朝日新聞(10/22)の第三社会面記事。
http://www.asahi.com/articles/DA3S12619792.html
(Media Times)昼の民放、都政だらけ バッハ会談、CM抑え生中継も
2016年10月22日05時00分
小池百合子・東京都知事の就任からまもなく3カ月。民放各局の昼の番組は、知事会見や都議会の生中継など「小池劇場」の状態が続いている。背景には、ネット時代の各局の思惑や視聴者の傾向、小池氏のメディア戦略が絡みあう。
こういう引用の仕方をすると、また「朝日の回し者か」とコメンテーターに陰口を叩かれそうだが、最高に、いや最悪にむかつく記事だった。朝日の記者にではなく、記事に登場するテレビ関係者のコメントに。
まず、記事で知ったのは、小池百合子とバッハIOCとの会談を、日テレ系もTBS系もフジ系も、40分間コマーシャルをほとんど挿まず生中継したらしいこと。次いで、午後2時以降の時間帯ではあの日本最悪の極右放送局である大阪の読売テレビが制作している『ミヤネ屋』が視聴率で独走しているらしいという恐るべき事実だった。
で、読売テレビ(日テレ系)を追撃しようと、TBS系とフジ系が昨春にワイドショー枠を復活させたのだそうだ。記事を見ると、名古屋のCBC(中部日本放送)の稲垣邦広というチーフプロデューサーのコメントが紹介されている。この『ゴゴスマ -GO GO!Smile!-』という番組は、名古屋の放送局が制作して、中京、関東(TBS)、それに宮城県が放送エリアになっているらしい(大阪の系列局である毎日放送(MBS)は『ちちんぷいぷい』という番組をやっているようだ)。以下、稲垣のコメントを手打ちで引用する。
- 「今起きていることをそのまま放送する。視聴者は『小池さんが何を話すのか』を待っているのを感じる」
- 「『こんなことになっていたのか』と視聴者が憤っているように思う」
- 「硬いニュースが見てもらえるというのは新しい発見だった」
これだけでも血圧が激しく上がるが、これに続く「元吉本興業常務でフリープロデューサー」の木村政雄という人のコメントは、稲垣のコメントに輪をかけて腹立たしい。木村は、小池百合子を小泉純一郎や橋下徹と比較して、小池の方が「上」だとして曰く、
無礼な質問も受け流し、最後にニコッと笑う。おじさんたちを悪役の『越後屋』に見せてしまう。つまらないドラマよりよほど面白い」
小池も、バッハIOC会長*1との会談を急遽全面公開して、「生放送中?」と記者に尋ねたのだという。
再び木村曰く、
「密室でおじさんたちが物事を決めているという政治へのあきらめから、風向きが変わった。これを機に、普通の人が政治を考える動きが進むのはいいことだ」
記事は最後に、申し訳程度に「メディアと政治の関係に詳しい稲葉哲郎・一橋大教授(社会心理学)」の
「メディアは(略)過去の発言や公約と照らし合わせ、長期的にチェックしていくべきだ」
というコメントを紹介して締めくくられているが、稲垣だの木村だのの毒々しいコメントに湯気が立っている頭を冷やす効果はほとんどなかったのであった。「焼け石に水」とはこのことか。
なお、元記事は田玉恵美、仲村和代両朝日新聞記者の署名記事。
*1:バッハとはドイツ語で「小川」の意味であって、ベートーヴェン(ベートホーフェン)が先人の大作曲家について、「バッハは小川ではなく、大海だ」と言ったとの伝説が残されている。たまたま昨夜報道ステーションでサブキャスターの小川彩佳がバッハ会長の名前を口にしていたので、「ああ、この人も『バッハ彩佳』なのかもな」と思った。ところが、Wikipedia(出典は『バッハ―生涯と作品』(講談社学術文庫)とのこと)によると、「「小川」を意味する現代ドイツ語(新高地ドイツ語)の"Bach"は音楽家"Bach"とは元々の語源が違う。ゲルマン語より古いゴート語にもさかのぼることができる語の"pah"や"pacht"という綴りが語源で、意味は流しの芸人に与える「おひねり」とか「ギャラ」を意味する。英語の"pact"が同じ語源である。バッハの祖先が元々は流しの音楽家をしていたこととも符合する」とのことらしい。