またこんなことを言う人が出てきた。この人はフリージャーナリストにして、元NHKワシントン特派員。
感染者死亡率は、ドイツよりも低い。重症者数も急激には増えていません。
— 熊谷 徹 (@ToruKumagai) 2020年7月22日
なんとかこの状態が続いてほしいと思います。 pic.twitter.com/UH8tfWVtNt
観戦者死亡率って、いわゆる「致死率」のことでしょ。それだったら今の状態は続きませんよ。春にそうだったように、どこかで底を打って、以後上がり始めます。
ジョンズ・ホプキンズ大のダッシュボードを見ると、ドイツでの陽性者累計204,276人に対して死亡者数は9,102人、致死率4.46%に対して、日本での陽性者累計27,122人に対して死亡者数990人で、致死率3.65%になっていて、致死率は日本の方が低い。
でもこれは5月末には逆だった。日本での致死率は5.3%だったのに対し、ドイツの致死率は今と同じくらいで、日本の方が高かった。
なぜ、6月以降致死率が下がったかといえば、それは新たな感染者数が目立って増えてきて、言い方は悪いけれども直截な表現を用いれば、「そのうち死ぬかもしれない人がまだ死んでいない」だけの話だ。
以前、この日記に致死率は上がりも下がりもしない定常状態が一番良いと書いたことがある。死者が生き返らない以上当たり前の話だ。
そして、3月や4月頃にも「日本はドイツや韓国と比べて致死率が低い」と得意がる人が多数いたのだった。しかし、それは単に日本がドイツや韓国よりも遅れて新型コロナウイルスに感染した人が多かっただけの話だ。日本での致死率は、いったん1.7%くらいまで低下したあとじわじわと上がり始め、特に4月後半から5月にかけては急増して、ピーク時には5.3〜5.4%にまで上がった。その後ほぼこの数字が変わらなくなったあと、最近になって新たな陽性者が急増し、それにつれて致死率が目立って下がってきたのだ。
医療崩壊さえ起きなければ、致死率はPCR検査による陽性者の捕捉率と強い相関を持つと考えられる。日本はPCR検査数が少なく、故にPCR検査による陽性者の捕捉率が低かったから、5月末までに致死率がまず韓国を抜き、次いでドイツを抜いて悪くなった。
そんなことを、元ワシントン特派員のフリージャーナリスト氏は未だに理解していないのかと、頭が痛くなった。日本ではPCR検査数を増やしたとはいっても他国に及ばない。ただ、ドイツなど欧州と比較して感染者数自体が少ないので、今回はドイツよりも致死率が高くならない可能性はかなりあるが、それでも現在の重症者や死亡者が少ないままに推移するというのは根拠なき楽観論でしかない。
まあこの点については、フリージャーナリスト氏も「なんとかこの状態が続いてほしいと思います」と、願望でしかないことを明記しているわけだけれど。
「感染者死亡率」というのはその程度の数字だから、元ツイートは「人口当たりの死亡率は、ドイツよりも低い」と書かれるべきだった。それなら文句なく事実だから、私が目くじらを立てることもなかった。
そうではなく、致死率を都合良く用いていたから論難した次第。
致死率なんかに着目してはいけない。私がよくこの議論を持ち出すのは、致死率を都合良く用いる人があとを絶たないからに過ぎない。