kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

「脱原発」の流れが読めなかったことが小沢一郎最大の敗因

不信任案を否決した与党が総理大臣を降ろそうとする図式は、麻生太郎の時にも見た。あの時、麻生に退陣を迫ったとあとで自白したのは与謝野馨だったが、その与謝野は菅内閣の閣僚だ。麻生太郎菅直人与謝野馨と3人を並べた場合、明らかにもっとも悪質な政治家は与謝野馨だと思うが、3人の中で一番叩かれていないのも与謝野馨だ。総理大臣を辞めさせることは難しいが、それだけの権力があるということは、逆にそれだけ叩かれるということなのだろう。ある意味、もっとも小ずるい立ち回りをしているのが与謝野馨という男だと思う。

で、小沢一郎菅直人の話だが*1、「きまぐれな日々」に小沢信者のcubeさんから下記のコメントをいただいている。同ブログのコメント欄でやり取りするのではなくこちらに書くのは、ブログのアクセス数はもはやこちらの方が圧倒的に多いからだ*2
http://caprice.blog63.fc2.com/blog-entry-1187.html#comment12131

小沢はダメ。小沢は汚沢、小沢は嫌い…

日本中のマスコミや、検察、ネトウヨがあいかわらず騒いでる訳をちっとも考えないんですね。

新聞の社説、「世論調査」という名の広報、どれも文字通り「平議員」で、せいぜい数十人の派閥をもつだけの小沢を攻撃している。

特に文春、新潮なんて週刊誌では最右翼じゃないですか。

そりゃ、角栄の愛弟子で、「金・竹・小」といわれた男だから、いろんなつながりもあるでしょうよ。

また、そう簡単に「反原発最右翼」にもなれんでしょう。今後も政権を狙うならば。そのあたりは、多数派工作になんの興味もない共産・社民とは政治への考え方が違う。

「数こそ力」。だから高校無償化も農家個別補償もできたわけです。

「小沢信者」のどこがそんなに大問題なんですか?創価学会幸福の科学の信者とどうちがうんですかね。

鼻アレルギーの患者が、花粉やハウスダストばかり憎んで、自分の体質自体を調べようとしないような、妙な感じですよ。

2011.06.04 06:35 URL | cube #- [ 編集 ]


「小沢信者が幸福の科学の信者とどう違うのか」には苦笑したが(全くどこも違わないと思うw)、赤字ボールドにした箇所。ここに小沢一郎の敗因があった。


今後も政権を狙うならば、そう簡単に『反原発最右翼』にもなれない。そうcubeさん(岡山出身の大阪在住だっけ? 違ってたらすみません)は考えているようだが、今回金子勝

菅首相は人気取りかもしれないが、自公や財界が一番手を突っ込まれたくないところに手を突っ込んだ。自公は事故の責任が自分たちにあることが明らかになってしまうと焦った。それを小沢氏があおったのではないか。

と言わせてしまった*3のは、小沢一郎の限界以外の何物でもない。


金子勝は、震災前まではむしろ菅直人を強く批判し、小沢一郎の「国民の生活が第一マニフェストに理解を示してきた人だ。その金子勝が、菅直人のエネルギー政策転換を評価する。その菅直人は、震災前には鳩山内閣原発推進路線をさらに過激に進めた人物だった。その菅が、手の平を返すように「自公や財界が一番手を突っ込まれたくないところに手を突っ込んだ」のは、現実に政治に責任を持たなければならない人間として、「もはや原発推進路線は続けられない」と判断したからだろう。それは、電力業界とのしがらみがなかったからだとか、理系の人間らしい判断だなどなど、リアルにおける私の周囲の人間は言っている。ちなみに、私の周囲には民主党支持の「保守リベラル」にして理系、という人間が多い。その中の一人は小沢一郎支持者だったが、現在の政局では「いったい菅さんのどこが悪いというのかねえ」と言い、小沢の名前はもはや出さなくなった。一方、以前から菅直人を支持して小沢一郎については「古い体質の政治家だから要らない」と言っていた人は、今回の政変にはたいした関心を示さず、反原発論に熱中している。以前のような小沢批判はもはやせず、小沢を「終わった人間」とみなして小沢に対する関心を失ったように見える。

