新型コロナウイルス感染症に対して対策を打った時の効果は、それから約2週間後から始まる。昨年12月28日にGoToキャンペーンを停止した効果は1月11日頃から、1月7日に発出された緊急事態宣言の効果は1月21日頃から出始めるのだ。
こう考えると、先週新規陽性者数が減少へと転じたことは、GoTo停止の効果の表れであり(もちろん他の要因もあるだろうけれど)、ここ数日さらに新規陽性者数が減少の度合いを強めているのは、GoTo停止に加えて緊急事態宣言を発出した効果だといえる。
PCR検査拡充も必要だが、検査拡充よりも人と人との接触を止める方がはるかに効く。こんなことは当たり前であって、ほっておけば感染は指数関数的に増えるのに対し、検査数を指数関数的に増やすことなどできるはずがない。検査数はどの国でもずっと拡充を続けているのであって、たとえばアメリカではいつの間にか新型コロナウイルス感染症の致死率が1.7%にまで下がっている。あれだけ莫大な死亡者を出しているが、感染者の捕捉率は第1波当時に比べてずいぶん上がっているのだ。その間、めちゃくちゃに検査数を増やしたに違いないが、それは感染の抑制に寄与できなかった。
アメリカの例は、人と人との接触を抑えることの重要性をよく示している。そしてこのことは、「GoToキャンペーン」なる、人と人との接触の機会を増やす政策が有害きわまりないことも示している。
京都大学のグループ(西浦博ら)が、「GoToトラベル」キャンペーンが感染者増に影響を与えたのではないかとの研究結果を発表した。下記はNHKの報道。
以下引用する。
「Go Toトラベル」感染者増加に影響か 京都大学のグループ発表
2021年1月25日 4時29分
政府の観光需要の喚起策「Go Toトラベル」が始まった去年7月、旅行に関連した新型コロナウイルスの感染者が増えていて、キャンペーンが当初の段階で影響した可能性があるとする研究論文を京都大学のグループが発表しました。
これは京都大学の西浦博教授らのグループが国際的な医学雑誌「ジャーナルオブクリニカルメディシン」に発表しました。
グループは、去年5月から8月にかけて24の県から報告された新型コロナウイルスの感染者およそ4000人を分析し、およそ20%が、発症前に旅行していたり旅行者と接触したりするなど旅行関連とみられる感染者だったということです。
そして、期間ごとの発生率を比較する手法で詳しく分析した結果、「Go Toトラベル」が始まった去年7月22日からの5日間では旅行に関連した感染者は127人で、発生率は前の週の5日間と比べて1.44倍に高くなっていたことが分かったということです。
さらに、旅行の目的を観光に限定すると、発生率は前の週の5日間の2.62倍になっていました。
論文では、地域によって公開情報に差があることなどから、今回の分析だけでは「Go Toトラベル」が感染拡大につながったかどうかを決めることはできないものの、少なくとも初期の段階では感染の増加に影響した可能性があるとしていて、グループでは今後、感染の抑制と経済活動の回復のバランスが取れた政策を探るためにも、さらに科学的な証拠が必要だとしています。
(NHKニュースより)
出典:https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210125/k10012831381000.html
「はてなブックマーク」のコメントより。
「Go Toトラベル」感染者増加に影響か 京都大学のグループ発表 | 新型コロナ 経済影響 | NHKニュース
GOTOは関係ない!ってさんざん言ってる辛坊のリアクションはよ。<a href="https://news.yahoo.co.jp/articles/8b14669219ba214b128acf84568033d07bdd590c" target="_blank" rel="noopener nofollow">https://news.yahoo.co.jp/articles/8b14669219ba214b128acf84568033d07bdd590c
2021/01/25 06:33
辛坊治郎が西浦博を目の敵にする理由は、下記の本を読んで(まだ半分ちょっとしか読み終えていないが)よくわかった。
