kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

筋金入りの反原発ライター・鎌田慧さんと御用学者の権化・小佐古敏荘の落差に目が眩む

http://mainichi.jp/select/weathernews/news/20110428dde012040002000c.htmlより。

特集ワイド:巨大地震の衝撃・日本よ! ルポライター鎌田慧さん


 <この国はどこへ行こうとしているのか>


◇見よ繁栄下の「踏み台」−−ルポライター鎌田慧さん(72)


(前略)


 鎌田さんは米スリーマイル島原発事故(79年)が起こる前から既に40年近く、地震列島・日本での原発建設に警鐘を鳴らし続けてきた。

 <いまのわたしの最大の関心事は、大事故が発生する前に、日本が原発からの撤退を完了しているかどうか。つまり、すべての原発が休止するまでに、大事故に遭わないですむかどうかである>

 「原発列島を行く」(集英社新書)でこう記したのは、01年3月だった。<国が銀行を救済したように、将来、破綻経営の電力会社にも、「救済資金」として血税を垂れ流すつもりか>とも、書いた。10年後、危惧はそのまま現実となって目の前にある。

 「ほれ見たことかと、僕が思っている? とてもそんな気持ちにはなれませんよ」。ひと口コーヒーをすすった。「いったい何をやってきたのか。自家発電機で暮らすとか無人島に住むとか、僕自身、消極的な抵抗もしていない。すでにある存在として原発を認めていたのではなかったか」

 重い空気が、流れた。

 鎌田さんは、日本は「原発体制」下の国だという。戦時体制ならぬ原発体制。「政府、官僚、電気事業連合会経団連、学者にマスコミ−−。原発を正当化するため国家が『総力戦』を展開してきた」

 世論の形成合戦なのだという。「反対派が、地震が起こる、原発は危険だと叫ぶでしょう。推進派は、危険と言われれば言われるほど安全性を強調し、ついには『絶対』という言葉が付く。全く非科学的。『不敗神話』の押し付けだったんです」

 小さな事故が起こると、国民はショックを受ける。推進派は電力供給量の不足などを盾に節電を呼び掛け、原発は必要だと説き回る。ショックは時とともに消えうせ、世論は再び無関心に戻っていく。

 07年の新潟県中越沖地震柏崎刈羽原発の敷地で赤黒い炎が上がったテレビ映像は、日本中を揺るがせた。だが半年後には、世の関心事は「ミシュラン」ガイド東京版などに移っていた。

 「しょせん東京にとっては遠い地方での出来事だったんです」。福島や新潟の原発に支えてもらっているとの意識は薄い。放射能の恐怖と運転再開の是非のはざまで苦しむ地元の悩みに思い至らない。まして「どうせ高額なカネが落ちているんだろう」と高をくくる人間の性根が、鎌田さんには理解できない。

 青森県で生まれた。古里には、東北電力東通原発のほか、建設中の東通原発(東電)や大間原発(Jパワー=電源開発)、さらに「核のゴミ捨て場」とされる使用済み核燃料再処理施設(六ケ所村)がある。「立地点を見てください。へき地、過疎地、政治の光が当たらなかった地域ばかりです」

 計画が進めば、工事用の道が通り、港ができ、建設業者が潤う。雇用も生まれる。完成すれば、固定資産税が入るし、国からは多大な関連交付金が流れてくる。電力会社もハコモノ造りのためなどに寄付金を贈ってくれる。

 「原発ほどカネで人心を惑わす汚い事業はないですよ。危ない物は1基でも2基でも同じと、地元は次々に受け入れる。毒まんじゅうです」。飛行機も落ちるかもしれないが、まあ大丈夫だろうと自分の意思でスピードを買っている。しかし原発は、地元首長や議会が賛成すれば、反対運動はあっても建設される。

 「首長たちは原発に伴うカネを『メリット』と呼び、安全は『国が保証している』と思考停止。政府と電力会社のモルヒネのようなカネ漬け攻勢です」。最終的にそのカネは、電気料金に上乗せされていく。

 今、福島の現場ではどれほどの人々が被ばくの恐怖と闘いながら作業を続けているのだろう。鎌田さんは、自動車工場での非正規労働者の「非人間的な労働」をルポしたことがある。作業員を「日常的に被ばくさせる」原発の労働環境もずっと批判してきた。

 電力会社や原発メーカーの下請け社員募集は、ネット上に流れている。事故後は「日給3万円(3時間勤務)」の急募もあった。

 「僕は彼らに『行くな』と言えない。でも自分の家族が行くとなったら、体をはって止めるでしょう。健康状態に10年後、どんな影響が出てくるか。私たちの繁栄は誰かを『踏み台』にして成り立っている。その想像力の欠如こそ原発体制の罪なんです」

 鎌田さんは原発の段階的な廃止を訴える10万人規模の集会を9月19日に都内で開く予定だ。大企業の労組は当てにしない。個人の参加に期待する。「これまで原発の建設と安全宣伝につぎ込んできた何兆円ものカネを今度は、自然エネルギーに特化する」。そうでもしないと、自身の苦しみは清算されないと感じている。「原発反対と書き続けながら大事故を防げなかった。僕も切迫感が足りなかった」。福島の事故で故郷を離れざるを得ない人たちや、被ばくした人たちからの批判は反対派も免れないだろうと思っている。「対決の思想と行動が弱かった」と。

 時間はあまりない。東海地震は今世紀前半に発生すると予想されている。震源域には浜岡原発がある。「日本は2個目の原爆を落とされるまで負けを認めなかった。その愚を再び繰り返すつもりなのか」(後略)
【根本太一】


