kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

「『役に立つ』という言葉がとっても社会をだめにしている」と語る大隅良典氏と「どのような研究や環境が最もノーベル賞に結びついているか過去の論文の引用本数を踏まえて検証したい」と抜かす鶴保庸介との、目も眩む落差

大隅良典氏のノーベル・医学生理学賞受賞で、またぞろ「日本スゲェェェ」を絶叫する人間がいるようで、毎度のことながら鼻白んでしまうが、やつらが崇め奉る現在の安倍政権(というよりその前から。特に小泉政権)が行っている(行ってきた、そしてこれからも行うであろう)政治は、将来の日本からノーベル賞受賞者を生み出す芽を根こそぎ摘み取ってしまうものであることは明らかだ。

https://twitter.com/georgebest1969/status/783567445579620352

岩田健太郎
@georgebest1969

過去の論文の引用件数なんか基準にしてたらダメじゃん 首相「受賞は日本人の誇り」 独創的な研究支援する考え | NHKニュース http://www3.nhk.or.jp/news/html/20161004/k10010717251000.html

0:20 - 2016年10月5日

リンクされたNHKニュースは下記。

首相「受賞は日本人の誇り」 独創的な研究支援する考え

10月4日 12時34分

ことしのノーベル医学・生理学賞の受賞者に東京工業大学栄誉教授の大隅良典さんが選ばれたことについて、安倍総理大臣は、午前の衆議院予算委員会で、「大隅良典先生の研究成果は、難病に苦しむ世界中の人々に希望を与えるものであり、日本人として本当に誇りに思う」と述べ、独創的で多様な研究を支援していく考えを示しました。

この中で、安倍総理大臣は、「大隅良典先生の研究成果は、がんやパーキンソン病など、難病に苦しむ世界中の人々に希望を与えるものであり、日本人として本当に誇りに思う。あとに続く若手研究者たちへの大きな励みになるのではないか」と述べました。
そのうえで、安倍総理大臣は、「日本人研究者が3年連続で受賞することになるが、日本が生物学をはじめイノベーションで世界をけん引し、世界に貢献できることを本当に嬉しく思う。政府として、あらゆる分野でイノベーションを起こし続けることを目指し、独創的で多様な研究をしっかり支援していくとともに、研究を担う人材育成に力を入れていきたい」と述べました。

文科相「研究現場の声を聞き支援したい」

松野文部科学大臣は、閣議の後の記者会見で、「21世紀以降、わが国の自然科学系3分野のノーベル賞受賞者は16人と、アメリカに次いで世界第2位だ。わが国の科学技術レベルと層の厚さを世界に示した」と述べ、改めて、大隅さんのノーベル賞受賞を祝福しました。そのうえで、松野大臣は、「科学技術は、今後の日本の繁栄と安全に対して極めて重要な要素であり、国からのさまざまな補助・サポートについては、研究現場の声をなるべくお聞きしながら設計を進めたい」と述べました。

科学技術担当相「人材育成など関係府省をリードしたい」

鶴保科学技術担当大臣は、会見で、「今後、優れた人材の育成や確保、基礎研究の推進に向けた大学などの改革、さらには研究成果の社会への展開の促進などについて、関係府省をリードして進めていきたい。どのような研究や環境が最もノーベル賞に結びついているか検証し、問題点を洗い出す。過去の論文の引用本数などを踏まえて検証したい」と述べました。

出ました、「過去の論文の引用本数」!

実際の「検証」の作業で用いられるのは、雑誌の権威によって重み付けされた「インパクトファクター」であろう。「インパクトファクター至上主義」が生み出すのはノーベル賞受賞者ではなく小保方晴子であり、ノーベル賞受賞候補者の自殺でしかないのだが、安倍政権は「STAP細胞騒動」から何も学んでいないようだ。


