kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

「村神様」、今度は4本塁打を含む14打席連続出塁でヤクルトがDeNAを3タテ。しかし連続打席出塁のプロ野球タイ記録は菅野に阻まれた

 この時期のヤクルトの横浜スタジアムでの試合といえば、1987年8月末に3試合で35点取って3タテしたことと、1997年9月初めの首位攻防2連戦に石井一久ノーヒットノーランなどで連勝したことが思い出される。前者は関根監督の1年目の弱い頃で、4位対5位の試合だったが、8月中旬に8連勝していた大洋ホエールズが失速した3連戦だった。当時の大洋ホエールズは開幕戦に勝って以来11連敗していた広島に9連勝するなど絶好調だったが、連勝が確か後楽園での読売戦だったかで止まったあと、月末の横浜スタジアムでのヤクルト戦で投手陣が崩壊した。後者は長いセ・リーグの歴史で初めてヤクルトと横浜が優勝を争ったシーズンで*1、ヤクルトに14ゲーム離されていた横浜が、6月末の横浜スタジアムで天敵・阪神(それまで1勝10敗だったかでカモにされていた)を相手に1回表の4失点をその裏の9得点で大逆転した試合*2をきっかけに大反撃を開始し、8月中旬に神宮で3連勝して2.5ゲーム差までヤクルトを追い詰めた。しかし横浜は8月末の阪神戦(甲子園)に連敗し、3戦目には勝ったものの勢いに翳りが見えていた。

 このように、ヤクルトにとってはゲンの良いタイミングでの3連戦だったので、「横浜優勝」を叫ぶベイスターズファンの期待とは裏腹に、ひそかに村神様の活躍で勝てるんじゃないかと皮算用を弾いてはいたが、まさか彼の14打席連続出塁でDeNAを3タテするとまでは予想できなかった。とはいえ2戦目に9打席連続まで行ったので、これは3戦目にも四球などで全打席出塁するのではないかとはちらっと思った。しかし同点で迎えた終盤での決勝ホームランにまでは私の想像も及ばなかった。

 思うに、村上宗隆はギアチェンジの名手なのではないか。リードされた試合の中盤や終盤に複数の走者がいる場面とか、絶対に負けられない状況に追い込まれた試合になると決まって打つ。7月31日の阪神戦(甲子園)で、阪神に3タテされる瀬戸際で3連発を打った試合が代表例だが、今回の3連戦では初戦の6回表に大貫から打った3ランがそうだったし、第3戦で4対4の同点に追いつかれた直後の7回表に打った決勝の49号からは、昔テレビで見た阪神・バースがチームのリーグ優勝を決定づけた広島市民球場でのホームランを思い出した。それは、やはり6回裏に4対4の同点に追いつかれた直後に、広島先発の北別府学をリリーフした大野豊から打った一発で、それ以降、それまでの両チームの活発な打撃戦が嘘のように両チームの打線が沈黙し、阪神が5対4で逃げ切ってマジックを「3」とした試合だった。阪神が打てなくなったのは、代わり端に浴びたバースの一発にもめげずに9回までの3イニングを投げ切った大野の投球が良かったからだが、広島打線はバースの一発で意気消沈したかに見えた*3。翌週の神宮球場での引き分けで、阪神は21年ぶりのリーグ優勝を決めた。あの年のバースも阪神ファンに「神様・仏様・バース様」と呼ばれていた。

 しかし、そのバースでさえ首位攻防戦で3タテの危機を救う3連発や、天王山の3連戦での14打席連続出塁などという「超絶離れ業」の域には達していなかった。村神様はバース様をも超えたと思った。

 あと比較する対象としては、ともに日本シリーズで4連投して読売に4連勝した西鉄稲尾和久(1958年)と南海の杉浦忠(1959年)しか残っていないのではないか。王貞治は満遍なく打っていた打者で、特に大一番に強いわけではなかったし(むしろ弱かった)、長嶋茂雄は勝負強かったけれども、特にこれといった決定的な試合はなく、むしろ常日頃からの派手なパフォーマンスで人気を得ていた選手ではなかったか。

 あと1958年の稲尾は21歳、1959年の杉浦は24歳だった。今回の村上もそうだが、トップギアにチェンジしたあとにその集中力を何試合も続けて持続するという離れ業は、若い時にしかできないのではなかろうか。村上はおそらく、その技量は今後さらにレベルが上がるかもしれないが、この夏にファンを感嘆させた離れ業はおそらく今年限りになるのではないかと思われる。集中力だけなら年齢を重ねても発揮できるにしても、それを持続させるのには若い時ならではの体力が必要なのではないだろうか。

 また、西鉄も南海も稲尾・杉浦の4連投4連勝(稲尾は敗戦投手になった第3戦を合わせると5連投)の翌年はリーグ優勝を逃している。こう書いてベイスターズやタイガース*4のファンへのご機嫌取りもしておこうと思った次第(笑)。まあスワローズもいつまでも村上におんぶにだっこではダメだろう。

 村上は昨日(8/30)京セラドームで行われた読売戦の1回表に菅野智之に打ち取られて連続打席出塁のプロ野球タイ記録はならなかったが、これは仕方ない。菅野は村上に連続本塁打を打たれて5連発の記録を進呈した柳裕也(中日)よりも上手だったということだろうし、何より村上のさしものトップギアもBクラス球団相手の試合にまで続かなくても仕方ない。月初めにも5連発の疲れが出たのか読売3連戦の2戦目に欠場して読売に3タテされてしまったが、今回は延長戦で村上のヒットをきっかけに勝ててなによりだった。

*1:今年で両チームの優勝争いは25年ぶり2度目になる。

*2:蒸し暑い日のデーゲームだったこの試合を私はスタンドで観戦していた。

*3:この試合はNHKの生中継を見て強い印象を受けたが、なんとYouTubeにアップされていたので37年ぶりに見てしまった。6回裏に審判が阪神の救援投手・佐藤秀明のボークを見落としていなければ広島がこの試合4度目の逆転をしていたところだった。解説の鈴木啓示は「審判は見てなかったんでしょうね」と言っていた。今回も、村上が決勝ホームランを打つ少し前の2ボール目の判定に、あれはストライクだったのではないかとベイスターズファンがぼやいていた。

*4:このチームの場合、負け始めると自らの動揺を選手に伝染させる「予祝」矢野監督のお調子者野球が優勝できない一因になっているのではないかと思われる。今月8連敗した時の10試合連続失策には、好調時の強さとのあまりの落差の大きさに唖然とさせられた。