kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

安倍晋三、国会答弁で「同一労働同一賃金」を否認

昨夜(5/12)報道ステーションを見ていたら、審議入りした改正労働者派遣法の国会での質疑で、安倍晋三が「同一(価値)労働同一賃金」を事実上否認する答弁をしていた。怪しからんと思って頭にきた。ネットでも安倍晋三の答弁に怒っている人間が少なからずいるのではないかと思ってネット検索をかけたが、肝心の国会質疑に触れた記事すら見つからなかったので寝てしまった。今朝起きて改めてネット検索をかけたら、NHKニュースが見つかったのでメモしておく。

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20150512/k10010076891000.html

労働者派遣法改正案 衆院で審議入り

派遣労働の期間制限を一部撤廃する労働者派遣法の改正案が衆議院本会議で審議入りし、民主党などが、派遣労働の固定化につながるものだと批判したのに対し、安倍総理大臣は、派遣会社に正社員に採用するよう企業に依頼することを義務づけるなど、派遣労働の固定化を防ぐ措置を盛り込んでいるとして反論しました。
労働者派遣法の改正案は、派遣労働を巡って、一部の業務を除いて、現在は最長で3年までとなっている派遣期間の制限を撤廃する一方、1人の派遣労働者が企業の同じ部署で働ける期間を3年に制限するなどとするもので、12日の衆議院本会議で趣旨説明と質疑が行われ、審議入りしました。
この中で自民党高鳥修一前厚生労働政務官は「あらゆる人が働くことで生きがいを感じられる社会が求められている。改正案は、派遣労働者の雇用の安定や保護の観点から必要な規制の強化を図り、正社員を希望する人にはその道を開くものだ」と述べました。
これに対し安倍総理大臣は、「改正案では賃金などの面で派遣先の企業の責任を強化し、待遇の改善を図るとともに、労働者派遣事業をすべて許可制とするなど必要な規制の強化を図っていく。働く人それぞれの選択をしっかり実現できるような環境を整備していきたい」と述べました。
民主党大西健介政策調査会副会長は、「人さえ代えれば、どんな業種でも無期限に派遣労働者の受け入れが可能となれば、これまで正社員が行っていた仕事も派遣社員に切り替えられ、『生涯派遣で低賃金』の労働者が増えることは間違いない」と批判しました。
これに対し安倍総理大臣は、「改正案では派遣会社の責任を強化し、派遣期間が満了した場合、正社員になったり別の会社などで働き続けることができるようにする措置や、計画的な教育訓練を新たに義務づけるなど、派遣就労への固定化を防ぐ措置を強化している。『一生派遣』の労働者が増えるとの指摘は不適切で、全く当たらない」と反論しました。
維新の党の井坂信彦衆議院議員は、「安く雇えて解雇もしやすいとなれば、企業が非正規労働者を増やす方向に傾くのは避けられない。『同一労働・同一賃金』が実現しないかぎり、望まない派遣労働者は増える」と指摘しました。
これに対し安倍総理大臣は、「同一労働に対し同一賃金が支払われるという仕組みは1つの重要な考え方だが、さまざまな仕事を経験し、責任ある労働者と経験が浅い労働者との間で賃金を同一にすることについて、直ちに広い理解を得ることは難しい。改正案では、まずは派遣先の労働者との均衡待遇を進めることとしている」と述べました。
労働者派遣法の改正案は、条文のミスと衆議院の解散で2回廃案となっており、政府は3回目の提出となった今の国会で確実に成立させたいとしています。

NHKニュース 2015年5月12日 18時29分)

棄てステを見る限り、大西健介安倍晋三から「同一労働同一賃金を実現すべきだ」との言質を取ろうとしたが、安倍晋三がこれをはねつけた形の答弁だった。

まず基本的な認識として、世襲貴族三世の安倍晋三にはそもそも労働問題に関する興味がなく、経団連など財界の意を汲んで労働者派遣法「改正」を「粛々と」進めているととらえなければならない。「改正案では、まずは派遣先の労働者との均衡待遇を進めることとしている」というのは、無論口先だけの言い逃れである。

もっとも、安倍晋三の答弁を報じるニュースを聞いて私が思い出したのは、一昨年に批判記事を書いた石水喜夫のちくま新書『日本型雇用の真実』だった。

石水は、この本で

新古典派経済学の賃金論は、あくまで仕事基準の賃金であり、労働市場論にもとづいて、同じ仕事の賃金は、同じ労働力の価格として全く同じであると言い放つのです。このモデルの中に生きる新古典派経済学者が、人間基準の賃金を理解することは不可能です。そして、彼らにとって理解可能な仕事基準の賃金に改めることが、日本社会の「構造改革」であると意識されます。

と言い放っていた。なんと、「同一労働同一賃金」とは新自由主義イデオロギーだというのだ。この石水の妄論を批判し始めると長くなるので抑えておくが、「日本型雇用」肯定論者が「同一労働同一賃金」の原則を否定することが、格差拡大とワーキングプアの労働者数増加を加速させている。私に言わせれば、石水喜夫は安倍晋三経団連の共犯者である。これだけだとあまりに内容のない決めつけ的な物言いだと私自身も思うので、ひとことだけ書いておくと、業績が傾いた企業が真っ先に切るのは、派遣労働者と高賃金の中高年労働者であるという事実があり、これが何よりも雄弁に石水の主張を否定している。本当に企業が中高年労働者のスキルが高いとみなして賃金を支給しているのであれば、そんなリストラはしないはずだからだ。右肩上がりの日本企業の賃金は、高度成長時代に政府がなすべきだった支出を企業が肩代わりし、日本政府が「サービスの小さな政府」であり続けることをサポートしただけのものであったと考えなければならない。その最大の問題点の一つは、そうした企業に勤める労働者やその親族しかサービスの恩恵を受けられなかったことだ。

結局、石水喜夫批判にスペースを割いてしまったが、安倍晋三が「同一労働同一賃金」を事実上否認する国会答弁を行ったにもかかわらず、それすらろくに批判できない「リベラル」の凋落には目を覆いたくなる。