当の大隅氏は、安倍政権の方向性とは全く異なるメッセージを発している。

「社会がゆとりを持って基礎科学を見守って」ノーベル賞の大隅良典さんは受賞会見で繰り返し訴えた | ハフポスト

「社会がゆとりを持って基礎科学を見守って」ノーベル賞大隅良典さんは受賞会見で繰り返し訴えた
The Huffington Post | 執筆者: 吉野太一郎
投稿日: 2016年10月03日 21時57分 JST 更新: 2016年10月04日 01時28分 JST

2016年のノーベル医学生理学賞を受賞した東京工業大学栄誉教授の大隅良典さん(71)。

受賞決定直後の10月3日夜に、東京工業大学で記者会見した大隅さんが繰り返し語ったのは、短期的な成果に直結しない基礎科学を追究する科学的精神の重要さ、そして、それがなかなか許されなくなっている社会への憂いだった。

■「人がやっていないことをやる方が楽しい。サイエンスの本質」

「オートファジー」という、細胞がたんぱく質を分解する作用は、大隅さん曰く「ゴミためだと思っていたところから」のスタートだった。

私は競争があまり好きではありませんで、人がよってたかってやっているより、人がやっていないことをやる方が楽しいんだと、ある意味でサイエンスの本質みたいなことだと思っております。誰が一番乗りかを競うより、誰もやっていないことを見つけた喜びが研究者を支えると常々思っています。


■「私は大変憂えている」

「少しでも社会がゆとりを持って基礎科学を見守ってくれる社会になってほしい」。会見で大隅さんはそう繰り返した。しかし「そういうことがなかなか難しい世の中になっている」「私は大変憂えている」とも語った。

サイエンスはどこに向かっているのか分からないが楽しいことなので、これをやったら必ずいい成果につながるというのが、サイエンスは実はとっても難しい。そういうことにチャレンジするのが科学的精神だろうと思っているので、少しでも社会がゆとりを持って基礎科学を見守ってくれる社会になってほしい。

何とかなるさという精神で、いろんなことにチャレンジしてくれる人たちが増えてくれることを強く望んでいる。ただ、そんな易しいことではないので、社会が支えるような環境を少しでも作れれば。

背景には、政府による学術研究予算の削減が続いていることがある。

東大、筑波大、早稲田大など日本の主要11大学でつくる「学術研究懇談会」は2016年7月、国公立大学の運営費交付金と私学助成の削減が10年以上続き、「成果目標が明示的である競争的な事業補助金への移行が強まっている」と指摘。その結果、「短期的成果を求めて出口指向を強める方向の研究に過度に傾きつつある」と警鐘を鳴らしている。

私は「役に立つ」という言葉がとっても社会をだめにしていると思っています。数年後に事業化できることと同義語になっていることに問題がある。本当に役に立つことは10年後、あるいは100年後かもしれない。社会が将来を見据えて、科学を一つの文化として認めてくれるような社会にならないかなあと強く願っています。


■「若者が基礎科学に専念できる環境を」

賞金の使い道を訪ねられた大隅さん。「この年になって豪邸に住みたいわけでも、外車に乗りたいわけでもない」と、若者が基礎科学に専念できる環境をシステムとしてつくりあげることに意欲を示した。

若い人たちのサポートができるシステムができないか。システムとしてできる(ようにしたい)。社会的にノーベル賞が意味があるとすると、そういうことが少しでもやりやすくなって、私が生きている間に一歩が踏み出せればいい。

分かったようで何も分かっていないことが、生命現象には特にたくさんある。えっ、なんで?ということを、とても大事にする子供たちが増えてくれたら、私は日本の将来の科学も安泰だと思う。そういうことがなかなか難しい世の中になっている。

2015年に引き続き、会見の途中に受賞者に電話をかけた安倍晋三首相や松野博一文部科学相に、大隅さんのメッセージは届いただろうか。

(ハフィントンポストより)

吉野太一郎記者の最後の文章は、安倍政権への皮肉であることは言うまでもなかろう。

「『役に立つ』という言葉がとっても社会をだめにしている」と語る大隅良典氏と「どのような研究や環境が最もノーベル賞に結びついているか過去の論文の引用本数を踏まえて検証したい」と抜かす鶴保庸介との間には、目も眩む落差がある。