森村誠一が死去、享年90歳。
読売、NHK、朝日、毎日の訃報記事のうち、有料記事の朝日を落として他の3社の記事を読み比べて読売を選んだ。
ベストセラー作家の森村誠一さん死去、90歳…「人間の証明」「悪魔の飽食」
2023/07/24 15:19
「人間の証明」「悪魔の飽食」などで知られるベストセラー作家、森村誠一(もりむら・せいいち)さんが24日死去した。90歳だった。
埼玉県生まれ。青山学院大卒業後、ホテルマンとして働くなかで、サラリーマン向けのエッセーを手掛けるようになる。1967年、「大都会」で作家デビュー。69年に「高層の死角」で江戸川乱歩賞、73年には「腐蝕の構造」で日本推理作家協会賞を受けた。ホテルや新幹線などを舞台に、現代社会の疎外感や虚無感を掘り下げ、社会派的なテーマとトリックを融合した作品でサラリーマン層の支持を集めた。
76年には西條八十の詩をモチーフに、証明三部作の第1作「人間の証明」を発表。翌年には角川書店が行った映画版とのメディアミックスで、森村誠一ブームを巻き起こした。翌年に刊行された「野性の証明」も高倉健主演で映画化されて人気を博した。
旧日本軍の中国での人体実験を告発した81年のノンフィクション「悪魔の飽食」は、社会的に大きな反響を呼んだ。多くの作品がテレビドラマ化され、大きな社会的反響を呼んだ。
2004年には日本ミステリー文学大賞を受賞、11年には時代小説「悪道」で吉川英治文学賞を受賞した。
晩年は新書「老いる意味」で、老人性うつ病に苦しんだことを明かし、話題を呼んだ。
(読売新聞オンラインより)
産経の訃報記事も見たが、『悪魔の飽食』での写真の誤用についていやらしくあげつらっているかと思いきや、そうではなかった。ただ、記事中の年数表記に断乎として元号を用いていることが目を引いた。今どき珍しい。
そういやNHKの訃報記事は西暦だった。ほんの少し前まではNHKも断乎として元号にこだわっていたのだが、近年はNHKの国内報道でも西暦を使うことが増えたように思う*1。昭和と平成と××とが入り乱れては何年前のことか混乱するばかりなので、不便さゆえに元号が廃れつつあるということだろうが、そんなご時世に断乎として元号を党名に掲げる某権威主義的反動政党に「消去法で投票」しかねないリベラル・左派の人々が増えているらしい。某2つの野党のふがいなさが主な原因だろうが、嘆かわしい限りだ。
私は森村誠一の作品はそんなにいくつも読んでいないが、彼の作品の中では山岳ミステリが好きだ。森村は山に登る人に悪人はいないという俗説の誤りを説き続けた。むろんそれが正解だろう。森村は三俣山荘の主人・伊藤正一(1923-2016)との交流が深く、伊藤氏が亡くなった時の追悼文が印象に残っている。
70年代後半に角川とタイアップした頃には角川商法とともに良くない印象があり、映画館で見た『人間の証明』も全く感心しなかったが、そんな角川書店の角川春樹が『悪魔の飽食』の一件では断乎として森村誠一を擁護した。人間とはわからないものだなあと思ったものだ。