朝日新聞(5/23)1面トップはまたまた「吉田調書」。
http://www.asahi.com/articles/ASG5Q7GJPG5QUUPI005.html
吉田氏、非常冷却で誤った対応 「思い込みがあった」
木村英昭、堀内京子 宮崎知己
東京電力福島第一原発の吉田昌郎(まさお)所長が東日本大震災が起きた2011年3月11日、電源喪失時に原子炉を冷やす1号機の非常用復水器(IC)の仕組みをよく理解していなかったため、異変を伝える現場の指摘を受け止められず、誤った対応をしていたことが分かった。吉田氏は政府事故調査・検証委員会の聴取で「ここは私の反省点になる。思い込みがあった」と述べていた。1号機は冷却に失敗し、同日中にメルトダウン(炉心溶融)した。
吉田氏の聴取を記録した「吉田調書」によると、中央制御室の運転員が11日夕にICの機能低下に気付き、冷却水不足を疑って吉田氏のいる緊急時対策室へ伝え、軽油で動くポンプで水を補給するよう促した。
だが、吉田氏はICの仕組みを理解していなかったため、「水の補給」が機能低下のサインと認識できず、ICが機能している間に行う「原子炉への注水準備の継続」という指示しか出さなかった。
(朝日新聞デジタル 2014年5月23日05時25分)
1971年運転開始の東電福島第一原発の1号機にだけ、他の原子炉と異なって、非常用復水器(Isolation condenser (IC) = アイソレーション・コンデンサ、略してイソコン)という非常用冷却装置が設置されていたものの、それが動作しているのを見たものは誰もいなかった。「豚の鼻」と通称される水蒸気放出口からもやもやと湯気が上がっているのを作業員が見て、ICが作動しているものと思い込み、その結果1号機が早々にメルトダウンに至った。
これは、NHKスペシャルでも放送された有名なシーンであって、東電原発事故に関心のある人間なら誰でも知っていることだろう。
また、吉田昌郎と東電福島第二原発所長・増田尚宏を対比して、ともにメルトダウン直前まで行った両原発の危機対応を論じた書物として、朝日新聞元主筆・船橋洋一が書いた『メルトダウン・カウントダウン』(文藝春秋,2012)がある。
当ダイアリーにいただいたブコメで、菅直人ばかりを悪者にして、吉田昌郎を英雄視する風潮があるから、今回の朝日の報道にも意義があるのではないかとの指摘があったが、吉田昌郎を手放しで礼賛しているのは、東電原発事故についてほとんど何も知らない人たちだけだろう。
今回の朝日の「『吉田調書』スクープ」の中でも、今日のが一番しょぼかった。1面トップで報道するほどのものではない。