「書き換えを認めた」と財務省の改竄前の文書が明らかにされると、まさかここまで盛大に公文書の変造をやってたとは、と驚き呆れるばかりだった。
最近は平日の夜10時までに帰宅することはあまりなかったのだが(といっても仕事は8時半くらいまでに終えて、そのあと喫茶店で松本清張の小説を読んだりなどすることが多い)、昨夜は報道ステーションが始まる時間に合わせて帰宅し、報ステの森友学園文書改竄報道が都合良く22時23分頃に終わったので、22時25分から25分間Eテレでやっていた「100分de名著 松本清張スペシャル」第2回「行き続ける歴史の古層 〜『砂の器』」を見て(先週の第1回は見逃してしまったが、テキストブックを買ったので内容は知っている)、10分間報ステ(スポーツニュースなどをやっていた)に戻ったあと、11時からTBSのNews23を見た。
下記はそのTBSの報道より。
http://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye3314308.htm
財務省が文書「書き換え」認める、安倍昭恵夫人らの名前削除
森友学園への国有地売却問題は重大な局面を迎えました。財務省は12日、国有地売却に関する決裁文書を書き換えた事実を認めました。「安倍内閣のウソがはっきりしました。政権を挙げて、財務省を挙げて国民に、国会にウソをついていたことを認めた。そういう意味では、正直な瞬間だったんではないでしょうか」(立憲民主党 蓮舫 参院国対委員長)
これが、国会に提出された財務省の調査報告書。およそ80ページにわたり、書き換えられる「前」と「後」について、詳しく書かれています。霞が関の中で“官庁の中の官庁”とされてきた「財務省」。麻生大臣は書き換えの事実を認めたうえで、謝罪しました。
「決裁を経た行政文書について書き換えを行うことは極めてゆゆしきことであり、誠に遺憾。私としても深くおわび申し上げる」(麻生太郎 財務相)
財務省の調査結果によると、書き換えが行われた文書は実に14に上ります。決裁文書に記載のあった「本件の特殊性」や「特例的な内容となる」といった文言を数十か所にわたって削除していました。また、国有地売却に関して、森友学園からの「要請」という文言が「申し出」という言葉に書き換えられていました。さらに、鴻池元防災担当大臣や平沼元経済産業大臣、鳩山元総務大臣など、複数の政治家の名前も削除。
「財務省理財局からの指示で書き換えが行われていたということが、私どもの考えで出てきている。私どもとしては理財局の一部職員により(書き換えが)行われたことは事実」(麻生太郎 財務相)
麻生財務大臣は、書き換えは「財務省の理財局の指示で行われた」と説明、佐川氏の国会答弁との関係で誤解が生じないようにするために書き換えを行ったということです。ただ、佐川氏ら財務省幹部の具体的な関与については、明らかにしませんでした。また、安倍総理のこの答弁も影響したのでしょうか。
「私や妻が関係していたということになれば、私は総理大臣も国会議員も辞めることははっきり申し上げておきたい」(安倍首相 去年2月)
森友学園側が安倍昭恵夫人から「『いい土地ですから、前に進めてください』とのお言葉をいただいた」と発言していたという記載もありましたが、これも削除していました。さらには、こんな記述も・・・
「安倍首相夫人が森友学園に訪問した際に学園の教育方針に感涙した旨が(新聞に)記載される」(削除された文書)
また、元の文書では、森友学園の籠池前理事長が保守系団体「日本会議」に関与しているとの記載があり、会議に関係する国会議員による懇談会の副会長として安倍総理の名前が載っていましたが、これも削除されています。「決裁文書の書き換え」という“前代未聞”の行為。
「(Q.今の理財局長の責任は?)私は私の責任があると思っているので、まずは捜査に全面的に協力することや、今起きていることを国会で説明するのが仕事」(財務省 太田充 理財局長)
財務省の職員は・・・
Q.決裁文書の書き換えどう受け止め?
「・・・」(財務省の職員)
Q.職員としてどう思っている?