小沢一郎がこれまで一定程度保っていた「草の根」の支持を失い、共同通信世論調査で89%もの人が「小沢一派の行動を支持しない」として、一人松木謙公にのみ同情しているのは当然だ。今後は原発の推進どころか維持も今度は難しく、慣性(惰性)に従って何もしなくても、勝手に「脱原発」は進んでいく。だって、運転期間が40年を迎える原子炉が出てくるたびに、今回の東電原発事故が蒸し返されて、原子炉の運転継続が議論されるんだよ。その時にはどういう政権なのかはわからないけど、原発運転をごり押しすると、間違いなく政権の支持率は下がるんだよ。それ以前に、自治体が運転継続を認めないよ。知事には次の知事選がかかってくるからね。

だから、菅直人枝野幸男は「自公や財界が一番手を突っ込まれたくないところに手を突っ込んだ」し、「自公は事故の責任が自分たちにあることが明らかになってしまうと焦った」のだ。不信任案劇の直前に、安倍晋三が「海水注入」問題でしゃしゃり出てきたが、安倍など「事故の責任が自分たちにあることが明らかになって」困る、最たる人間だ。

私は、「2006年に小沢一郎は、それまで原発推進に慎重だった民主党の政策を『脱原発』に転換させた」という、「きまぐれな日々」コメント常連のフリスキーさんの指摘をブログで広めた人間だからよく覚えているが、あの時天木直人は、それが事実であったとしても、小沢一郎菅直人よりも先に「反原発」の主張を明確にすれば良いと言った。しかし小沢一郎はそうはせず、曖昧な言葉を発して部下や信者に「忖度」させるという、いつもの手法を使った。そこに状況判断の甘さがあった。


私は以下のように思う。小沢一郎にはエネルギー問題にほとんど関心を持っていなかった。だから、惰性で原発を推進できたこれまでから、大きな力を加えなければ原発の運転を維持できない状態に、一日にして変わってしまった現実を十分理解できなかったのだ。

だから小沢一郎は時流に乗り損ね、金子勝に「事故の責任が自分たちにあることが明らかになってしまうと焦る自公を、小沢一郎が煽った」と言わせてしまった。これは、小沢一郎最大の失着であり、これで小沢一郎は投了を余儀なくされることになったと私は解釈している。現在の自民党民主党に、惰性で原発政策を推進ないし維持できると能天気に考えている人間がどれくらいいるかはわからないが、今後彼らも姿勢を修正していくだろう。そうなると、「原発推進責任者である自民党の長老たちの焦りを煽った」という評価が定着してしまった小沢一郎は、ますます勢いを失う。これはもう政治家にとって致命的だ。それでなくとも、小沢一郎は先日、60代最後の年に突入した。もう政治家としての先は長くない。今回犯してしまった誤りは、もはや取り返しがつかない。

最後に菅直人だが、遅かれ早かれ退任の時期を設定せざるを得ない状況に追い込まれるだろう。権力に執着するのは権力者の習い性だが、菅直人ももはや名を惜しむべき段階にきていると思う。今のところ、麻生太郎自民党最後の総理大臣になっているが、それから2年近い年月が経った今、世間はさほど麻生太郎に悪印象を持っていないように私には見える。今でも悪印象ばかりが強い安倍晋三とは対照的だ。とはいえ麻生太郎も政権末期には政権に相当強く執着した。

菅直人も、与謝野馨を入閣させて狂ったように消費税増税路線を走るなど、「罪」の部分も大きかったが、辞任後は「東日本大震災の時の総理大臣」として記憶されるとともに、もし発送電の分離がなり、電力の地域独占体制が崩され、再生可能エネルギーが今後伸びて行けば、そのきっかけを作ったことが評価されることになるかもしれない。今は、そういう流れに持って行くためのエネルギーの方が、無理矢理に原発を維持するために要するエネルギーより小さいはずだ。菅直人は、もう後任にいかなる路線をとらせるかに留意して、名を残すことを考えた方が良い。

*1:鳩山由紀夫は論外なので、このエントリでは無視する。

*2:5月度は、ついにこちらのアクセス数が「きまぐれな日々」の倍以上になったので、もうこちらを「裏ブログ」と称するわけにはいかなくなった。

*3:2011年6月3日付東京新聞