kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

権力に利用され放題の天皇制は廃止すべきだ/元号を冠した山本太郎の政治団体について

 昨夜(5/24)、大塚英志の『天皇感情論』(ちくま新書)を含む新書本・文庫本6冊を買ったが、もちろんまだ読んでいない。だが、ここらで天皇制について総括をする必要があるし、元号を冠した山本太郎政治団体も批判しておく必要がある、そう考えてこのエントリを上げることにした。

 4月から延々と続いた新元号天皇の代替わりの騒動は安倍内閣の支持率を大きく押し上げた。ある程度予想はしていたが、上げ幅は私の悲観的予想をも上回った。

 中には、私の身近なある人(その人はかなり長い間「小沢信者」だったのに、読売新聞とNHKの岩田明子に洗脳されて最近まで安倍支持者に転じていた)のように、安倍晋三元号決定に過程に深く関与したことをあからさまにひけらかすのを見てドン引きしてしまい、再び政権批判派へと転じつつある例も見ているが、同様の人がいるか、あるいは増えるかはわからない。

 いずれにせよ、改元と新天皇即位の過程ではっきりしたことは、安倍晋三のような、権力とは積極的に行使していくべきだと考えている権力者にとって、元号だの天皇だのといったものはいくらでも利用できるものだということだ。

 第2次安倍内閣が発足した2012年以降、「リベラル・左派」の間では、「リベラルな天皇・皇后両陛下」とやらを安倍晋三への対抗勢力として期待する奇妙な風潮が蔓延していたが、その欺瞞がはっきり示されたともいえる。

 それならどうすべきかは明らかであって、天皇制を廃止するしかないというのが私の結論だ。天皇家をどうするかについては、とりあえず京都に戻ってもらって「貴族」的な位置づけにして*1、時が経った時点で(たとえば50年か60年ののち)その身分も廃止するという流れを考えている。

 また、天皇制を廃止するまでの間になすべきは、天皇に定年制を設け、現在の天皇家内にある「血の穢れ」などの女性差別的なタブーを可視化することだろう。もちろん女性天皇女系天皇を認めても良い。また、最近世界遺産登録とやらで話題になった古墳の発掘調査なども行うべきだ。肝心なのは、天皇制をめぐる「神秘のベール」を剥いでいくことだ。

 愚かしいと思うのは、前天皇明仁夫妻は安倍晋三に対抗していたのに、現天皇徳仁夫妻は安倍晋三に唯々諾々としているなどとつまらないことを言っている人たちであって、私は同じ人間が、「皇太子(現天皇徳仁)が新元号に『安』の字を入れることを拒んだのだ」と見てきたようなことを書いていたことを覚えている。いや、名前を出しておこう。「世に倦む日日」氏のことである。この御仁の物言いを信じるなら、3月には新元号に「安」の字を入れることを拒んだ「リベラルな皇太子」が、天皇に即位するやいきなり「内奏」の映像を公開することを許してしまう「そんたくナルちゃん」に変身してしまったことになる。そんな馬鹿なことがあるか。最初から安倍晋三元号に「安」の字を入れさせるつもりなど全くなく、日本の古典からとることによって右翼のご機嫌を取り結ぶことができれば良かっただけの話だ。普通には「俺様の命令につべこべ言わずに従え」という意味にしかとれず、なおかつ漢字の画数も少なくて読み間違う恐れもない新元号は、安倍にとっては理想的だったのだ。

 そういえばその新元号を冠した政治団体名を主宰する山本太郎の一派が参院選(あるいは衆参同日選挙)でどれくらい伸びるかなどとネットでは言われているが、私は2007年の参院選当時における「9条ネット」程度の浸透力しか持ち得ないと考えている。

 「9条ネット」など誰も覚えていないだろうが、12年前に天木直人がここから立候補して落選した。比例区での9条ネットの得票数は273,755票、天木直人の個人名での得票数は29,158票だった。なお同じ参院選では、ネット右翼の間では「維新政党・新風」が大人気だったが、この政党は政党名で170,515票、党首の瀬戸弘幸の個人名では14,676票で、「9条ネット」にも及ばない惨敗だった。

 その元「9条ネット」の天木直人だが、ネットでこの人を応援していたブロガーたちの多くはのちに「小沢信者」に転じた。その代表格が『反戦な家づくり』のブログ主である山岸飛鳥氏だ。当時はまた「『右』も『左』もない、オレは『下』や」というスローガンを編み出した「喜八」氏*2も活躍していて、この御仁は翌2007年に第1次安倍内閣が倒れると、「水に落ちた犬は叩かない」と宣言して安倍晋三に対する批判を止め、安倍の盟友だった平沼赳夫城内実といった極右政治家たちの応援の旗を熱心に振るようになった。その「喜八」氏もまた「小沢信者」だった。

 こうした流れの延長線上に山本太郎はいる。また、2016年の参院選では山本太郎はあの右翼民族主義者の三宅洋平(東京選挙区に立候補)を熱心に応援した。これは、結果的に三宅同様「小沢信者」筋からの支持があった田中康夫(おおさか維新の会公認で東京選挙区に立候補)の票を食い、民進党小川敏夫が「漁夫の利」を得て辛うじて当選したのだった。