「・・・」(財務省の職員)
さらに、野党側が午後開いたヒアリングでは、財務省が、去年、会計検査院に提出した決裁文書も書き換え後のものだったことが明らかになりました。
「国会法に基づく会計検査院の検査を財務省が改ざん資料を出して妨害した。これで内閣総辞職ができなかったら立法府の存立はないですよ」(野党議員)
「今のところ麻生大臣は理財局の一部の職員がやったことだって言っていますが、その上に誰かが指示したかどうかってことは答えてないんですね。それはちゃんと明らかにしてもらえますね」(希望の党 今井雅人 議員)
「これはまさに私がおります理財局が自らの判断で、自らの判断でやっております」(財務省理財局 富山一成 次長)
「官房とか、そういうところに相談もせずにやっているんですか」(希望の党 今井雅人 議員)
「理財局が自らの判断でやっております」(財務省理財局 富山一成 次長)
「そこだけは明確だね!」
「その人が政治家からの指示を受けていないってどうしてここで断定できるんですか」(希望の党 今井雅人 議員)
「少なくとも今回の1週間の確認作業では、そういったものは確認できておりません」(財務省理財局 富山一成 次長)
麻生財務大臣は書き換えの背景として、総理官邸などへの「忖度」が働いたかどうかを問われると、「考えていない」と否定しました。また、自らの進退についても「考えていない」と改めて強調しましたが、野党は監督責任などを厳しく問う考えです。これに対し、与党側は表向き状況を見守る構えです。
「財務省の報告、ぜひ検討してみたい、詳細吟味したい。今は、まだそこまでです」(自民党 岸田文雄 政調会長)
「いま麻生大臣の政治的責任があるとかないとかいうことよりも、いま麻生大臣に求められるのは、国民や国会に対して説明責任を果たす」(公明党 山口那津男 代表)
ただ、麻生財務大臣、安倍総理の責任論については、こんな声もあがっています。
「誰が見ても麻生大臣は責任を免れることはできない。結果責任・監督責任は極めて大きい」(自民・ベテラン議員)
「安倍総理は支持率次第。支持率が下がってきたら安倍政権は終わるよ」(自民・中堅議員)
安倍総理はこの局面をどう打開するのでしょうか。
「国民の皆様に深くおわびを申し上げたいと思います。なぜこんなことが起きたのか、全容を解明するため調査を進めていく。麻生財務大臣には、その責任を果たしてもらいたいと思います」(安倍首相)
(TBS NEWS 2018年3月12日18時01分)
引用文中赤字ボールドにした麻生太郎と財務省理財局次長・富山一成の言葉はあまりにも醜いし、安倍晋三の「なぜこんなことが起きたのか」という言葉はあまりにも白々しいというか「盗っ人猛々しい」というか。すべては引用文中青字ボールド大文字にした、「私や妻が関係していたということになれば、私は総理大臣も国会議員も辞める」と大見得を切った安倍晋三の張り子が破られるのを阻止すべく、財務省が省ぐるみで行った大犯罪だ。もちろん圧力をかけたのが安倍晋三であることは疑う余地がないが、安倍の手口については、私の好まない中島岳志が下記のツイートで指摘する通りだろう。
https://twitter.com/nakajima1975/status/973130591729102848
中島岳志
@nakajima1975
拙著『保守と立憲』で書いたように、安倍首相の圧力のかけ方は2001年のNHK番組改変問題の時にすでに確立されている。当時の安倍内閣官房副長官は、NHK幹部に対して「番組を改変せよ」と迫ったのではなく、「勘ぐれ」と迫ったとされる。今回の財務省の件は、これが参考になるように思う。
2:36 - 2018年3月12日
こういう安倍晋三の手口は私も認識しているから、財務省が公開した「書き換え(実質的には改竄。報ステでは改竄とアナウンスしていた)前の文書」にも安倍晋三が指示したなどと書かれているはずはないと考え、本音を言うと大して期待していなかった。しかし、私は安倍晋三の足を引っ張る人間がいることをすっかり失念していた。安倍昭恵である。
