参院選の情勢調査は、メディアによるばらつきが大きいけれども情勢自体は序盤から終盤まであまり変化してなくて硬直が感じられる。唯一の例外は、山本党が若干勢いを増して、少なくとも1議席と政党要件の獲得がほぼ見えてきたところだろうか。
今朝、ネットを眺めてみて「そうだよなあ」と思ったツイートを1件挙げておく。
今朝の7/17(水) #朝日新聞 朝刊13面に「#武器としての世論調査」の著者、三春充希さんが載っています。
— Kajiwara(こんな人たち) (@Lightning_law) July 17, 2019
選挙に行かない人についての考察です。私もよく思うのですが、日本が「転落」していっているのに何故その事実を受け入れたがらないのでしょうか?国民はよく考える必要があると思います。#選挙 pic.twitter.com/j0jkBGPD8U
今のこの国においては、2つの憂慮すべき傾向が見られると思う。一つは、上記ツイートが指摘する通り、「日本が『転落』していっているのにその事実を受け入れたがらない」人たちで、彼らがすがるのが安倍晋三であり自民党だ。
安倍晋三が彼らの歓心を買うべく、選挙戦中に反韓感情を煽るという論外の戦術をとっている。しかし先般のフッ化水素輸出規制の件で韓国のメーカーが原料の供給元を日本から中国に切り替える動きが報じられることからもわかる通り、安倍政権が首を絞めているのは自国の産業なのだ。これが愚行以外の何物でもないという事実から「日本が『転落』していっているのにその事実を受け入れたがらない」人たちは目を背ける。
もう一つ憂慮される傾向は、没落する日本や日々圧迫される度を強める人々の生活といった状況を打破してくれる「強力な指導者」を渇望することだ。小泉純一郎や小池百合子などはそれで人気を得たが、山本太郎人気もそれに通底するものだ。近年で唯一安倍が脅かされたのは、一昨年夏の都議選前後における小池百合子一派の「旋風」だったことが、この「もう一つのどうしようもない傾向」の表れの典型例だろう。山本党の「特定枠」の活用は私も高く評価するが、反面、山本太郎の行動に議会制民主主義からはみ出す傾向が見られることは警戒すべきだ。このことについては、参院選前に木下ちがや(こたつぬこ)氏が田中龍作批判を絡めて指摘したのをこの日記で紹介したことがあるが、昨日も平河エリ氏が同様の(と私には思われる)指摘をしていた。一連のスレッドは実に興味深いので、全文が表示されるように以下に引用する(一件おきに引用するので、こうすれば全文が読めると思う)。
私は、山本太郎さんは国会を手段として捉えているのだと理解しています。あくまでそれは政権交代をして政策を実現するために国会を利用する、と。採決の棄権も、牛歩も、天皇陛下への直訴も同じ文脈です。
— 平河エリ(国会ライター) (@yomu_kokkai) July 17, 2019
私は評価しないが、そのやり方で問題ない、むしろ正しい、と思う人がいるのは理解できます。
あらゆるやり方を使って政権を変える、という考えは、本来の質疑を積み重ねていく国会、ましてや熟議の府である参議院のやり方に合わないとは思います。
— 平河エリ(国会ライター) (@yomu_kokkai) July 17, 2019
しかし、それが6年間安倍政権が続いたことにフラストレーションを感じている方の間で、一定の注目や支持を集めるのは、十分理解するのです。
しかし逆説的に言うなら、だからこそ安倍政権の票を脅かす存在になるのだ、という考え方はあるかもしれません。安倍政権も同時に、決められない政治への反発で支持を伸ばしてきた政党だからです。
— 平河エリ(国会ライター) (@yomu_kokkai) July 17, 2019
ここで言う「遠い存在ではないのかもしれない」というのは、主義主張は違っても、議会という存在の捉え方は似ているのかもしれない、という意味です。
— 平河エリ(国会ライター) (@yomu_kokkai) July 17, 2019
で、それらを踏まえて一人の政治家としての山本太郎をどう評価するか、というのは、あくまでそれぞれの基準の問題だと思います。
— 平河エリ(国会ライター) (@yomu_kokkai) July 17, 2019
私はなぜ彼が支持されているのかはある程度文章化したつもりなので。
上記ツイートのうち、「『決められない政治』に対する反発と、山本太郎旋風は、ある意味地続きにある」、「安倍政権も同時に、『決められない政治』への反発で支持を伸ばしてきた」、「安倍政権の支持層と、山本太郎さんの支持層は、決して遠い存在ではないのかもしれない」という指摘は特に鋭いと思った。それと同時に、先日取り上げた、「山本太郎が民主主義とファシズムの線上に立っている」と指摘した木下ちがや氏の指摘と上記平河エリ氏の指摘とは酷似しているとも思う。
木下氏の論考を取り上げた時、共産党と立憲民主党を戦前の政友会と民政党に、安倍政権(自民党)を軍部に、山本太郎を社会大衆党にそれぞれなぞらえて、政党政治崩壊の危機を論じたような記憶もあるが、あるいはそこまではっきりとは書かなかったかもしれない。木下氏は共産党系の人で、上記平河氏は旧民主・民進系の人だと私は思っているが、それも興味深いことだ。安倍政権と山本太郎とは「上下から」議会制民主主義に脅威を与える存在になりつつある。戦前の政党政治崩壊過程と現在の政治状況のアナロジーは、やはり有効だ。
だから私は、山本党の2議席と政権要件獲得までは希望するが、山本氏自身は議席を失った方が良く、ましてや安冨歩の議席獲得など(あり得ないとは思うが)あってはならないと強く思うのだ。