kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

西浦博教授が「第3波の要因は政府対応の遅れと冬の気温低下」、「官邸の意向を踏まえた動きがあり、政策に不都合な事実は切り捨てられる」と指摘(東洋経済オンラインより)

 「東洋経済オンライン」に掲載された、下記西浦博のインタビュー記事は興味深い。

 

toyokeizai.net

 

 以下、上記リンクの記事から抜粋する。なお、インタビューは1月27日に行われ、東洋経済の解説部コラムニスト・野村明弘氏が聞き手を務めた。

 

――昨春の第1波に比べると、世界のコロナ対策は、より部分的なロックダウンを中心に据えるようになっています。疫学研究者の世界では、どんな新型コロナウイルスの知見が得られたのでしょうか。

 

1人の感染者が何人の2次感染者を生み出すのかという「実効再生産数」(「東洋経済が新型コロナ『実効再生産数』を公開」を参照)は感染の広がり度合いを示すものだが、何が新型コロナの実効再生産数に影響を与える要因になるかについて、4つのことが世界的に実証されてきた。それは気温、人口密度、人の移動率、そしてコンプライアンスだ。

 

気温が低いほど新型コロナの伝播は起きやすいことは実証研究でもはっきりしてきた。また、都市部ほどレストランなど密な屋内空間に入りやすいという意味で、人口密度は実効再生産数と正の相関関係を持っている。人の移動率については、グーグルが公表する「コミュニティ モビリティ レポート」の移動率データ(娯楽含む)を基に実効再生産数を予測すると、予測可能性が高まることがわかった。最後のコンプライアンスとは、接触につながる行動の自粛を指し、マスク着用やソーシャルディスタンスなどの度合いを含むものだ。

 

第3波の要因は政府対応の遅れと冬の気温低下

 

世界の国・地域によって流行の濃淡が出ている理由は、これら4つの要因で相当部分を説明できるようになった。最近の国内外の対策が飲食店などに的を絞ったものとなっている背景には、このような疫学上の知見がある。日本で第3波が拡大してしまったのは、政治による対策の遅れに加えて気温が相当程度に効いたためと考えている。

 

出典:https://toyokeizai.net/articles/-/410312?page=1

 

 「世界の国・地域によって流行の濃淡が出ている理由」について、もはや一時期山中伸弥が言っていた「ファクターX」の話など出てこなくなっている。国内での年末年始の急激な感染は、もしあのまま「GoToキャンペーン」を続けたり、緊急事態宣言を発したりしなかったらどうなっていただろうかと、心胆を寒からしめるものがあったように思う。「気温が相当程度効いた」という指摘は、私のようなど素人が陽性者数と死亡者数のデータを調べた結果とも良く整合しているので説得力が強い。2月6日の時点で第3波による致死率は1.50%で、致死率が0.9〜1.0%だった第2波より高いが、新規陽性者数が急減しているのに死亡者数が高止まりしてなかなか減らない現在、第3波の致死率は日に日に上昇を続けている。

 もちろん「政府対応の遅れ」の影響は絶大だった。

 

――内閣府は昨年11月の「経済財政報告」の中で、「統計分析の結果、人の外出率の低下は新規感染者数に有意に影響を及ぼさなかった」としました。これが「Go To トラベルは感染拡大に影響していない」と菅政権が主張した1つの根拠となっているようです。

 

私は、それはまずいと思ってきた。内閣府の分析では昨年2月15日~5月31日(第1期)と6月1日~9月1日(第2期)の頃に影響がなかったと言っている。それは今後十分に検証されていくことになるが、はたして統計学および理論疫学の十分なバックアップの下で検討された結果だろうか。

 

出典:https://toyokeizai.net/articles/-/410312?page=1

 

都合のいい分析結果が切り取られている

 

政府の科学的なエビデンスに対する姿勢の問題もある。本来、科学的な分析はたくさんのやり方で複数の人にやってもらい、それらをテーブルの上に並べ、十分に検討したうえで政策を決めていくというプロセスが理想だ。しかし、今は密室で1つか2つしか分析が行われていない状態だ。よりオープンなサイエンスの声が届く仕組みにはなっていない。

 

