kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

自らの願望を事実の認識に転化させてしまう「リベラル」の思考様式

ブログ『日本がアブナイ!』は今日(8/17)も石破茂を応援する記事を公開した。


特に見るべきところのない記事だが、ブログ主は各メディアの記事の引用で埋め尽くされたこのエントリを

野党の声が国民に届かない分(メディアが伝えてくれない分)、日本の政治をまともなものに戻すためにも、石破氏にはビシバシと安倍政権の問題点を指摘して欲しいと願っている

と締めくくっている。

この文章を見て思い出したのが、しばらく前にブログ『読む国会』のブログ主氏が発した下記のツイートだ。

https://twitter.com/yomu_kokkai/status/1022405878253641729

自民党はあの憲法草案を出しちゃった時点で死んでいると思っているので、岸田さんとかに期待している人は何を考えているのかわかりません。
最低限あれを撤回しない限り先進国の政党として認める訳にはいかないと思う。

1:58 - 2018年7月26日


氏は私とは立場がかなり違うので(たとえば経済政策や戦争についての考え方など)、賛同できないツイートも多数あるが、上記のツイートには心から共感する。

氏が「出しちゃった時点で死んでいる」と評したところの、人権制限などがてんこ盛りにされた2012年の自民党第2次憲法草案は、岸田文雄が属する宏池会谷垣禎一自民党総裁だった頃に作られた。その時点で宏池会自民党も論外の存在となったし、ましてやその憲法草案に今も固執し、これをベースにした改憲案を作ったという石破茂が論外中の論外であることはいうまでもない。

一方、『日本がアブナイ!』は、昨日も批判した8月12日付エントリ*1に、

「アンチ安倍自民党」ではあるが、「アンチ自民党」ではないわけで。
(中略)自民党は政権与党になる機会がある(実際はかなり多い)ことを思えば、しっかりと現憲法の下、国民主権、平和主義、人権尊重の精神を大切にして、その名の通り、自由&民主主義をしっかりと具現化する政党であって欲しいと願っているし。

と書いていた。

私は、同ブログ主は、いろいろ変なことも書くけれども、それでも少なくとも「反自民」だろうと思っていたので、この文章を読んで正直言ってびっくりした。
いったいどうして、あんなトンデモ改憲草案を党として出した政党に対して「アンチでない」ことなどあり得るのだろうか。ましてやブログ主氏はこれまで何度も「アブナイ自民党改憲草案」を批判してきたはずだ。あのトンデモ改憲草案と、それを出した自民党そのものとには何の関係もないというのだろうか。どうやら思考回路が私とは全く違うようだ。

上記ブログ主に限らず、世の「リベラル」には、自らの願望を事実の認識に転化させて(すり替えて)しまう思考パターンの人が多いのではなかろうか。

一昨年から昨年にかけて、小池百合子に少なからぬ「リベラル」が靡いたことも、この仮説から説明できる。いうまでもないが、『日本がアブナイ!』のブログ主も小池に強く期待した一人で、一昨年末に「小池都知事民進党の連携」に「ちょっとワクワク」していたし、昨年春に行われた東京都の千代田区長選虚で小池が推した現職の多選区長が自公候補の何倍かの票を得て圧勝した時には信じられないほどの大はしゃぎをしていた。他の「リベラル」も同様で、「リベラルにも受け入れられる小池都知事」なる妄言を発している連中がそこら中にいた。彼らはきっと、「リベラルにも受け入れられる小池都知事であって欲しい」と願っていたのだろう。それがいつの間にか「リベラルにも受け入れられる小池都知事」という認識に化けてしまった。

しかし、私は新聞報道によって、昨年7月の都議選を戦うに当たって、小池百合子(やその側近)が民進党から引き抜く候補者を自らの(極右的な)思想信条と合致するかどうかを基準にして選別していたことに気づいていたから、衆院選の前に必ずや小池が「排除」を行うであろうことを、昨年8月2日の時点で言い当てていた。

