児童手当の所得制限撤廃を自民党幹事長の茂木敏充が言い出した件で、過去に故安倍晋三や丸川珠代らが行ったトンデモ発言が槍玉に挙がっているが、安倍は『WiLL』2010年7月号に掲載された座談会で「民主党の子ども手当はポル・ポトやスターリンの政策だ」との発言をしており、安倍のスカウトで参院議員になった丸川は国会で下品な野次を飛ばしていた。この件に関する議論の基礎とするために、資料をいくつか挙げておく。
まず茂木発言に関する読売新聞の記事。
以下引用する。
茂木氏「児童手当の所得制限撤廃を」発言、議場どよめく…実現へのアドバルーンか
2023/01/28 09:22
自民党の茂木幹事長が児童手当の所得制限撤廃を求めた25日の衆院代表質問が波紋を呼んでいる。自民党内の結論が出ていない中、突然、撤廃を訴えたためだ。「異次元の少子化対策」を掲げる岸田首相は撤廃を明言していないが、茂木氏が「観測気球を上げた」との見方が出ている。実現に向けた地ならしの意味合いもありそうだ。
「国会での議論も踏まえつつ、子ども・子育て政策の強化について、具体策の検討を進めていく」
岸田首相は27日の参院代表質問で、国民民主党の大塚耕平政調会長から、児童手当の所得制限を撤廃するかどうかを問われ、こう述べるにとどめた。
25日の代表質問では、茂木氏が児童手当の拡充について「全ての子どもの育ちを支える観点から所得制限を撤廃するべきだ」と訴えたことで、衆院本会議場にはどよめきが起こった。
政府は3月末までに少子化対策の「たたき台」をまとめる方針で、その柱が児童手当の拡充だ。茂木氏の発言に対し、自民党幹部が「党内議論が進んでいないのに、勝手に政策を転換させるのはおかしい」と不快感を示す一方、「撤廃、あるいは大幅に制限のラインを上げるといった対応を考えることは極めて重要だ」(世耕弘成参院幹事長)と賛同する意見も出ている。
所得制限の撤廃は、もともと公明党に加え、多くの野党が訴えてきた。このため、野党側は「我々の理念が伝わった」(国民民主党・玉木代表)と撤廃自体を評価しているが、首相が茂木氏の主張に正面から答弁しなかったことについて、「ちぐはぐな感じがした」(日本維新の会・馬場代表)などと、首相と幹事長の意思疎通を疑問視する声も上がった。
これに対し、茂木氏は周囲に「当然、政府側と話をしている。首相に明確な答弁を求めたわけではない」と漏らす。茂木氏が代表質問であえて野党側の主張に沿う「撤廃」に踏み込んだのは、維新や国民を取り込む狙いもありそうだ。
自民党は野党時代、民主党政権が所得制限のない「子ども手当」を創設したことを批判。ねじれ国会の影響もあり、民主党政権がわずか2年後に所得制限のある児童手当に戻した経緯がある。立憲民主党の泉代表は27日の記者会見で、「統一地方選を前に急に撤廃を言い始めた。批判をそらすために言っている可能性もある」と指摘した。
(読売新聞オンラインより)
所得制限を伴わない子ども手当は、弊ブログの評価では功罪相半ばする民主党政権の政策としては間違いなく「功」に当たるが、残念ながら当の民主党の政治家たちがその意義を十分理解していたとはいえない。菅直人、小沢一郎、野田佳彦の言動がWikipedia「子ども手当」に記録されている。以下引用する。
所得制限[編集]
「ミーンズテスト」も参照2009年11月22日、菅直人副総理は所得制限について「費用倒れになりかねない」として当初導入に否定的な見解を示した上で、納税者番号制度があれば技術的な事務作業は簡単であり、制度導入と合わせた将来課題とする考えを表明した[27][28]。
『産経新聞』がおこなった世論調査によれば、回答者の6割以上が「所得制限を行うべき」と回答した[29][30]。
12月16日、小沢一郎民主党幹事長は所得制限を設けるよう鳩山由紀夫首相に申し入れた[31][32]。
2011年8月4日、民主・自民・公明3党は翌2012年3月をもって子ども手当を廃止し、児童手当法に所得制限などを盛り込む形で改正することで合意した[11]。
菅直人と小沢一郎はともに所得制限撤廃に否定的で、Wikipediaに名前の出てこない野田佳彦(野ダメ)に至っては自公との三党合意で自ら子ども手当を葬り去ってしまった。
とはいえ本当にどうしようもなかったのは自民党で、ことに昨年銃殺された安倍晋三は最悪だった。
安倍晋三
— 125 (@siroiwannko1) 2023年1月31日
民主党の『子ども手当』は「ポルポトやスターリンが行おうとしたことです」
自民党 松川るい氏
「今から10年以上前なので、だいぶ社会の状況が違ったのかな、この10年でシングルマザーが増えたり、子育てを巡る環境が変わったから」
10年前から今の少子化は予想できたんだ💢ボケ#報道1930
10年前どころか私が高校生だった1970年代末には既に将来の少子高齢化は懸念されていた。田中康夫の『なんとなく、クリスタル』(1980)にも反映されているとのことだ。
田中康夫「なんとなくクリスタル」末尾で、現状は予見されていた。1980年。ボケ政治家だな。
— 優路 (@hsmt19) 2023年1月31日
ところがそのタイミングで福田赳夫、大平正芳、中曽根康弘ら歴代自民党政権は時流に乗って政策の新自由主義化を進めてしまった。つまり自民党政権の政策が少子高齢化を加速させた。
安倍の「ポル・ポトやスターリン」発言のエビデンスを押さえておく必要があると思ったのでネット検索をかけたら、立民の本庄知史(さとし)衆院議員のサイトが引っかかった。本庄議員自身が2022年4月27日に行った国会での質問に明記されていた。以下に関連箇所を示す。