加えて、官邸の意向を踏まえた動きがあるため、現在進行中の政策に不都合な事実は切り捨てられる傾向がある。その一方で、都合がいいものであれば質が限定的でも積極的にそれが使われていく。私は、厚労省の会議において航空機を利用した人の移動率と2次感染者数の相関が限られているとする紙1枚だけの資料を内閣官房が出したとき、勇気を出して「ここだけを切り取るような話ではない。もっと広くみんなで議論すべき研究課題だ」とコメントした。現に同じデータを使って再検討した結果、移動率は実効再生産数との間で時系列相関があった。

 

研究者としての良心から申し上げるが、これは科学との距離感にとどまらず、日本という国の政治を考えるうえで相当にシリアスな問題だと認識している。今の政権のあり方だと変わらないのだろう。

 

出典:https://toyokeizai.net/articles/-/410312?page=2

 

 これが、2009年の「政権交代」前後に当時の民主党が声高に叫んでいた「政治主導」や、その民主党政権が失敗しつつある時に政権批判側(=自公や維新及びそれを後押ししたマスメディアや「識者」等)がやはり声高に叫んだ「決められる政治」の行き着いた姿だ。結局生み出されたのは、かつての小沢一郎や、それよりもさらに極端なあり方で安倍晋三菅義偉らに対してなされた「忖度」だった。しかし、当たり前だが新型コロナウイルスは忖度などしてくれない。為政者に迎合する政策のみ採用された結果、年末年始の急激な感染拡大を招き、昨年2月13日に国内最初の死者が出てから1年弱で6千人以上の死者を出してしまった。今回の安倍・菅両政権の失敗は、先の戦争で悲惨な敗戦を招いた日本の指導者たちの失敗に酷似している。

 

 「新型コロナに対応した資源配分を柔軟に行えていない医療界にも問題があるとの指摘」に関して、西浦氏は下記のコメントをしている。

 

構造問題を踏まえた対応策を出したが…

 

ただ、厚労省の関係者の代弁をさせてもらうとすれば、厚労省はそのような医療提供体制の構造問題を流行当初から強く認識しており、それを踏まえた対応策を昨年6月19日に出していた。例えば、私たちクラスター対策班の専門家グループと協力して都道府県などに出した「今後を見据えた新型コロナウイルス感染症の医療提供体制整備について」という通知だ。

 

ここでは、第1波のデータを分析して、各地域での流行シナリオやその際に必要となる現実的に可能な病床確保計画を示しつつ、新規感染者がこれくらいに増えた段階でアラートをしっかりと出して対策を打てば、この最大病床数内で持ちこたえられるとの説明を展開した。柔軟性がなく大幅に病床を増やせない日本の状況を事前に考えて、流行対策のためのアラートの設定とセットにしたわけだ。

 

このような計画が機能するためには、都道府県知事や政府は設定された感染レベルのフェーズになったときにしっかりと対策を打つことが必須だった。

 

ところが、実際には第3波でフェーズを超えても実効性のある対策が打たれず、厚労省の通知は政治によって簡単に反故にされた。政治が責任を持って対策をしていれば、病床がオーバーフローすることはなかった。これは大都市を有する地方自治体の首長だけの責任ではない。政府はボールの投げ合いで時間を費やしたが、こと専門性が高い厚生労働行政については守ってもらわないといけない極めて重要なポイントだった。

 

病床の不足について真に国を憂う気持ちを持ってともに徹夜を重ねた厚生労働官僚たちが、どんな思いで唇を噛んで悔しさを滲ませたのか、憤りを覚える第3波であったことは、ここに通知の存在とともに明らかにしておきたい。

 

出典:https://toyokeizai.net/articles/-/410312?page=3https://toyokeizai.net/articles/-/410312?page=4

 

 ここで西浦氏は、問題に必死に取り組んで対応策を出したのに、それを菅政権に「簡単に反故にされた」厚労官僚たちの無念さに言及している*1

 これも「政治主導」の大きな弊害だ。

 こんな歪んだ「政治主導」だの「決められる政治」だのあり方は、今後大きく変えていかなければならない。今回の新型コロナウイルス感染症は、その問題点と弊害をはっきり示した。

