kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

下村博文が「言葉狩り」? 「子ども」はダメ、「子供」と書けって?

「親学」「人間力」、そして次に来たのは… - 泣きやむまで 泣くといい からリンクを張られている、
「子ども」表記が「子供」に統一!? - 北野進の活動日記 に紹介されている、7月15日付『日本教育新聞』記事にはぶっ飛んだ。


以下は東京都青梅市共産党市議・田中みずほ氏のブログより。
青梅市議会議員 田中みずほの市政革新ブログ : 文科省、「子ども」から「子供」に表記を変える

日本教育新聞7/15付は、

文科省が『子ども』という表記を『子供』に改めたことが分かった。下村博文文科相から指示があったという。この言葉の表記は、行政機関の中でも統一されていない。なぜ、今、表記方法を改めたのか」

という記事を載せました。

戦後長い時間をかけて「子供」から「子ども」に変わってきた表記ですが、突然の逆戻りは何故でしょう?

記事には

文科省幹部によると交ぜ書き廃止を求める団体が下村文科相を訪れ『子ども』表記の廃止を請願したことが背景にあったという。」

という記載もあります。

私は、子どもが「売買」される対象であったことなど、人権が大切にされなかった歴史を考えれば、絶対に、漢字で「子供」とは書けません。子どもは供え物ではありませんから。ものすごく大切にされるべき存在だから、「子ども」や「こども」と表記されるべきだと思います。

今回の件、青梅市役所や市教育委員会の表記も変わるかもしれず、社会的に影響の大きい出来事だと思いますが、みなさんはどうお考えですか?


最初にリンクした『lessorの日記』はこう書いている。

「供」が「お供え」を連想させるから人権上よろしくないという主張とそれへの反論には、興味がない。「人権上で反対だvsただの当て字だから問題ない」という対立軸を設けても、どうせ平行線である。「子ども」にこだわることが「言葉狩り」だの「思想的偏向」だのと言われることがあるが、「子供」にこだわるのも単なる表記の問題とは考えがたい思想的背景が見え隠れしている。たぶん「戦後、アメリカから国語表記についてこんなこと言われて屈辱的で…」という話にも行きつく。自分は思想的に「子ども」表記にこだわりたい、というよりも、こんな大臣(や特定団体)の考えひとつで、20年近くにわたって書き慣れた表記を変えさせられてたまるか、と思う。


私が思ったのは、おそらく多くの方と同じだろうと思うが、民主党政権の「子ども手当」への当てつけだろうなということ。民主党政権が看板とした政策に使われた「子ども」という表記を使うなというのは、上記引用文にある「子ども」表記への批判者の言葉とは裏返しの、自民党のカルト極右政治家(下村博文)による「言葉狩り」にほかならないと直感した。もちろんその背景に強烈な復古的国家主義イデオロギーがあることは間違いない。


同じく『lessorの日記』より。

「子ども子育て支援法」「子どもの権利条約」「子ども家庭支援センター」すべてダメ(「子ども」を含んだ法律はかなりの数に及ぶのではないか)。国公立大学の教員はどう教えるのか。「法令や制度上の名称で『子ども』となっているのは間違いです」って言いながら「子供」と書き換えるのだろうか(これは私大でも同じようなものか…)。それとも文部科学大臣は、これからこの国の法律にあふれる「子ども」表記をすべて「子供」に変更することに尽力するのだろうか。どちらにしてもバカバカしい悪夢だ。


おそらく世間一般では「子供」という表記が長らく一般的だったと思うが、最近のメディアでは「子ども」の表記が主流だ。朝日・毎日・読売はもちろん、産経にも「産経子どもニュース」がある(笑)*1
産経 子どもニュース「育て!子どもたち」


思い出話をすると、約20年前に「子どもの権利条約」を認識した時、「子ども」という表記に注意を引かれた記憶がある。確か昔のネットニュースのシグネチャに、「『子どもの権利条約』の批准を求めます」と書いていた人がいたような記憶がある。調べてみると、日本が「子どもの権利条約」に調印したのは1990年(自民党の海部政権時代)で、批准したのは1994年(細川連立政権時代)だった。Wikipediaを参照すると、日本語では「児童の権利に関する条約」というらしいが、「子どもの権利条約」という呼称が一般的である。Wikipediaには、

文部省が「本条約についての教育指導に当たっては、『児童』のみならず『子ども』という語を適宜使用することも考えられる」[4]という案を示している

と書かれており、脚注には下記の "文部事務次官 (坂元弘直) 「『児童の権利に関する条約』について (通知)」 (文初高第149号)、1994年5月20日、文部省。" へのリンクが張られている。
http://www.mext.go.jp/a_menu/kokusai/jidou/main4_a9.htm#label1

