昨日(4/27)、東京で新たに確認された新型コロナウイルス陽性患者の数は39人で、同じ月曜日だった3月30日(13人)以来の少なさだった。
これはどうやら土日には医療機関による保険適用の検査数がきわめて少ない影響もあるようで、その分の検査数が少なかった影響「も」あると思われる。都の保健所による検査は、このところずっと土日も返上して結構な数をこなしているが、民間の医療機関はそうもいかない。
しかし、人の出入りを抑えた効果も間違いなく出ている。
こう書くと、いや、昨日は全国で22人、東京でも6人もの死者が出ているではないかと言われるかもしれないが、感染から発症には2週間程度のタイムラグがあり、発症から死亡または回復が確定するまでにはさらにタイムラグがある。しかも後者はタイムラグのばらつきが患者によって大きい。たとえば俳優の故岡江久美子氏は感染確認から死亡までがあっという間だったが、集中治療室を出て人工呼吸器も外れ、回復途上にあると言われる元プロ野球選手・監督の梨田昌孝氏は闘病が長い。梨田氏はさすがに元プロスポーツ選手だけのことはあって頑健だから回復しつつあるのだろうが、長い闘病生活の末についに力尽きてしまう患者さんもおられるに違いない。このように考えると、感染あるいは発症から死亡までのタイムラグはかなり長く尾を引いた分布になるはずだ。とはいえそのピークはあり、それは感染のピークから約1か月遅れて出てくるといったところではないか。
つまり、現在死亡者数が多いのは、3月下旬に「緩み」が出た頃に感染が多かった影響だと思われる。
現在のように、新たに確認される陽性者数が減少する一方、死者数がピークを迎える時期が必ずきて、その時には日本国内の致死率が日に日に跳ね上がって韓国を大きく上回ることになるだろうとは、以前から確実に予測することができたし、現にそういう意見を発信していた人たちは少なからずいた。何も私だけが言っていた*1わけでも何でもない。
下記NHKの報道から計算すると、日本国内の新型コロナウイルス感染症による致死率は2.89%(四捨五入で2.9%)、人口当たりの死亡率は韓国の約3分の2に当たる66%になった。致死率では韓国の2.3%をかなり上回る。しかもこの数字は、新たな感染の波が発生しない限り、どんな国でも減少へと転じることはない。たとえば、新たな陽性者がほとんど確認されなくなった韓国でも、長患いの末に死亡した人がぽつぽつと発生するためか、致死率はわずかながら上がり続けている。日本国内での致死率は最終的に4%を上回っても不思議はないのではないか。そして、今後も日本と韓国の致死率の差が広がり続けることは絶対に間違いない。このことは100%の確信をもって断言できる。ただ、今後は死亡者も減少傾向に転じるだろうから、人口当たりの死亡者数が最終的に韓国と同程度にとどまる可能性はまだ残っていると思っている。
以上はもちろん素人考えだが、下記のようなどうしようもない陰謀論を呟く「学者」さんよりはマシだろうと勝手に思っている。
まさかとは思うが、現政権は何がなんでも五輪を来年開催したい、嘘だろうが何だろうがコロナは終息したことにしたい、だから検査も休業要請も補償も最小限のやったふりだけで感染者は早期に激減したことにする、その陰で実際には感染も死亡も増え続けるがなかったことにされる、という暗鬱な想像
— 本田由紀 (@hahaguma) 2020年4月27日
これはあかん。感染者数の減少と死者数の高止まりは合理的に説明できるのに、分野は違うとはいえ学者がこんなツイートを発してはいけない。またこんなツイートに「いいね!」を5千以上も与えてはいけない。
「いいね!」の数でいえばもっとたちが悪いのは、弊ブログでも何度か批判したことのある「Dr.ナイフ」が発した下記ツイートだ。
コロナ対策がうまくいってる国は、政権がリベラル路線ですよね。ドイツ、台湾、韓国。
— Dr.ナイフ (@knife9000) 2020年4月26日
そして科学主義。何が正しいか追及し、間違ったと思えば正す姿勢が感じられる。
私は常々、こんな人のフォロワーが6万5千人もいることに、この国の「リベラル」の頽廃を感じているのだが、上記ツイートの能天気さはどうだ。
まずドイツは周辺の他の欧州諸国と比較すればマシなだけで、死亡者数、致死率ともに結果を出しているとはもはや全く言えない。下記ジョンズ・ホプキンス大のサイトを参照すると、ドイツでの死者は6千人を超え、致死率は3.8%になった。
そして、韓国や台湾の成功が、従来のリベラルな価値観とは真っ向から反する、強力な監視によるものであることについては、一昨日のTBSテレビ「サンデーモーニング」の番組末尾の特集である「風を読む」でも問題提起されていたではないか。
前記「Dr.ナイフ」のツイートには、胸の悪くなるようなお追従の反応も少なくないが、きっちり「ナイフ」を批判したツイートも(当然ながら)それなりにある。ただ残念ながらその数はいたって少ない。下記は例外的な良い方の例。
ドイツは死者5,880人、人口100万人あたり70人(G20で5番目の多さ)なので、うまくいってると言えるのかどうか。
— 雨雲 StayAt🏠 (@xAegvg0JipIY0hD) 2020年4月26日
台湾や韓国がうまくいってる大きな要因が国民監視。手法は全くリベラルじゃない。
ナイフさんの認識も間違ってたと思えば正すべきですね。 pic.twitter.com/uzh2yJ7i4c
これはリベラルにとっての大きな課題なのだ。だから「サンデーモーニング」も取り上げた。この問題に関しては、昨日も書いた通り、「立憲主義のIT版」とでもいうべき、権力による悪用に歯止めをかけるシステムの確立が、今後の世界にとっての大きな課題になると考えている。
しかしそんな問題意識など露ほども持たないのが「Dr.ナイフ」なのだ。こんな能天気なアカウントに6万5千人ものフォロワーがつき、リベラルの学者である本田由紀氏までもが怪しげな陰謀論ツイートを発し、それに5千件以上もの「いいね!」がつく。この国の「弱いリベラル」にはため息しか出てこない。
一方、「経済を殺さない準備」に力点を置いているかに見える江川紹子氏のツイートも、現在の安倍政権がその「経済」ばかり偏重する傾向が強い「経産省政権」であることを考えれば、大いに問題だ。
これを見ると、検査数は増えているが、新たな感染者の増加は抑制されてきている。どの対策がどう効いたのかは専門家の分析に任せるとして、頑張ってきた結果が見えてきた感じ。来月6日まで今の状態を続け、その後は対策をとりつつ段階的に緩和して経済を殺さない準備を加速させる必要あり、では?
— Shoko Egawa (@amneris84) 2020年4月27日
早期に厳戒態勢を緩めてしまうと、抗がん剤の投与みたいな逐次的な緊急事態宣言発令が必要になってしまうのではないか。抗がん剤の投与は、患者の命を守る必要から数バッチに分けて逐次の投入をせざるを得ないのだろうが、社会において「このままだと経済が死にそうだから」といって早期に対策を緩めたら、結果としてまた感染者が増えてしまって追加の緊急事態宣言発令が必要になってしまい、最終的には経済に対してもより大きなダメージを与えることになってしまうのではないか。そのように危惧する。
*1:以前、日本の致死率が最終的に韓国を下回ることは至難の業だと書いたはずだ。