*1:余談だが、弊ブログでは少し前に、安倍晋三によって国会で虚偽答弁を強いられる官僚の無念に思いを致す云々という文章を書いた。それに対して紋切り型の官僚批判のコメントを寄越してきたコメンテーターがいたので、コメント欄で当該コメンテーター氏のコメントを批判した(反批判というべきか)ことがある。ある時、某ブログのコメント欄を覗いてみたら、この時の私の所業に対して「傍若無人のブログ主」だの「(kojitakenは)実社会での人間関係にイビツさを持つ人なのかもしれない」だのと書きたい放題のことが書かれているのを見て笑ってしまった。よく見ると、このコメント主は過去に同じエントリのコメント欄で、他のブログの運営者に対しても悪口を書きまくっていたのだった。ブログのコメント欄ばかり見てブログ主の粗探しに精を出す人なんだなあ、相当性格が暗いに違いないと思った。当該コメント主の指摘通り、弊ブログ内での私の人格は「傍若無人」そのものなので、ここに暴露しておく。こんなことを書いても何のことかわかる人はおそらく2人しかおられないだろうけれども。もっとも、私が本当に怒っているわけではないことはご理解いただきたい。私は本当に大笑いしたのだ。「右を見て左を見て自分の意見を決める」と言われるくらいなら「傍若無人なブログ主」と言われる方がよっぽど良い(笑)。個人ブログとはそういうものだ。

12月実施の抗体検査、東京で陽性率0.91%(日経メディカル)【追記あり=東京都の陽性率は1.35%(確定値)】

 少し前に昨年春に行われた抗体検査について触れたが、同12月にも5都府県で抗体検査が行われていた。その結果が厚労省から発表された。下記は日経メディカルの記事へのリンク。

 

medical.nikkeibp.co.jp

 

 以下引用する。

 

NEWS◎厚労省が5都府県1.5万人を対象とした抗体検査結果を公表

12月実施の抗体検査、東京で陽性率0.91%

2021/02/05

安藤 亮=日経メディカル

 

 厚生労働省は2021年2月5日、5都府県で計1万5043人を対象として、2020年12月に実施した新型コロナウイルスSARS-CoV-2)抗体検査の結果を発表した。抗体陽性率は東京都で0.91%、大阪府で0.58%、宮城県で0.14%など、地域によりばらつきがあった。また、6月に実施した第1回調査時の陽性率(それぞれ0.10%、0.17%、0.03%)からはいずれも上昇した。

 

 厚労省は12月14~25日にかけて、東京都、大阪府宮城県、愛知県、福岡県において、調査への参加同意を得た20歳以上の一般住民それぞれ約3000人を対象に、過去に新型コロナウイルスに感染した人の割合を調べる抗体検査(定量検査)を実施した。東京都、大阪府宮城県では、6月に同規模の第1回抗体保有検査を実施している(関連記事)。

 使用した測定機器は、米国Abbott社(化学発光免疫測定法[CLIA法])およびスイスRoche社(電気化学発光免疫測定法[ECLIA法])の装置。第1回調査と同様、陽性の判定をより正確に行うために、異なる免疫測定法を用いたこれら2種類の検査試薬・装置で陽性が確認された場合のみ、陽性(抗体保有)と判定した。

 計1万5043人に対する抗体検査で陽性と判定されたのは、東京都では3399人中31人(0.91%)、大阪府では2746人中16人(0.58%)、宮城県では2860人中4人(0.14%)、愛知県では2960人中16人(0.54%)、福岡県では3078人中6人(0.19%)であり、地域によりばらつきが見られた(図1)。

 6月に行われた第1回調査での抗体陽性率は、東京都で0.10%、大阪府で0.17%、宮城県で0.03%で、いずれも半年間で陽性率は上昇したものの、12月時点でも人口の大半が抗体を保有していないことが明らかになった。また、5都府県での人口当たり累積感染者数(12月7日時点)と比較すると、今回確認された抗体保有者数は報告されている感染者数の1.6~3.6倍に相当する。

 

(日経メディカルより)

 

出典:https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/report/t344/202102/569001.html

 

 引用文中の「図1」は下記厚労省発表資料の2頁に掲載された結果の表。

 