ここには確かに、

本条約についての教育指導に当たっては,「児童」のみならず「子ども」という語を適宜使用することも考えられること。

と書かれている。

あと覚えているのは、浦沢直樹の漫画『MONSTER』の第7巻に、主人公の「モンスター」ヨハンが「子どもの権利条約」に言及する場面が出てくることだ。


Monster (7) (ビッグコミックス)

Monster (7) (ビッグコミックス)


http://www.amazon.co.jp/Monster-7-%E3%83%93%E3%83%83%E3%82%B0%E3%82%B3%E3%83%9F%E3%83%83%E3%82%AF%E3%82%B9-%E6%B5%A6%E6%B2%A2-%E7%9B%B4%E6%A8%B9/dp/4091836577 より。

子供の権利条約 2011/6/5
By 街道を行く
この巻には、リヒャルト元刑事のエピソードが登場します。
彼は、酒を飲んで容疑者を射殺したため職を解かれ、家族と別れ現在は私立探偵をしています。
アルコール中毒のリハビリをして最愛の娘と会うことを楽しみにしているのですが、元に戻ってくると次第に自分が追っていた事件を思い出し始めます。
リヒャルト氏の自宅のドアにノックの音が。そこにヨハンが立っていました。
ヨハンはミュンヘン大学で、子供の権利条約について学んでいます。
どうも「511キンダーハイム」と関係がありそうです。
リファルト元刑事の捜査から徐々にヨハンの素顔が顔を現し始めますが一緒に恐怖が襲い掛かってきます。
全貌を見せていない『MONSTER』。
後を引く作品で。


このレビューには「子供の権利条約」と表記されているが、漫画には間違いなく「子どもの権利条約」と表記されていたはずだ。


おまけ。下村博文のブログより。
http://hakubun.jp/2013/03/%E3%82%B5%E3%83%B3%E3%83%87%E3%83%BC%E6%AF%8E%E6%97%A5%EF%BC%883%E6%9C%8810%E6%97%A5%E5%8F%B7%EF%BC%89%E3%81%AB%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%82%BF%E3%83%93%E3%83%A5%E3%83%BC%E8%A8%98%E4%BA%8B%E3%81%8C/(2013年3月4日)

サンデー毎日(3月10日号)にインタビュー記事が載りました。
以下、掲載内容です。


下村博文文部科学相 独占インタビュー なぜ今の教育はダメなのか!

文科相就任から2日後の昨年12月28日、下村氏は「朝鮮学校の無償化はしない」と表明した。2010年度に始まった高校授業料無償化で、民主党政権朝鮮学校を対象にするか否かで方針を二転三転。結局判断しないまま政権交代となった。安倍政権となって「無償化対象外」はスピード決断だった。一方、野党時代に下村氏らが中心となってまとめた自民党政権公約では、教科書検定基準でアジア諸国に配慮する「近隣諸国条項」の見直しも含まれている。巷間、「右寄り」といわれる下村氏。まずは、教科書検定についての“真意”を聞いた。

河野官房長官談話(1993年)や村山総理談話(95年)を含め、政府全体で官房長官の下で見直すことになっているので、文部科学省だけが先に議論することはありません。ただ、私は近隣諸国条項にかかわらず、検定制度と採択の在り方は見直す必要があると思っています。理由として二つあります。一つは、(第1次安倍政権で)教育基本法が改正されて、学習指導要領も改訂されましたが、それらの精神にのっとった教科書になっていない。もう一つは自虐史観が強く、近現代史の影の部分を強調しすぎている。もっと日本の伝統の中で素晴らしいものを子どもに教えることで、自分の国に対して誇りが持てるような教育をすべきです。自分の国への誇りと、他国への尊重の念は相反するものではありません。愛国主義が他国批判主義につながるのは間違っています。

「いじめ」対策や「入試改革」など下村氏の教育改革を解くカギは「家族」にあるようだ。10年秋に『下村博文の教育立国論』(河出書房新社)を出版。小学3年の9歳の時に父を交通事故で亡くしたことや、長男に学習障害があることを明かし「教育は誰にでも受ける権利がある」と力説する。

