収入や資産のある人は給付されたBIを使う可能性が低い」点で、BIは現物給付には及ばないのではないかと思います。高収入の人もそうですが、それよりも資産家に、それに該当する人は多いでしょう(資産課税強化の必要性は私も強く感じます)。

それを考えると、BIがベストの選択肢であるとはいえないと思います。少なくとも現物給付を削ってまで導入すべき制度であるとは到底思われません。現物給付が足りた時点で初めて導入を検討すべき制度なのではないでしょうか。