○城井議員 (前略)立憲民主党では、子どもの権利条約にのっとり、子供の最善の利益を最優先するというチルドレンファーストの理念の下、子供、子育て政策を進めるべきだと考えています。
そこで、今回我々から提出した子ども総合基本法案に、子供の最善の利益が図られ、その人権が保障され、及び社会全体で子供の成長を支援する社会を実現するため、児童の権利に関する条約の理念にのっとり、施策を進めていくことと明記をいたしました。
○本庄委員 ありがとうございます。
この立憲民主党のチルドレンファーストという考え方に対して、政府・与党は、今回、こどもまんなか社会を掲げておられます。このこどもまんなか社会について、岸田総理が四月十九日の本会議で、常に子供の最善の利益を第一に考え、子供に関する取組、政策が我が国社会の真ん中に据えられる社会と説明した上で、立憲民主党の考えとも基本的に同じ方向だ、こういうふうに答弁をされております。これは野田大臣も同じ御認識、つまり、こどもまんなか社会とチルドレンファーストは同じ方向だ、こういう御認識でしょうか。
○野田国務大臣 岸田総理と同じでございます。
○本庄委員 ありがとうございます。私も同じ方向だというふうに思いますし、そうであると信じたいというふうに思っております。
このチルドレンファーストという私たちの理念、政策、これは、もう十年以上前から、民主党政権のときから掲げているもの、政権時に閣議決定した、例えば子ども・子育てビジョンということで、お手元の配付資料の中にも、少し古い資料にはなりますが、資料1ということで、子供が主役、チルドレンファーストということで、当初から掲げさせていただいております。
他方で、当時の自民党がどういう主張をされていたのかということです。お手元の資料の2を御覧いただきたいんですが、雑誌の「WiLL」二〇一〇年七月号の抜粋です。「「創生日本」大座談会」ということで、安倍元総理、そして今回の与党法案提出者の加藤先生らが対談をされています。この中で、傍線を引っ張ってありますが、安倍元総理が、子ども手当について、民主党が目指しているのは、子育てを家族から奪い去り、国家や社会が行う子育ての国家化、社会化です、これは実際にポル・ポトやスターリンが行おうとしていたことです、このようにお述べになっています。(後略)
Wikipedia「安倍晋三」中にある下記の記載は、Wikipedia自身が示したリンクを参照すると明らかに誤っているので要注意だ。
児童を対象とする手当について
民主党の子ども手当は「国家から直接子供たちに養育費がいくことによって、自分たちは両親に対し何の義務を感じる必要がないという議論もあった」と指摘した上で、「子育てを家族から奪い去り、国家や社会が行う子育ての国家化、社会化だ。これは実際にポルポトやスターリンが行おうとしたことだ」と、2016年2月29日の衆議院予算委員会で発言した[434]。2016年9月28日の参議院本会議において、「民主党政権は児童扶養手当をたったの1円も上げなかった」と答弁し[435]、第48回衆議院議員総選挙前に幼保無償化を発表し2019年10月より実施された[436]。
民主党、安倍首相の子ども手当めぐる発言にかみつき紛糾 「撤回を」「見解の相違だ」
2016/3/1 17:05
衆院予算委員会は1日午前、安倍晋三首相の子ども手当に対する発言をめぐり紛糾した。
問題となったのは、2月29日の衆院予算委での首相の発言。岡田克也代表に「子育てを家族から奪い去り、国家や社会が行う子育ての国家化、社会化だ。これは実際にポルポトやスターリンが行おうとしたことだ」とした過去の発言の真意を問われ、首相は「私は全てを社会化、あるいは国家が担うことは間違っていると申し上げた」と述べた。
さらに「民主党の中でこういう発言をした方もおられたのだと思うが、子ども手当は、両親や家族から養育費が払われるということではなくて、国家から直接子供たちに養育費がいくことによって、自分たちは両親に対し何の義務を感じる必要がないという議論もあった」と指摘していた。
これに対し、1日の衆院予算委で、民主党の緒方林太郎氏は「民主党内にそんな議論はなかった。テレビで根拠のない事実無根のことをいっている。撤回してほしい」と迫った。
首相は、民主党政権下の平成22年3月に同党議員が子ども手当について「今後は子供は社会で育てるものという考え方だ」と述べた発言を紹介し、「民主党の中でそういう発言をした人がいる、というのが前段の趣旨だ。『議論』というのは、発言を受けて、自民党内であった議論だ。見解の相違だ」と釈明。その上で「28年度予算案の審議が国民に求められているのではないか」と緒方氏をたしなめた。
緒方氏は「不自然だ」と重ねて反発した。
出典:https://www.sankei.com/article/20160301-2J2TJ7VGA5OV7BZ4HXXH3I5JTU/
つまり安倍が国会の答弁で「ポル・ポトやスターリン」云々の発言をしたのではなく、2010年の『WiLL』の座談会での安倍の発言を岡田克也が国会の質問で引用したものだった。
事実関係の確認は以上まで。自民党政権は今頃になってやっと13年前の民主党政権のレベルに追いついたが、2012年12月の第2次安倍内閣発足以降、貴重な時間をずいぶん無駄にしてしまったんだなあと慨嘆せずにはいられない。もっとも2011年9月の野田佳彦内閣発足に起点を求めるべきかもしれないが。あれはやはり「野ダメ政権」だった。
丸川某だの松川某だのといった安倍晋三の(下劣な)追随者たちに対する批判は今回は省略する。