今も鮮明に覚えています。雨の降っていた夜8時すぎ、電話が掛かってきて母が取ったんです。「下村正雄さんがバイクで事故を起こし危篤になった」と。それを聞いて「父ちゃんが死んじゃった」と直感して泣いたんです。
その後、母と5歳と1歳の2人の弟は、祖母が一人で暮らしていた隣町の母の実家に移りました。私は父を尊敬していて、近くに住んでいた父方の祖父母と一緒に住みながら父の墓守をしました。1カ月ぐらいして母が覗きにくるんですが、祖父母が私に会わせない。「子どもが墓守しているのに親が実家に戻るのはけしからん」というわけです。近所の人が祖父母がいない時を見計らって「ひろちゃんに会えるよ」と手配してくれて、何回かそっと会いにきてくれた。しかし、私は子どもながらに祖父母との暮らしで気を使っていたんでしょう。3カ月ぐらい後に母が会いにきた時、緊張が崩れ、そのまま母の胸に抱かれるように母の実家に付いていきました。

父は農協の職員でした。仕事が終わった夜や土日は、当時住んでいた倉渕村(現・高崎市倉渕)の農家の家畜の世話をして信望が厚かった。父が亡くなり、しばらく遺品となった父の日記を読んでいましたが、文字が几帳面できれいで、素晴らしい内容なんです。父は家が貧しくて高等小学校しか出られなかった。もし教育に恵まれていたら、もっと地域に貢献できる仕事ができるような人でした。

 著書では長男のことも触れられている。学習障害があり、小学6年生でイギリスに留学し、現在はロンドン美術大学の3年生という。

 書くのは本当は嫌だった。だけど、本人が「お父さんも政治の中で教育をやっていくんなら、僕のことも書いていいよ」という一言で決心しました。なぜかというと「日本では僕は救われなかった。僕みたいな子はたくさんいる。日本でも僕みたいな子が伸びていく教育をぜひしてもらいたい」ということでした。

 長男は小学3、4年生になっても漢字が覚えられなかったんです。怠けていると思った。私は今でも心に傷を負っていますが、殴ったこともあります。長男はじっとしながら涙を流していました。学校では漢字テストが0点でいじめられたんでしょう。「学校に行くのがイヤだ」と言い始めた。それで医者にかかり学習障害ということが分かったんです。漢字を読む能力が標準より劣っている一方で、美術のようなクリエーティブな能力は高い。能力の発達がアンバランスでした。

 それでも「頑張れ」と学校に行かせたんですけど、落ち込んで不登校になりかかった。そこで英国の私立校のサマースクールに行かせたことをきっかけに、小学6年生の夏に留学させたんです。そこでもいじめられたらしいですが、本人は「日本に戻っても居場所はない」と子どもながらに思ったらしく、「帰りたい」とは言わなかった。その後、発達障害学習障害を含む)の生徒だけを対象とした高校に転校して、ロンドン芸術大学に入りました。入学試験は日本のように全教科を評価するのではなく「A」ランクの3教科を評価して許可する。入学基準が日本と違うんです。今、3年生になりました。

 これはぜひ知ってもらいたいですが、日本の子どもは自分に自信がない。高校生に対して実施されたある意識調査では、自分をダメな人間だと思っている高校生が日本には66%もいる。中国は13%、米国が22%、韓国は45%です。これでは大人になっても自信が持てないし、社会の役に立とうとも思えないでしょう。そうではなく、自分は素晴らしい人間だ、社会の役に立つとふつふつと湧き起こってくる自信を付けさせるのが本当の教育だと思う。そのためには、子どもが自分の能力を開く教育ができる国にする必要があるんです。

 日本にはチャンスがある。可能性がある――。日本をそういう国にしたい。貧困が貧困を生むのではなく、意欲と志さえ持っていれば、学ぶ機会が得られ、社会の中で自分の求める職業につくことができる。それを保障できる国を作りたい。

 日本の大学進学率は51%で、OECD経済協力開発機構)諸国では下位に近いんです。平均が62%。米国、韓国は70%超、オーストラリアは96%近い。大学教育を質と学生数ともに高めていくことが、すべての人にチャンスと可能性を広げることにもつながります。そのためにも、「教育再生実行会議」(官邸に設置され、下村氏は担当大臣)で議論を続け、国民の理解を得る必要があると思っているんです。

(構成/毎日新聞東京本社社会部 石丸 整)


下村博文の主張の中身を云々したいのではない。単に赤字ボールドにした箇所に注目しただけである。筆者は下村本人ではなく「毎日新聞東京本社社会部 石丸 整」だろうが、下村がその表記を受け入れていた動かぬ証拠がここにある。


私自身は、これまで「子供」「子ども」の表記に頓着したことは、「子どもの権利条約」と「子ども手当」以外の件ではほとんどなく、おそらく仮名漢字変換のなすがままに従って「子供」と表記してきたであろうと思うが、下村博文がそのつもりなら、それに対抗するまでだ。今後、「子供」の表記は引用文以外では一切使わず、「子ども」とのみ表記することに決めた。

*1:但し、私が確認したどの新聞社においても「子ども」と「子供」の表記が混在している。