 昨日、『広島瀬戸内新聞ニュース』が公開した下記記事のグラフに当てはめると、山本太郎元号政治団体*3は第3象限(左下)の「再分配大・権威主義」に入るだろう。

 

hiroseto.exblog.jp

 

座標軸分析 新自由主義権威主義のハイブリッドとしての安倍ジャパン

 
欧州での対立軸は、マクロンポストモダニズムvs極右(再分配を重視しつつの権威主義。トランプも比較的個々に近い。)。これに、左上の「左翼」4.0)がからむ。
日本の場合は、右上のポストモダニズム(小泉、小池、旧民主党前原系)か、右下の安倍ジャパンかの二者択一を迫られがちでこれが不毛な原因である。
野党・市民連合を「サンダース的な勢力」として日本でも増大させていく必要がある。
世界的に見ると、安倍晋三に一番近い政治家は習近平だろう。新自由主義権威主義のハイブリッドだからだ。ただ、安倍の場合信念がないから、どこにもかしこにもゴマをするという展開になる。
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(『広島瀬戸内新聞ニュース』2019年5月24日)

 

 山本太郎が「経済左派」であることは疑う余地がないが、2013年秋の園遊会で当時天皇だった明仁に「直訴」したり、同じ頃に山本本人が自身について「保守ど真ん中」だと語っていたことから、天皇主義系の保守主義者(あるいは右翼)であり、「再分配大・権威重視」のカテゴリに間違いなく入ると考える。

 私は上記グラフの第3象限(左下)に入るような政治勢力が、特にこれまで旧民主・民進系に投票していた人たちから票を奪うとはどうしても思えない。民主・民進系に投票する人たちには「多様性重視」の傾向が強いとともに、自分自身では新自由主義に反対しているつもりなのに「財政危機」を煽るマスメディアの報道などに影響されて財政再建を施行してしまったりした結果、上記グラフの第1象限(右上)に属してしまっている。だからいとも簡単に小池百合子に「ワクワク」してしまうのだが、その一方で対極に当たる第3象限にはなかなか流れないと思われるのだ。

 「『右』も『左』もない、オレは『下』や」というスローガンに共鳴したような人たちとは山本太郎は相性が抜群に良いが、その勢力は限られている。かつて存在して民主党と連立政権を組んだ国民新党は明確にこのカテゴリに入るが、少数派だった。

 その少数派から、「俺たちも仲間に入れてくれ」とばかりに露骨に山本太郎にすり寄っている(ようにしか私には見えない)のが、先日報じられた小林興起らの動きだ。これに天木直人も名を連ねている。産経の記事を以下に引用する。

 

https://www.sankei.com/politics/news/190521/plt1905210052-n1.html

 

小林興起氏が新政治団体参院東京へ 比例に2人

 

 小林興起は元自民党衆院議員だが、2005年の「郵政総選挙」で小泉純一郎によって小池百合子を刺客に送り込まれて惨敗した。のち小沢一郎に拾われて民主党衆院議員として国会に返り咲いたが、「国民の生活が第一」を経て愛知の新自由主義政党「減税日本」に属したことがあるなど、経済政策に関する定見など何もない。ただ、政治思想的には「石原慎太郎の直系」を自認するだけあってバリバリの極右、そんな御仁だ。

 その小林にくっついてきたのが天木直人や黒川敦彦であり、天木は鳩山由紀夫山本太郎にも「参加を呼び掛ける」などと言っているらしいが、山本にとっては「無能な味方」以外の何物でもあるまい。いい迷惑であろう。傍から見ていても、いかにも物欲しそうな小林興起一派の妄動には「なんてみっともない」としか思えない。

 今ネットの一部で流行りの「MMT(現代金融理論)」がらみでいえば国家社会主義者である三橋貴明の名前も思い出されるが、この御仁も2010年の参院選比例区自民党公認で立候補して惨敗したことがある。今回仮に山本の元号政治団体から立候補しても同じ結果に終わるに違いない。

 またぞろ三宅洋平なんだろうか。今までに挙げた名前よりは少し「大物」である内田樹あたりが立候補すれば少しは違うかもしれないと思うが、内田はJR住吉駅前(神戸市東灘区)にそびえているとの噂の豪邸を手放すリスクを冒すような真似はしないだろう。ちなみに昨日、内田と鳩山由紀夫ともう一人の三人が共著者になっている、知らない出版社が出した新書本が目に入ったが、思わず目を背けてしまって立ち読みもしなかった(笑)。

 そんなわけで、あんな元号政治団体参院選あるいは衆参同日選でブームを起こすとは私には到底思えないのだが、少なくともネットでは山本を賛美する声が絶えないことには「なんだかなあ」と思ってしまう。

 私にとっては元号政治団体名に冠した時点でアウト、論外もいいところなのだけれど。

*1:もちろん人はみな平等であるべきだと私も思うからその意味では全く好ましくないが、これまで天皇制を受け入れてきた人たちとの妥協の案である。

*2:「喜八」氏はのちに本名を公表し、現在は中村順の本名でツイートの発信を続けている。

*3:私はあの元号をたとえ平仮名でも書きたくないので、今後この日記では山本太郎政治団体を、「元号政治団体」と呼ぶことにする。