 抗体検査の結果には驚きはない。弊ブログではこのところずっと、日本国内のPCR検査による感染者の捕捉率は33〜50%程度だろうと書いてきた。それは、COVID-19の真の致死率を仮に0.5%として、それと国内の第2波の致死率1.0%と第3波の致死率1.5%とを対比して、ざっと公称の2〜3倍の感染者がいるんだろうなと大雑把に推測していたためだ。12月の抗体検査から得られた倍率が1.6〜3.6倍だというのだから、推測は大きくは外していなかったようだ。なお現在では、第3波は2%程度の致死率になる可能性があるから、捕捉率は25〜50%の間、つまり公称の2〜4倍の感染者がいるのではないかと考えている。

 今回の結果から導かれる「人口の大半が抗体を保有していない」というのも当然で、これについてはあの大阪府知事・吉村洋文でさえ「集団免疫獲得にはほど遠い」と認めていた。つまりいかに極悪な維新府政といえども、今後集団免疫獲得を狙った戦略をとることはほぼないと思われる。

 ただ、昨年12月上旬と現在とでは、累積陽性者数が全然違う。

 日本全国では、昨年12月7日の陽性者数は164,435人だったのに対し、昨日(2/5)累積陽性者数が40万人を突破して401,661人になった*1。この間に2.44倍に増えている。また東京都では昨年12月7日の43,992人から今年2月5日には102,777人に*2、つまり2.34倍に増えた。

 このことから、現在の東京都の抗体保有率が0.91%に2.34を掛けた2.1%程度であっても不思議はない。

 もちろん、昨年12月の抗体検査が無作為抽出といえるかどうかの問題点などもあるだろうが、大まかに言って東京には感染者または感染したことのある人が2%程度いるというのは、実感ともそんなにかけ離れていない数字だと思う。

 ここでは、12月7日から2月5日までの日本全国の累積陽性者の増分である237,726人に、1.6倍と3.6倍の真ん中である2.6を掛けた約61万7千人を直近2か月の感染者数と仮定する。この数字は、日本の人口の約0.5%に当たる。

 昨年12月7日時点でのCOVID-19による死亡者は2,398人だったの対し、今年2月5日には死亡者は6,282人に達した。この間の死亡者数は3,884人だ。以下、粗っぽい計算だが、12月と1月の感染を原因とする死亡者数を4千人とすると、それが人口の0.5%が感染した時の死亡者数になる。昨年春に西浦博が想定した集団免疫獲得時の感染者は60%だったから、人口の0.5%の感染で4千人が死ぬなら、人口の60%では48万人が死ぬ計算になる。2.6倍ではなく3.6倍として約85万6千人を2か月の感染者数と仮定した場合でも、これは人口の約0.67%だから、人口の60%では約35万人が死ぬ計算になる。

 つまり、昨年春に西浦博が警告した「何もしなければ42万人が死ぬ計算になる」という試算は、的外れでも何でもなかったということだ*3。このことがこの2か月ほどの感染状況からはっきりしたのではないだろうか。

 もちろん、昨年5月頃には、仮に基本再生産数が2.5だとしても、集団免疫獲得に必要な感染率は、理論が教える「1-1/R」(Rは基本再生産数)から導かれる60%ではなく20〜40%ではないかという議論が出ていたそうだ。これには西浦博自身が言及していた。1人あたりの再生産数の分布に偏りがある場合にそうなるらしい。また、基本再生産数2.5というのは欧州の感染状況から導かれた数字だったのに対し、武漢では1.7だったという話もあった。60%が20〜40%になるのなら、基本再生産数1.7の場合には「1/1-R」は41%だから、その3分の1から3分の2だと14〜27%程度になる。しかし、それらを考慮に入れても、何も対策をしなければ6桁の人が死ぬ恐れがあることには変わりはない。42万人が10万人強になるとか、その程度の違いでしかない。また、COVID-19の場合は抗体が持続しにくいという話もあるから、ワクチンも万能ではないかもしれない。

 新型コロナウイルス感染症とは、これほどまでにも恐ろしい感染症なのだ。間違っても「ただの風邪」なんかじゃない。なんとしても感染拡大を抑え込まなければならない。

 しかるに、菅義偉政権は人と人との接触を抑制するどころか助長する「GoToキャンペーン」なんかを推進した。2度目の緊急事態宣言もずっと出し渋り続けた。

 このことは大いに問題視されるべきではないか。菅義偉は責任を取って内閣総辞職すべきだ。またしても、このいつもと同じ結論で記事を締めくくることになった。

 

