フランス大統領・マクロンが徴兵制を復活させるという。
徴兵制、フランスも復活へ マクロン大統領が表明 18~21歳の男女対象 | ハフポスト
徴兵制、フランスも復活へ マクロン大統領が表明 18〜21歳の男女対象
ヨーロッパ各国に軍事強化の波。スウェーデンでも7年ぶりに復活
安藤健二
ヨーロッパに軍事強化の波が訪れている。スウェーデンに続いて、フランスも徴兵制を復活だ。AP通信によると、フランスのマクロン大統領は1月19日、海軍基地がある南部のトゥーロンで、軍の幹部や兵士を前に年頭の演説をした。その中で、2001年に廃止されていた徴兵制度を復活させる考えを示した。
相次ぐテロの脅威に備えるため、18歳から21歳の男女(約60万人)が対象だ。1カ月の兵役に参加する。
マクロン大統領は、2017年の大統領選で18歳以上の男女を対象に約1カ月の兵役を課すことなどを公約に掲げていた。
■スウェーデンでも復活ヨーロッパでは徴兵制が一旦は廃れたものの、再び導入する国が増えている。
スウェーデンでは1月から徴兵制を7年ぶりに復活させる。兵士に志願する若者が減るなか、近隣の軍事大国であるロシアの武力外交をにらみ軍事力を強化するためだ。
5月には、戦争を含む有事の対応マニュアルを記したパンフレットを約470万の全世帯に配布する予定だ。
(ハフィントンポスト日本版より)
マクロンによる徴兵制復活自体はもちろん怪しからん話だと私も思う。
ただ、フランスにはジャン・ジャック・ルソーの社会契約論以来の徴兵制論の伝統があることを忘れてはならないだろう。
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また徴兵制には新自由主義理論側からの批判があって、ミルトン・フリードマンの徴兵制批判論がアメリカで大人気を博したことはよく知られている。
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ちょっと無精してネット検索で見つけたブログ記事から引用する。
http://blog.chase-dream.com/2011/03/17/1208(2011年3月17日)より
ジャン=ジャック・ルソーは「社会契約論」の中で,「公共への奉仕が市民の仕事ではなくなり,彼らが自分の体ではなく金銭で奉仕するようになると,国家の滅亡は近い.戦場に赴く必要があるときに,彼らは金で軍隊を雇い,自分たちは家に引っ込んでいる」と指摘している.
「これからの正義の話をしよう」の中で,徴兵制よりも志願兵制が望ましいとする功利主義者と自由至上主義者(リバタリアン)の主張を吟味する際に,マイケル・サンデル氏はこのルソーの言葉を引用している.
近年,アメリカ上流階級の子弟は兵役に就かない.エリート大学の学生は兵役を選ばず,連邦議会議員の子息で軍隊にいるのはわずか2%にすぎない.結局,志願兵の多くは低所得者層に属しており,経済的な事情から入隊を希望している.志願兵制は一種の強制なのではないだろうか.それでも志願兵制は公平な制度なのだろうか.
兵役にまつわる一切のリスクにさらされる恐れがない圧倒的多数のアメリカ人は,恵まれないアメリカ人を雇って戦争をさせる一方で,血を流すことも心を惑わされることもなく,自分のことだけにかまけている.これは正しいことなのだろうか.マイケル・サンデル氏はこのように問いかける.
ルソーは戦場に赴く必要があるときについて語っているが,戦後最大の危機に見舞われている日本の現況は戦場ではないが非常事態であろう.そう思うと,「自分の体ではなく金銭で奉仕するようになると国家の滅亡は近い」という指摘は耳が痛い.
上記引用文に「志願兵制は一種の強制なのではないだろうか」とあるが、これに私はイエスと答える。ミルトン・フリードマンの徴兵制批判論は「経済的徴兵制」を生み出したともいえる。
以前にも何度か書いたが、日本の「リベラル」の徴兵制反対論は、ともすれば「経済的徴兵制」の危険性を直視することを避ける効果を持っているのではないかと私はずっと懸念している。
憲法9条が安倍晋三の狙い通り改悪されても徴兵制にはならない。なぜなら富裕層が自らやその子弟が徴兵されることに強く抵抗するからだ。その結果、現在の自衛隊でも認められる経済的徴兵制はますますひどくなる。これは断言できる*1。
いつも思うのだが、自分自身や身内の人間が徴兵されるのは絶対嫌だが、貧乏人が自衛隊に行くのは勝手だという感覚を無自覚に持っている「リベラル」は少なくないのではなかろうか。そのあり方は、死刑執行の様子が可視化されていないのを良いことに(わざわざ目をそらす必要もないから)、何も考えずに死刑制度存置を望む態度と瓜二つであるように私には思われる。その安易なありようと、「憲法に自衛隊を書き込むくらいなら、ま、いいか」と思ってしまう態度との距離は、さして遠くないのではなかろうか。
徴兵制反対ももちろん結構だが、それよりももっと「経済的徴兵制」の脅威を真剣に考えてもらいたいと強く願う次第。