あの鎌田慧さんにこう言われると、鎌田さんの1億分の1ほども何もしていない私は、ただ恥じ入るばかりだ。私から見ると、鎌田さんは真に「反原発」を貫いてきた人であり、私はこの期に及んでまだ「脱原発」としか言えない人間に過ぎない。


一方。


http://mainichi.jp/select/seiji/news/20110430k0000m010073000c.html

福島第1原発内閣官房参与、抗議の辞任


 内閣官房参与の小佐古敏荘(こさこ・としそう)・東京大教授(61)=放射線安全学=は29日、菅直人首相あての辞表を首相官邸に出した。小佐古氏は国会内で記者会見し、東京電力福島第1原発事故の政府対応を「場当たり的」と批判。特に小中学校の屋外活動を制限する限界放射線量を年間20ミリシーベルトを基準に決めたことに「容認すれば私の学者生命は終わり。自分の子どもをそういう目に遭わせたくない」と異論を唱えた。同氏は東日本大震災発生後の3月16日に任命された。

 小佐古氏は、学校の放射線基準を年間1ミリシーベルトとするよう主張したのに採用されなかったことを明かし、「年間20ミリシーベルト近い被ばくをする人は原子力発電所放射線業務従事者でも極めて少ない。この数値を乳児、幼児、小学生に求めることは学問上の見地からのみならず、私のヒューマニズムからしても受け入れがたい」と主張した。

 小佐古氏はまた、政府の原子力防災指針で「緊急事態の発生直後から速やかに開始されるべきもの」とされた「緊急時迅速放射能影響予測システム(SPEEDI)」による影響予測がすぐに運用・公表されなかったことなどを指摘。「法律を軽視してその場限りの対応を行い、事態収束を遅らせている」と述べた。

 記者会見には民主党空本誠喜衆院議員が同席、「同僚議員に20ミリシーベルトは間違いと伝えて輪を広げ、正しい方向に持っていきたい」と語った。空本氏は小沢一郎元代表のグループに所属する一方、大震災発生後は小佐古氏と協力して原発対応の提言を首相官邸に行ってきた。菅首相は大震災発生後、原子力の専門家を中心に内閣官房参与を6人増やしている。【吉永康朗】


ここで東電の役員ばりに「涙の会見」をしてみせた小佐古敏荘とは何者かというと、原発推進の「御用学者」である。菅直人首相がこの男を内閣官房参与に任命した時、「なんで菅はこんな御用学者を登用したのか」と批判されていた。

その御用学者が、あたかも昔から原発の危険性を熟知していたと言わんばかりに、年間20ミリシーベルトの基準を「容認すれば私の学者生命は終わり」と言うのだが、容認しなければ、「御用学者」たる小佐古敏荘の「学者生命」は続くとでも言うのだろうか。

「ふざけるな」と言いたい。


毎日新聞記事には、

 記者会見には民主党空本誠喜衆院議員が同席、「同僚議員に20ミリシーベルトは間違いと伝えて輪を広げ、正しい方向に持っていきたい」と語った。空本氏は小沢一郎元代表のグループに所属する一方、大震災発生後は小佐古氏と協力して原発対応の提言を首相官邸に行ってきた。

という、生臭いフレーズが付加されている。さらに、政府が20ミリシーベルトの上限値の根拠としている国際放射線防護委員会(ICRP)の勧告についても触れているが、この勧告は3月下旬になされたもので、ひとたび原発事故の被害を受けた地域のコミュニティを維持するためという意味合いも込められている。とはいえ、大人に比べて放射線の影響を受けやすい子供は、より放射線から守る必要性が強いので、小中学校の屋外活動の限界放射線量まで年間20ミリシーベルトに緩和することには、私も反対だ。

しかし、これまで御用学者として活動してきた小佐古敏荘が、自分の責任を棚に上げて、昔から良心的学者でしたよと言わんばかりに記者会見で涙まで流すのはいかがなものか。それも、その時に「御用学者」としての自らの誤りを認めて謝罪するのではなく、ただ単に政府を批判するだけというのでは、何をかいわんやである。むしろ、内閣官房参与の辞任については、小佐古の責任逃れではないかとさえ私には思える。


さらにいうと、小佐古とつるんでいる空本誠喜(そらもと・せいき)という民主党議員もまた胡散臭い人物である。この男は、一昨年の「政権交代総選挙」で、中川秀直を破って初当選したが、早稲田大学理工学部から東大大学院に転じて原子力工学を専攻して博士号をとり、東芝に入社した経歴を持つ。初当選こそ一昨年だが、もともと自由党の公募に合格した人間であり、2003年と2005年の総選挙にも立候補したが落選した。要するに空本は、震災前、原発事故前にはバリバリの原発推進議員だった。東大工学部原子力工学科というのは、今回の東電事故で悪名がとどろきわたった「原子力村」の総本山である。空本が東大の大学院に進学した頃、小佐古は既に東大原子力研究総合センターの助教授を務めていた。こんな人たちが、政局をかき回すことだけが狙いの、民主党の大物議員のパシリ役を担う。


石原慎太郎与謝野馨のように、いつまで経っても原発推進にこだわり続ける連中もひどいが、かつての自らの責任を棚に上げて「転向」する人間もまたひどい。今後、日本政府が政策を転換し、鎌田慧さんが言う、「これまで原発の建設と安全宣伝につぎ込んできた何兆円ものカネを今度は、自然エネルギーに特化する」時代には、小佐古や空本、さらにこの2人の背後で糸を引いている人間は、政治経済や工業技術の表舞台から去ってもらわなければならない。