 

[追記](2021.5.7)

 

 その後発表された確定値で、東京都の陽性率は1.35%に改められた。以下2021年3月30日付日本経済新聞記事(共同通信配信)より。

 

www.nikkei.com

 

新型コロナの抗体保有、東京で1.35% 厚労省確定値

2021330 12:59

 

厚生労働省30日、新型コロナウイルスの感染歴を調べる抗体検査を昨年121426日に5都府県の計約15千人に実施した結果、東京都は1.35%、愛知県で0.71%大阪府0.69%から抗体が検出されたと発表した。2月に速報値を発表しており、その後追加の分析をして結果を確定した。

宮城県の抗体保有率は0.14%、福岡県は0.42%だった。国立感染症研究所で追加の分析を行ったことで、複数の地域で速報値よりも保有率が上がったが、厚労省は「欧米と比べても少なく、依然として多くの人が免疫を持っていないと分かった」と説明している。

今後は、感染の広がりだけでなく、ワクチン接種によって抗体を保有する人がどれだけ増えているかも調べていく。

調査は、新型コロナ感染の広がりを把握するため、同意が得られた5都府県の住民を対象に実施。検査会社2社の手法に加え、国立感染症研究所でも分析し、複数の手法で陽性となった人を「抗体がある」と判断した。〔共同〕

 

 この抗体検査は第3波真っ只中の昨年12月中旬から下旬にかけて行われた。その後、大阪を中心とする関西に大規模な感染を引き起こした第4波に見舞われたので、現在は東京都、大阪府ともに抗体保有率は2%を超えているのではないかと思われる。しかし依然として集団免疫獲得にはほど遠い数字であるため、ウイルス接種が待たれるところだ。

*1:NHKによる。https://www3.nhk.or.jp/news/special/coronavirus/data-all/

*2:https://stopcovid19.metro.tokyo.lg.jp/

*3:42万人は、前記の48万人と35万人の間の数だ。

国内の新型コロナウイルス感染症週間新規陽性者数17,708人、死亡者数685人(2021/1/30-2/5)〜 新規陽性者数は3週連続で減少するも、死亡者数は17週連続で増加

 毎週土曜日に公開している日本国内のCOVID-19の新規陽性者数と死亡者数の週報は、今週から昨年10月以降の週ごとの線形グラフと、昨年3月以降の7日間平均値の線形グラフ及び対数グラフの3つを表示することにする。月報では既にこのやり方に変えているが、それに合わせる。また、データはNHK(下記リンク)による。最新のデータに更新しているので、先週以前の記事とは数値が整合しないところがあるが、ご容赦願いたい。

 

www3.nhk.or.jp

 

 まず昨年10月以降、つまり第3波の週ごとのデータを下記グラフに示す。

 

f:id:kojitaken:20210206060155p:plain

国内のCOVID-19週間新規陽性者数及び死亡者数(2020/10/3-2021/2/5, NHK

 

 ご覧の通り、新規陽性者数は3週連続で減少したが、死亡者数は17週連続で増加した。1月30日(土)から2月5日(金)までの1週間の新規陽性者数は17,708人(前週比34.3%減)、死亡者数は685人(同11.2%増)だった。死亡者数を新規陽性者数で割った値は3.87%で、前週の2.29%より大幅に上がった。これは死亡者数のピークが新規陽性者数のピークより遅れるためだから仕方ない。この値は昨年5月16日(土)から同22日(金)までの1週間には35%(新規陽性者数242人、死亡者数85人)を記録したこともある。今回も、再来週かその次の週くらいまでは、この「見かけの致死率」がさらに上昇すると思われる。但し、死亡者数自体のピークアウトは、死亡者数/新規陽性者数の比のピークアウトよりは早いはずだ。第1波や第2波のデータから推測して、来週は今週よりも死亡者数が減っても不思議はない。というか、そろそろ減り始める頃のはずだ。しかし死亡者数のピークはなだらかで裾野が広くなる。昨年5月には死亡者数がゆっくりとしか減らないことに苛立った記憶がある。

