kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

新型コロナの感染が急増した台湾、一時は日本の第4波並みの深刻な状況だった。現在も「抑え込みにほぼ成功した」段階とはいえない

 岩田健太郎医師が「いったん感染が急拡大した台湾は新型コロナの抑え込みにほぼ成功した」とツイートした。

 

 

 これに対し、天文学者の牧野淳一郎神戸大教授が反論のツイートを発した。

 

 

 岩田医師は普通の線形プロットのグラフを、牧野教授は片対数プロットのグラフをそれぞれツイートに載せている。説得力があるのはもちろん牧野教授の方であり、岩田医師のツイートはあまりにも杜撰だというほかない。

 台湾の平時でのPCR検査数は決して多いとはいえなかった、というよりはっきり言って少なかった。このことに気づいたのは、5月の連休中に、黒木登志夫氏の著書『新型コロナの科学』(中公新書2020)についてのブログ記事を書くために各国のPCR検査数を調べていた時だ。対照的だったのはニュージーランドで、同国は昨年8月20日のピンポイントのデータではあるが、一日に人口1000人あたり4.41人ものPCR検査を行っていた。同じ日、日本は0.18人、韓国も0.17人しか検査を行っていなかった。なおこの日に韓国の人口当たりの検査数が日本よりも少なかったのはたまたまであり、トータルでは倍くらい韓国の方が多かったことをネットで調べて確認した。ところが台湾を調べてみると、人口当たりのPCR検査数は日本よりも少なかった。台湾政府は、必要が生じれば検査をすれば良いという方針で、検査のキャパだけは十分に確保しているとのコメントを読んだ。台湾は、PCR検査数は少なかったものの、厳しく陽性者の入国検査を行ってきたおかげで、今年4月までの「コロナ優等生」の評価を勝ち得てきた。

 日本で5月の連休が終わった直後、その台湾で感染爆発が起き、人口比にして日本の第4波並みの感染状況になった。このことが牧野教授がツイートに載せたグラフに示されている。原因は、台湾が入国時の規制を緩めたことにあった。入国者の14日間の留め置き期間を短縮したために、アルファ株(少し前までの呼称では「イギリス型変異株」)の感染を見逃してしまったことが、あっという間の感染拡大につながった。台湾は、人の流れを抑えてきたのを緩和しただけで、世界の優等生から東アジアでは最劣等国である日本と同じレベルにまで一気に転落してしまったのだ。

 台湾は、必要になった時にPCR検査をすれば良いという方針だったから、ひとたび感染爆発が起きてからは検査数を急増させて、なんとかピークアウトにこぎ着けた。

 しかし、台湾で昨年から今年6月27日までに確認された陽性者14,634人に対して死亡者数は632人であり、致死率は4.31%に達している*1。これは、弊ブログがしょっちゅう槍玉に挙げている日本の大阪府における致死率2.5〜2.6%と比較しても相当悪い数字だ。

 つまり、台湾のPCR検査数は足りていない。弁護の余地はない。

 この記事で言いたいことは、新型コロナウイルスの感染を抑えるためには、十分なPCR検査を行うことと、人の流れを抑えることと両方が必要不可欠だということだ。

 PCR検査増強論者の中には、PCR検査数だけ増やして陽性者を隔離しておけば、陰性の人間だけで人の流れを抑えなくても(たとえば居酒屋を深夜や明け方まで営業してても)良いと言わんばかりの人間が少なくないが、それは間違っている。そもそもこの発想は、かつてのハンセン病患者の隔離政策及びそれに伴う同病患者への差別を強く連想させるものであって、この手の意見を目にするだけで虫酸が走る。個人的な偏見によれば、いわゆる「小沢系」にこの手の発想をする人が多いように思われる。

 もっとも日本政府(菅義偉政権)は両方ともやるつもりがないから、「PCR検査数を増やしさえすれば良い」と言っている人たちよりもさらに悪い。論外だ。だからこそ台湾との差がまた開き始めた。