kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

参院選をめぐる2つの朝日新聞記事

 先月半ばあたりから、肩や腕の調子が悪くてなかなか思うようにブログが更新できないのだが*1参院選をめぐる朝日新聞のダメ記事と良い記事が話題になっているので軽く取り上げる。

 

 まず批判されているダメ記事から。上西充子氏のTwitterより。

 

 

 新聞社でも政治部は概して保守的だから、その政治部の次長だったらこんな記事も書くよなあ、というのが私の感想。

  一方、「よく書いた」と言われているのが下記記事。

 

https://www.asahi.com/articles/ASM775J0MM77UTFK009.html

 

首相「民主党の枝野さん」間違い連発 演説の定番に?

松山尚幹、吉川真布 

 

 参院選安倍晋三首相自民党総裁)が応援演説する際、立憲民主党枝野幸男代表を「民主党の枝野さん」と「言い間違い」をする場面が頻発している。その後に「毎回、党が変わるから覚えられない」などと「釈明」を加え、演説の定番文句になりつつある。

 4日の公示以降、首相の「言い間違い」と「釈明」を最初に確認できたのは、6日午後の滋賀県草津市での街頭演説。「野党の枝野さん。民主党の、あれ民主党じゃなくて今、立憲民主党ですね。どんどん変わるから覚えるのが大変」と話すと、聴衆から大きな笑いが起こった。同日夕の大阪市内での演説でも「この前、民主党の枝野さんと討論、民主党じゃないや」と述べた。

 翌7日は、千葉県内と東京都内で行った計6カ所すべての街頭演説で同様に「言い間違い」をして、聴衆の笑いを誘おうとした。

 首相の「言い間違い」は毎回、介護や保育の現場で働く人の待遇改善を訴えるくだりで出ている。枝野氏が保育士の待遇改善を訴えていることに言及し、「3年3カ月で全く待遇は改善されていないどころか、1・2%下がっている」などと、かつての民主党政権を批判している。(松山尚幹、吉川真布)

 

朝日新聞デジタルより)

 

 朝日の松山尚幹、吉川真布両記者は、安倍晋三は「言い間違」えているのではなく、わざとやっていることを暴露したわけだ。これはもちろん良い記事だと思うが、「焼け石に水」の感は否めない。

  少し前にも、毎日新聞が国会で三原順子が発した虚言の「ファクトチェック」をやっていた。三原は「民主党政権時代には年金支給額は減ったのに、安倍政権下で年金支給額は増えた」と言ったのだが、事実は安倍政権下で年金支給額は民主党政権時代よりももっと多く減っていたのだった。

 ただ、毎日新聞はこの記事を「有料記事」にしたために、三原が虚言を発した事実は全然世に広まっていない。

 先日、TBSの党首討論会でキャスターの小川彩佳が示した、野党党首たちを貶めた謎の冊子にしても、あれを示したのはTBSくらいのものだったらしい。これもネットではよく知られているが、一般にはほとんど知られていないと考えるべきだ。『news23』の視聴率は4%程度しかない。

 ところで、現在のメディアの腰の引けぶりについてだが、これはもはや読者や視聴者のニーズに合わせていると考えなければならない。

 思い出されるのは、公文書の改竄が暴露された昨年3月の一時期、あの『夕刊フジ』が一時安倍政権批判に舵を切ろうとした時期があったことだ。おそらく同紙の編集部は、これはもう政権は保たないと判断したのだろう。しかし、1週間ほどあとにはもとの野党批判・中韓批判で売るスタイルに戻った。おそらく安倍政権批判が読者に不評を買ったのだろう。

 このように、もう昨年あたりから日本国民一般の相対的多数がマスメディアに「政権擁護の報道をせよ」と圧力をかける状態になっていると私は認識している。戦争中に毎日新聞朝日新聞が競って戦意昂揚を煽ったのも、そういう記事を書く方が新聞が売れたからだ。つまり、日本国民が新聞を転向させたと言っても過言ではない。

 このあたりの転向の過程は、数日前に読み終えた半藤一利の『戦う石橋湛山』(ちくま文庫)が鮮やかに描いていた。

 

www.chikumashobo.co.jp

 

 この本の単行本初出は1995年だったが、1995年よりも今読まれるべき本だ*2。本によると、陸軍による政治家や新聞などへの工作は粘り強く続けられた。最初に転向したのは犬飼毅や鳩山一郎などの政友会の政治家であって、彼らは1930年の「統帥権干犯」問題で自ら政党政治の首を絞めた。これに続いたのが毎日・朝日の二大紙であって、両紙は1931年の満州事変前後に転向したのだった。戦争を実際に起こすことは、軍部(や右翼政権)にとって世論を味方につける大きなアクションになる。ひとたび転向すると、読者からの圧力によってメディアはもとに戻ることができなくなる。ことに、歴史的に御用新聞の伝統があった毎日と比べて、大正時代にリベラルな論説で売っていた朝日は、毎日が戦争煽動で部数をどんどん拡大するのに、同じ方向性で競ってしまったことが最大の失敗だった。

 今もそれに近い状態にある。

 私は以前この日記に、もう安倍政権が消費税増税を予定通り行っても参院選自民党が勝つとの計算が成り立つ、だから消費税増税は予定通り行われるだろうし、同様に衆参同日選挙という手段によらなくても自民党は勝てるから解散はしないのではないかと書いた。その通りの展開になっている。

 だからマスメディアの世論調査で自公優勢との情勢調査結果が出ても驚きはなかった。しかし、そんな私でも共同通信の情勢調査には暗澹たる気持ちになった。朝日や毎日の調査では、自公維の3分の2確保は微妙だという結果になっていて、両紙はそれを見出しに打ったが、東京新聞などの地方紙に掲載された共同通信の予想は、朝日や毎日よりも与党の予想議席が多く、その数を足し合わせると、あの2013年の結果よりもさらに自公維の議席が増えてしまうのだ。

 いくらなんでもそれは阻止しなければならない。

*1:この状態は休日にも仕事のための調査を強いられる生活に起因している

*2:但し、リベラル・左派系の人は、著者の半藤一利保守系の人であることに留意する必要がある。私には、抵抗なしには読めない箇所がいくつかあった。