 第3波全体では、昨年10月1日以降の累計を用いると、致死率は2月5日現在で1.48%だ。しかしこの値も、今後死亡者がまだかなり出るはずだから、最終的には2%前後になっても不思議はない。なお第1波の致死率は5.3〜5.4%、第2波の致死率は0.9〜1.0%だった。第1波からの通算の致死率は2月5日現在で1.56%である。

 やはり夏(第2波)より冬の方が感染しやすい上、感染した場合の致死率も高い。それでも第1波と比べて第3波の致死率がかなり低くなりそうなのは、PCR検査拡充による捕捉率の向上と、治療法の知見が増えたことによって助かる命が増えたためだろう。

 以下に昨年3月1日以降の7日間平均値をプロットした、線形と対数の2種類のグラフを示す。

 

f:id:kojitaken:20210206063417p:plain

国内のCOVID-19新規陽性者数及び死亡者数(2020/3/1以降7日間移動平均、線形=NHK

 

f:id:kojitaken:20210206071051p:plain

国内のCOVID-19新規陽性者数及び死亡者数(2020/3/1以降7日間移動平均、対数=NHK

 

 第3波の新規陽性者数と死亡者数の状況を実感するには上のグラフの方が良いが、GoTo停止や緊急事態宣言の効果を、緊急事態宣言による制限が厳しかった第1波や、それとは対照的に国は何もせず、自治体が飲食店の深夜営業自粛の要請等をしたにとどまっていた第2波と比較して評価するには、下の対数グラフの方が適している。

 今回の緊急事態宣言や、その少し前のGoToキャンペーン停止だけでは、何もかもの動きを止めたかのような第1波の時ほど新規陽性者数の減り方は大きくないが、国が何もやらなかった第2波の時よりは減り方が大きいことをグラフははっきり示している。そして、菅義偉が感染を拡大させるに任せる時期が長すぎたせいで感染者が増えたためか、グラフのギザギザが小さくなってきている。

 しかし繰り返すが、菅義偉が感染を拡大させるに任せてしまったために、今回のような制限が強くない緊急事態宣言を1か月で解除するのは到底無理だった。今後1か月の延長は止むを得ないし、緊急事態宣言終了後も、現在夜8時以降の飲食店営業休止を10時以降に変更して続けるなどして、ワクチンが普及するまではなんとか感染拡大を防止する手立てをするしかないのではないか。国が何もやらなかった第2波への対応は論外だが、第1波の時だって緊急事態宣言を終わらせるのを急ぎすぎた。しかし江川紹子などは、5月6日だったかに終わらせる当初の予定だった緊急事態宣言の延長にまで反対していた。この頃から「経済を回せ」という圧力が、安倍政権ばかりではなく在野の必ずしも政権べったりとは思われていなかった人たちからも強まっていったのだった。しかしそれは大きな誤りだったことを、その後現在の緊急事態宣言再発出に至る結果が示している。

 そして、グラフを見てつくづく思うのは、菅義偉がもっと早くGoToキャンペーンを中止したり緊急事態宣言を出すなりしていれば、グラフの赤線に示された死亡者たちは死ななくても済んだのではないかということだ。

 このグラフを見るだけでも、緊急事態宣言終了と同時に菅義偉は辞意を表明すべきだという持論の正しさに対する確信がますます強まる今日この頃だ。

河井案里、控訴せず

 あ、そうそう、河井案里は控訴しないんだってね。何も自ら議員辞職せずとも、控訴しないのなら有罪確定で失職する。だからその前に議員辞職したわけだ。

 前の記事には書かなかったが、河井が議員辞職の以降と聞いた時、ああ、これはたぶん控訴しないんだろうなと思った。案の定だった。

 もちろん控訴するなとの指示を受けたのに決まっている。本人は被害者意識で凝り固まっているに違いないが、外部から見れば自業自得だ。自民党の国会議員になろうと考えたことがそもそもの間違い。

 いわゆる「自己責任」というやつだ。

括弧付き「リベラル」または「自称中道」の問題点

 私はツイッターは見るだけでやらないからよく知らないのだが、「GoToキャンペーン」に賛同し、旅先で撮った画像をこれ見よがしにツイートに貼り付ける「リベラル」がいるとか、山尾志桜里稲田朋美の「対談」に好意的な反応を示す「リベラル」が少なくないとの話だ。「リベラル」というより「自称中道」なのではないかという気もするが。彼らは「左翼に対する逆張り」をやっているつもりだそうだが、なぜ「GoToキャンペーン」に反対したり、極右政治家たちを嫌ったりするだけで「左翼」になるのか、私にはさっぱり理解できない。