公開された改竄前の文書には、安倍昭恵の名前が「安部昭恵」と誤変換された1箇所を含めて5箇所出てくるが、それらはすべて消されていた。安倍昭恵の関与を「なかったこと」にするための公文書の変造だったことは明らかだ。
昨夜はたまたま2つのテレビ局で放送された森友学園文書の改竄のニュースの合間に、NHK・Eテレの「松本清張スペシャル」で『砂の器』を思い出させてくれたが、『砂の器』の犯人・和賀英良と安倍昭恵・晋三夫妻には大きな共通点がある。
まず、和賀英良は文書を書き換えさせた。戸籍の捏造だ。1945年3月14日の大阪大空襲で戸籍原簿が焼失し、戦後、本人の申し立てによる戸籍の再製が行われたことを利用して、本浦秀夫という元々の名前を消し、和賀英良という人間に化けた。そして、自らの過去を知る三木謙一を殺した。
今回の財務省森友文書変造事件でも、文書変造(改竄)の作業に関わったと思われる財務省近畿財務局の職員が自殺した。下記は、共同通信配信による日刊スポーツの記事*1。
https://www.nikkansports.com/general/news/201803120000715.html
森友担当死亡職員、親族に「常識壊された」と漏らす
学校法人「森友学園」の国有地売却問題を担当した財務省近畿財務局管財部に所属し、7日に神戸市内で自殺した男性職員は昨年夏、親族との電話で「常識が壊された」と漏らしていた。親族は詳しい内容を聞いていないとしつつ「実直な人なので、やるべきではない仕事をさせられたのではないかと思う」と語った。親族が12日、取材に応じ、昨年来のやりとりを明かした。
職員は50代。以前は仕事の話をほとんどせず、弱音を吐いたこともなかったが、昨年8月、心療内科に通っていることを告げられた。電話で「毎月100時間の残業が何カ月も続いた」「常識が壊された」とつらそうな様子で話し「異動できずつらい」とも打ち明けたという。
職員はその後、仕事を休んだ。昨年12月に届いたメールでは、年明けの職場復帰の計画に触れながらも「心と体がうまくついていかない」と不安を吐露していた。
近畿財務局が国有地を値引きして売却した問題は、昨年2月に発覚した。森友学園を巡る財務省の決裁文書改ざん問題も踏まえ、親族は「汚い仕事をさせられたのではないか」と疑念を強めている。「正義感が強いから、間違ったことをさせられていれば、すごく抵抗したのではないか。全てを明らかにしてほしい」と訴えた。(共同)
(日刊スポーツ 2018年3月12日20時57分)
自殺したノンキャリ官僚は、業務命令によって明らかな権力犯罪への加担を強制され、それで「毎月100時間の残業が何か月も続いた」というのだから、まさしく究極の「ブラック職場」。精神に異常を来さない方が不思議と思えるくらいの不条理だ。「常識が壊された」との言葉はあまりにも痛ましい。
このノンキャリ官僚は岡山県の出身だという。『砂の器』の犯人・和賀英良の父親は同じ岡山の隔離されたハンセン病患者施設に閉じ込められた。東京で栄華を極め、権力者の娘と婚約してわが世の春を謳歌する和賀は、自らの過去を知る人間を殺した。
安倍昭恵と安倍晋三は、森友学園への便宜を図った昭恵の悪行の証拠を抹消すべく、それとなく財務省に圧力をかけて職員に長時間労働、それも悪事への加担を事実上強制し、それに精神が耐えられなくなった岡山出身のノンキャリ官僚が自殺した。
実質的に、安倍昭恵と安倍晋三が近畿財務局の職員を殺したも同然だ。安倍昭恵・晋三夫妻が犯した罪は、『砂の器』の犯人・和賀英良と同等といえる。
残念ながらこの極悪夫妻を殺人罪に問うことはできないが、安倍晋三は、一刻も早く責任を取って、そして自ら公言した通り、内閣総辞職した上で議員辞職しなければならない。