孫崎享『戦後史の正体』と育鵬社の教科書は「押しつけ憲法論」で完全に一致! - kojitakenの日記(2017年8月2日)より

(前略)前原誠司が(民進党代表選に=引用者註)勝った場合だが、この場合も民進党が丸ごと「国民ファ★ストの会」(「小池新党」の仮称。その後党名の正式名称は「希望の党」と決定された=引用者註)と合併することはあり得ない。民進党とは、国ファがそうなるであろうような右派ポピュリズム政党にとっては疫病神なのだ。特に民進党内の中間派やリベラル系議員は、長島昭久渡辺喜美若狭勝や、その背後にいる小池百合子(小池自身は次の衆院選には間違いなく出馬しない)に排除されるだろう。民進党の看板があっては国ファには絶対に受け入れられないから、結局前原が勝った場合に起きるのは、民進党の解党だろう。(後略)

上記の記事を書いた2か月後に、小池は本当に「排除」騒動を引き起こしたのだが、私は「ああ、とうとうやらかしたな。ついに本音が出たか」としか思わなかった。

その私から見ると、ああ、『日本がアブナイ!』のブログ主は、性懲りもなく小池百合子の時にやらかしたと同じ失敗を、今も石破茂の応援でやらかしてるな、人間というのは進歩しないものなんだなあ、と思う。

立憲民主党支持者の他の愚かしい例として、下記のツイートも挙げておく。

https://twitter.com/seatv35/status/1029955232191528961

#枝野幸男魂の3時間大演説 出版で盛り上がるのもいいけど、前にも話したように次は是非、
民主党政権は本当に失敗だったのか?」
「本当は素晴らしかった民主党政権 栄光の3年3か月」
という本を出版してほしい。今が民主党政権の名誉を回復する一番いいチャンスなのに。
#立憲民主党 #立憲ボイス

21:57 - 2018年8月15日

これなんか本当にすごくて、わずか数年前の歴史をもう書き換えようとしている。こういう姿勢を「歴史修正主義」というのだ。その思考パターンは「安倍信者」を含む右翼と何の変わりもない。

同じ呟きの主は、続けて下記のツイートを発信した。

https://twitter.com/seatv35/status/1030122290539712512

何故私は「立憲党はこういう本を出してほしい」とツイートしたか。この数年間、至るところで貶められてきた民主党政権の名誉回復をしたい、世論にしみ込んだ「民主党政権への拒否感」を払拭したいからだ。

9:01 - 2018年8月16日


上記のツイートに対して、下記の(私から見て適切と思われる)批判がなされた。

https://twitter.com/liberalist_shun/status/1030131562438832128

旧民主党に求められるのは名誉回復ではなく、反省と失敗を踏まえた新たな政策です。拒否感ではなく、2012年の総選挙の大惨敗で、明確に拒否されたわけですから。

9:37 - 2018年8月16日


2012年の総選挙といえば、惨敗した政党は民主党のほかにももう1つあった。いうまでもなく「日本未来の党」であって、あの時負けを受け入れられない「小沢信者」たちは「不正選挙」を絶叫していた。しかし、その後6年経って、「小沢信者」の数は激減し、今では「絶滅危惧種」になっている。かつて「小沢信者」だった人間の中には、未だに立憲民主党枝野幸男に対する攻撃に血道をあげている者もいるがその数は少なく、今では「立民信者」に転じている者が少なくないし、それどころか「安倍信者」に転向した者も多数いる*2

もちろん、今でも「民主党の名誉回復をしたい」と言っている連中の多くは、2012年当時には「小沢一派」に敵対していた者であろう。しかし、当時の対立構造がどうあれ、双方の人たちの思考回路は似たり寄ったりだったのではないか。そしてそれは、現在相対的多数を占めている「安倍信者」たちの思考回路ともそっくりなのではないか。

そんなシニカルなことを思ってしまう、東京に秋風がこの夏初めて立った日の朝なのだった。

*1:https://mewrun7.exblog.jp/27476587/

*2:昨年の衆院選の時、東祥三が政界に戻ってきて立候補して欲しいと言っていた「小沢信者」を見かけたが、この人は東が政界引退後にとっとと転向して、安倍政権が強行成立させた安保法支持に回ったことも知らないのかと鼻で笑ってしまった。東は「国民の生活が第一」の幹部だった頃からオスプレイを絶賛していたし、何より小沢一郎の長年の持論が「集団的自衛権の政府解釈を見直すべき」だったのだから、東の転向には「さもありなん」としか私には思えなかった(笑)。