 そもそも「中道」というのは、右を見て左を見て自分の態度を決めるやり方に過ぎない。先の戦争中のように、大部分の人たちが戦争に賛成するか、少なくとも反対していなかった(もちろん反対できなかったという面もあるが)時の「中道」は、後世から見れば「極右」だったはずだし、1970年頃の人がタイムマシンで2021年にやってきて、現在「中道」を自称している人たちの主張を知ったら、「彼らは右翼だ」と断定するに違いない。

 人と人との接触、ことに飛沫を飛ばしまくる会食の場が感染拡大に大きく寄与したこと*1がほぼ明らかになった現在、GoToキャンペーンを推進したり賛成したりした人たちが批判されるのは当然だ。山尾志桜里の所業の数々も今後批判的に検証されることになるだろうし、山尾と稲田の意気投合に拍手喝采している人たちも強く批判されて然るべきだ。

 国政政党では、立民と共産の「共闘」に対抗してかどうか、社民が民民や某元号党などと弱者連合を組もうと画策しているとの見方もあるが、民民は今回の特措法で自民党が罰則案を持ち出すきっかけを作った政党だ。目立ちたがりの山尾の仕切りによって採決には反対したが、民民の主張は全く首尾一貫していない。下手すれば「自民党より右」ともいうべき民民*2に色目を使うようでは、私が今後の国政選挙で、比例票で社民党の党名を書くことはまずないだろう。少なくとも現段階では比例で社民党に投票するつもりはない。

*1:旅行も、それに伴う会食が感染拡大の主な原因だろうと思われる。その意味で、GoToイートはGoToトラベルよりさらに有害だといえるだろう。また今回の緊急事態宣言で夜の飲食店の運営を制限することに対象を絞ったことは正解だった。新規陽性者数の対数グラフを見ると、昨年春の最初の緊急事態宣言よりは減り方が緩やかなもののかなりの減り方をしていることは、仕事を終えたあとなどの会食による感染拡大の寄与が大きかったことを示している。但し、飲食店に対する十分な補償が必要であることはいうまでもない。それをやりたがらないのが新自由主義思想にとらわれた現在の菅政権なのだが。

*2:民民にもいろんな議員がいるが、少なくとも前記山尾志桜里のほか、玉木雄一郎前原誠司を合わせた3人には、1ミリも支持できるところがない。

森喜朗の失言から思い出した、20年前の小泉純一郎政権発足への流れ

 森喜朗が女性蔑視や新型コロナ軽視などの妄言を連発したとのニュースに接して思い出したのは、20年前の21世紀最初の年だった2001年にあった森喜朗から小泉純一郎への総理大臣交代の頃だ。

 首相在任中にやらかした「日本は神の国」発言などで私も森喜朗は大嫌いだったが、森がえひめ丸の事故の時にゴルフをしばらく続けた失態から政権が持たなくなり、森は辞意を表明した。えひめ丸の事故は確か今頃の季節に起きたはずだ。森の辞意を受けて行われた自民党総裁選は、当初は橋本龍太郎が普通に勝って総理大臣に返り咲くと思われたが、総裁選が始まると小泉純一郎が持ち上げられるようになり、いったんその流れが始まるとそれは誰にも止めることができず、大部分の人間が小泉になびいてしまった。その結果、21世紀初頭の日本に大きな災厄をもたらした長期政権が生まれてしまった。

 現在の日本にも、再び同様の流れが起きないとも限らない。2016年夏から17年夏にかけての小池百合子の異常な人気だとか、昨年春の吉村洋文の異常な持ち上げられ方などなど、小泉と同型の新自由主義者たちへのニーズはまだまだ強いと思われるからだ。

 ことに、昨年来の新型コロナウイルス感染症で人々は圧迫されているために、社会に歪みエネルギーのようなものがたまっていて、その解放を求めている。

 こういう時には常に知性と感性のアップデートが求められる。森喜朗に対して怒るのは当然だが、そのあとにさらなる怪物を生み出してしまった20年前の誤りを繰り返さないためにも。

