kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

中島岳志、9条改憲を朝日新聞オピニオン面で主張

中島岳志の意見は以前から知っているので、今朝(4/13)の朝日新聞オピニオン面に載った中島のインタビューに意外性は全くなかった。

初めの方の、立憲主義は保守思想だというのは、この日記でも前々から言っていること、というか常識であって、それには異論はない。

しかし中島は後半で9条改憲の主張を始める。これには全く賛成できない。

中島は、「9条を変えていかないと、平和と立憲主義を維持することが難しくなる」と言う。「立憲主義憲法で権力を縛るもの」だが、「9条は自衛隊を縛れていない」、「今の9条のあり方は立憲主義的とは」いえないという。さらに、「安倍政権が解釈改憲集団的自衛権の行使を実質的に認めたことで、(9条と日米安保の)バランスが間然に崩壊した」、だから「自衛隊を明記していない9条は弱い」、「国民的議論をした上で、9条で、自衛隊はどこまでやるべきか、何をしてはいけないかを明示すべき」であって、「それが平和主義的で保守的な改憲論であり、かつ護憲論だ」と言うのだ。

要するに中島の言っていることは、安倍晋三とその政権が集団的自衛権の行使を容認したから、それを追認し、それに合わせて憲法を変えよ、と言っているようなものだ。これのどこが「保守的な改憲論」で「護憲論」なのかさっぱり理解不能だ。

いうまでもないが、この中島の論は憲法学者たちの主流の意見とは違う。小林節あたりとは気が合うかもしれないが。特に、自衛隊合憲論には立たないものの憲法9条と共存するためにガラパゴス的な進化を遂げてきた自衛隊のあり方を評価する立場だったと私が認識する水島朝穂氏あたりからは、今回の中島の論は格好の標的になるのではないか。

昨年あたりから「新9条」とか「左折の改憲」などの論が、想田和弘、矢部宏治、池澤夏樹加藤典洋らによって出されているが、そのうち自衛隊を軍隊ではなく警察との位置づけとするという加藤の案(それを明記するため、加藤の改憲案はまだるっこしくて理解されにくいと思われるものになっている)は除外するとしても(加藤の案にも私は反対だが)、たとえば鳩山由紀夫らとウマが合うらしい矢部宏治などは自衛隊を「自衛軍」と位置づける改憲案を提示していたと記憶する。しかし、軍隊とは国民ではなく国家を守るものであるため、自衛隊自衛軍に名前を変えるだけでそのあり方は一変する。これを多くの「新9条」「左折の改憲」論者は軽く考えすぎだ。だから、それに気づいている加藤の改憲論は、九条の四だか五だかまである、面倒くさいものになっている。

そもそも、「権力も時に暴走してしまう」というのが「保守的な人間観」であると中島が言うのなら、その権力の暴走の結果である集団的自衛権行使容認に合わせて憲法9条を変えよ、という中島が主張するのはおかしい。なぜなら、安保法成立で見せた安倍政権の暴走を追認しない限り、そんな結論にはならないはずだからだ。中島の論に従えば、保守とは権力の暴走を抑制しようとするものであるはずだが、「そうはいっても安保法が成立してしまったのだから、その現実に合わせて憲法を変えよう」というのが果たして「保守」本来のあり方なのか。はなはだ疑問だ。

週刊金曜日やマガジン9にかかわり、先月まで報道ステーションのコメンテーターを務めるなど、「リベラル」にウケの良いらしい中島岳志だが、中島の本性は保守というより右翼に近いとみなしている私は、中島の著作を読んでからは特にそうだが、この男が大嫌いだ。そして、中島のインタビューを大きく載せる朝日新聞も、そろそろ「新9条」「左折の改憲」に論調を転換させるのではないかと恐れる今日この頃なのである。