この本は西浦博へのインタビュー(聞き手・川端裕人)をもとに構成されている。
昨年の緊急事態宣言の少し前の3月に、大阪府知事の吉村洋文が大阪府と兵庫県との移動自粛を求めたことがあったが、これは当時弊ブログでも推測した通り、厚労省からの助言を吉村や大阪市長・松井一郎が曲解して阪神間の移動だけをターゲットにしたものだった。容易に想像される通り、この助言には西浦博が関係していた。西浦は、「僕らが思っていたものとはだいぶ違う」「兵庫県との往来だけをピンポイントに止めても流行制御に寄与しないことは皆さんすぐわかりますよね」*1と言っている。
西浦は当時、大阪の専門家会議でアドバイスしていた阪大の朝野和典教授(感染制御学)に「大阪府の政治家の戦略は、この後、対策をして乗り切ったら、そんな流行は起こらなかったじゃないかと君を責めた上で、いろんな自粛要請などを緩めていくということだからね。僕は失敗だと思うよ」と怒られたそうだ*2。
事態は結局その通りになった。西浦は、「実際、自粛に後ろ向きな大阪の政治家は、緊急事態宣言後の経済的ダメージの話をそらすためにも、僕をターゲットにして宣言が本当に必要だったのか、かなり執拗に(でもチープな質で)責め立ててくることになります」*3と述懐している。
本を読んでいて、小さな文字で表示された「(でもチープな質で)」というくだりには爆笑してしまった。実際、吉村洋文がそれをやったのは昨年6月であって、当時吉村が西浦博を責め立てるための武器として大いに期待していたのが、阪大の中野貴志教授(原子核物理専攻)が提唱した「K値」であり、それを中野教授に成り代わってテレビで大々的に宣伝していたのがかの京大の万年准教授・宮沢孝幸であり、その宮沢と馴れ合っているのが辛坊治郎だ。だから辛坊は西浦博を目の敵にするのだ。
西浦博に対してよくなされる「何も対策をとらなければ42万人死ぬ」という仮説に対する批判も、上記の吉村洋文らと同様のお粗末な「批判もどき」に過ぎないが、これをやっているのは必ずしも新自由主義や右翼の側ばかりではない。一度書いたが、この他の件では教えられることの多かった醍醐聡氏などもこの論法を用いていた。こういう分野については全然ダメなんだなと、率直に言ってそう思ったものだ。誰にでも得手不得手はあるということか。ついでに書くと、移動の自由という私権の制限に関する辺見庸の意見にも全く同意できない。人と人との接触の制限は、確かに大きな私権の制限ではあるが、いついかなる場合にも私権が制限されてはならないというのはリバタリアンの思想でしかない。
他にも、寺島実郎などが「42万人」批判をしつこくやっているが、寺島の場合は他の件でも全然信頼できない論者だ。
ところで昨日、立憲民主党が西浦博を参考人として国会に呼ぼうと要望したところ、自公にはねつけられた一件があったらしい。
立憲が要望した西浦さんの参考人招致は自民党が拒む。その理由がコレですね。https://t.co/lzER8WFK8n
— 冨永 格(たぬちん) (@tanutinn) 2021年1月25日
率直に言って、西浦博が政府の政策であるGoToキャンペーンを批判したらすぐにそれに飛びつこうとする立民の姿勢もどうかと思うが(彼らがこれまで何をやってきたのかよくわからない。実際、西浦氏は立民から要請を受けてもいないとのことだ)、「民間人だから」とかいうわけのわからない理由でこれを拒絶する自公の怪しさは立民どころではない。全く信用できない。
昨日は、産経が何やら怪しげな「世論調査」の結果を出してきて、三春充希氏に門前払いされた一件もあった。
産経新聞・FNNは、一昨年から昨年にかけて世論調査で計14回もの不正を繰り返し、世論調査そのもののから、世論調査を用いた学問領域までの信用を失墜させたことの重大さを考えてみよ。
— 三春充希(はる)⭐Mitsuki MIHARU (@miraisyakai) 2021年1月25日
産経新聞・FNNの出してきたデータはすべて世論調査の平均計算から排除する。
— 三春充希(はる)⭐Mitsuki MIHARU (@miraisyakai) 2021年1月25日
何もかもが壊れつつあるような気がする今日この頃だ。