辛坊治郎に騙されるな! 新型コロナウイルス感染症の新規陽性者は本当に急減している

 そんなに嫌いなら読まなきゃ良いじゃないかと言われそうだが、また読んでしまった。

 

mewrun7.exblog.jp

 

 上記ブログ記事の中に、非常に気になる文章があったので、以下批判する。

 

 また、あくまでも、こういう見方があるという話なのだけど。実はmew周辺では、「新規感染者の数が急に減り始めたのは、緊急事態宣言などの効果だけではなくて。ここ何週か、保健師の手が足りなくなったため、濃厚接触者などの追跡調査&検査を行っていない保健所があることから、その影響もあるかも知れない」という話が出ている。(~_~;)

 

 そうしたら、辛坊治郎氏(元キャスター?)も、ラジオでこんな発言をしてたらしい。^^;

 

『不可解な激減に対し「誰も言わないんだよね、本当のことは」と語った辛坊氏は、昨年に保健所から濃厚接触者の追跡数が多く本来の業務に支障をきたすとする声が殺到した経緯を説明。

 

 これを踏まえ「政府は去年から方針を転換して、全国の自治体の保健所へ濃厚接触者全員にPCR検査はせずに、高齢者や病院のクラスターなどを重点的に実施するよう指示。一方で症状がない若い一般人の濃厚接触者はほったらかされている」と現状を明かした。(東京スポーツ21年2月3日)』

 

 この件に関しては、改めて書きたいけど。安易に「感染者数が減少した」ととらえてはならないようにも思う。(・・)

 

出典:https://mewrun7.exblog.jp/29397192/

 

 その「こういう見方」は間違っている。下記3件のツイートを参照されたい。なお、1件目のツイートに貼り付けられた右側のグラフをクリックしてご覧いただきたい。それをやらないと、右側のグラフの右側が切れているので折れ線全体の形がわからない。

 

 

 

 

 接触者追跡を減らしているにもかかわらず、接触率不明の感染者数の割合が減少しているのだ。

 最初にリンクしたブログ主は、下記ツイートの主と親しいようだから、教えを請えば良いのではないか。

 

 

 それに、なぜ東京都や神奈川県が接触者縮小をしたかといえば、それはPCR検査数が足りないというよりは、感染経路を追える人が少ないという要因の方が大きい。PCR検査の拡充はもちろん必要だが、それよりももっと必要性が高いのは、感染経路を追える人材を増やすことだ。単にPCR検査拡充「だけしか言わない」のは、全体像を見ようとしない人たちがやることだ。そんな人たちが「西浦博はあまりPCR検査拡大のことを言わない『御用学者』だ」などと誹謗中傷してきた。きわめて有害な態度だったというほかない。

 結論から言えば、「GoToキャンペーン」の停止や緊急事態宣言の発出によって、新規感染者は間違いなく急減している。死亡者は陽性確認の2〜5週間後にピークを迎えるので、現在がもっとも多い時期に当たるが、それは「覆水盆に返らず」ということだ。

 さらに、辛坊治郎がなぜ「本当は感染者が減っていない」かのような印象を与えるデマを撒き散らしている*1かといえば、「経済を回す」ことのみを主張して自公政権に媚びを売っている辛坊にとって、菅義偉が本心ではやりたくもなかった緊急事態宣言(やGoToの停止)などの効果を認めることは都合が悪いからだ。

 

 

 しかし、最初にリンクしたブログ主に限らず、反自公政権側には「本当は感染者は減ってなんかいないぞ、菅政権に騙されるものか」などと考えたがる人間があまりにも多すぎる。そのような態度こそ、菅義偉に塩を送る以外の何物でもないとは夢にも思わずに。

 それは百害あって一利なしの態度だと、ここに強く警告する次第。

*1:辛坊が主張する、緊急事態宣言発出から新規陽性者減少までのタイムラグが短いことは、宣言が実際に発出される前から既に人々の行動様式が変容していることから十分説明がつく。昨年4月の最初の緊急事態宣言発出の時にも同様の現象が起き、大阪府知事・吉村洋文がそれを盾にとって「大阪には緊急事態宣言は必要なかった」とほざいたが、その吉村も今回は大阪府を緊急事態宣言の対象に加えてくれと要請する事態に追い込まれた。