kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

まず富裕層から身を切れ、というより「金持ち増税」を行なえ

マスコミがうるさかった国家公務員の給与削減で民自公が合意したらしいが、公務員、民間を問わず日本の賃金が下がり続けていることは周知の事実である。

日本の年収100億円の富裕層は年収100万円の貧困層より税・社会保険料負担が低い | すくらむ に、1999年から2010年までの間に民間の賃金が10%も下がったグラフが他国と比較する形で出ていて、もちろん他国では賃金は増えている。そして国家公務員の給与はというと、1999年から2009年までの間にやはり12.82%も下がっている。そして日本人の総所得に上位1%の富裕層が占める割合は年々上がり続けているほか、企業の内部留保が増え続けている。

このブログ記事には、所得層別の社会保険料及び税金の負担率のグラフが出ている。このうち税の部分は、当ブログで過去最多の「はてなブックマーク*1数(この記事を書いている時点でちょうど500件)を記録した 日本の所得税制が超高所得者に有利な逆進課税になっている動かぬ証拠 - kojitakenの日記 (2010年6月19日)でもグラフを借用した、平成19年(2007年)分の国税庁「申告所得税の実態」のデータをもとにしていると思われるが(最近、朝日新聞にもそれより少しあとの時期についての同様のグラフが掲載された)、それに社会保険料が加算されているところがミソで、保険料は実質的に「人頭税」であるため、当然ながら低所得層ほど負担率が高くなっている。だから、記事のタイトルにあるように、「日本の年収100億円の富裕層は年収100万円の貧困層より税・社会保険料負担が低い」ことになってしまう。

高所得者層は分離課税の恩恵を受けている上、さらに証券優遇税制などによって分離課税の税率までもが下げられるという、至れり尽くせりの「減税」のおかげで、ここまでも税負担が軽くなっている。日本に限らず欧米諸国でも同様に分離課税の影響などによって超高所得者の税率は低くなるようだが、欧米では富裕層が自分たちへの課税を強化せよと主張している。以下、上記リンク先ブログより引用する。

 ビル・ゲイツと並んで世界トップの所得を争うアメリカの大富豪の投資家ウォーレン・バフェット氏は、ニューヨークタイムズ紙に「大金持ちを甘やかすな」と題し寄稿。「私や私の友人たちは、億万長者を優遇する議会に長期間甘やかされてきた」、「私の事務所の20人の秘書は、33〜43%、平均で36%の連邦税を納めている。私が一番低いんだ」「課税所得に対する税率は17.4%にしかならない」として、富裕層への増税を主張しました。

 ドイツでは資産家50人が連名で、メルケル首相に対して、「財政赤字の打開策は、貧困層に痛手となる歳出削減でなく、富裕層への増税だ」と提言、フランスでは資産家16人が富裕層を対象にした特別貢献税の創設を提唱、イタリアでは自動車会社フェラーリの社長のモンテゼーテロ氏が富裕層への増税を主張しました。

 ところが、日本では所得100億円を超える富裕層の所得税負担率はわずか14.2%です(2007年の国税庁データ)。「大金持ちは甘やかされてきた」と言うバフェット氏の所得税負担率17.4%よりも低いのです。

 上のグラフ(引用者註:リンク先をご参照ください)は、私が労働総研の労働者状態分析部会でお世話になっている財政問題研究者の垣内亮さんが作成した「申告所得に対する税・社会保険料負担率」で、2007年の国税庁「申告所得税の実態」から作成したものです。

 上のグラフを見ると、所得100億円を超える富裕層の税・社会保険料負担率18.9%というのは、所得100万円の貧困層の20.2%よりも低くなっています。

 また、垣内さんは2010年度分の有価証券報告書から、トヨタ自動車豊田章男社長(年収3億4,083万円)とトヨタの正規労働者(平均給与727万円)の税・社会保険料負担率を計算しているのですが、その結果は、豊田社長が16.0%で、労働者は30.7%でした。豊田社長の負担率は労働者の半分程度なのです。

 バフェット氏の言葉をかりるなら、「日本の富裕層は世界で最も甘やかされている」ということです。日本においても「財政赤字の打開策は、貧困層に痛手となる歳出削減でなく、富裕層への増税」なのです。


まず富裕層から増税せよ、というのは前々から私も主張していることだ。お金が回らなければ経済は良くならないので、金持ちにはいわば大金を使う義務があるのだが、いかに贅を尽くそうにもお金を使い切れないことが多い。金持ちが金を貯め込むのは、経済を悪くする罪悪だが、そうはいっても得た金を使い切れない金持ちが大半であるに違いないから、金持ちから増税し、そのお金を使って(=お金を市中に回し)、国の経済を良くするのである。

欧米の金持ちは自分たちが増税されない限り経済が悪くなるばかりで、市場経済が悪くなって一番困るのは彼ら自身であることは百も承知だから、自ら富裕層増税を求める。ところが日本の金持ちは、欧米ほど気ままに、たとえば豪邸で大勢の使用人を使う生活などができない、これは日本が「社会主義的」で「悪平等」の社会だったからだ、などと以前から不満を持っていたところに、1970年代からもう40年ほども新自由主義の思想を吹き込まれたものだから、「頑張ったものが報われる社会」というスローガンが「正義」として通用するおかしな国になってしまっている。野田佳彦首相(=「野ダメ」)を筆頭とする保守政治家たちもみな新自由主義思想に洗脳されている。だからどんどん格差が拡大し、悪循環が止まらない。

この国の倒錯した「常識」によると、富裕層増税を唱えるのは「金持ちに対する貧乏人のひがみ」ということになる。他ならぬ貧乏人がそれを声高に叫ぶのである。かくして、いつまで経っても富裕層増税はなされず、それどころか「減税日本」(=「減税真理教」または「強者への逆再分配日本」)などという新自由主義地方政党が支持を集めたり、それを政権与党に属する黒幕政治家が支援したりする。橋下徹の「公務員叩き」への人々の拍手喝采も、名古屋の「減税日本」支持と同じ心理規制によるものだ。公務員を仮想敵とする彼らの作戦にまんまとはまってしまっている。小沢一郎に至っては東日本大震災及び東電原発事故で被災した福島県民に対して「霞ヶ関を包囲せよ」と煽る始末だが、小沢は「金持ちに増税せよ」とは口が裂けても言わない。そんな人間を一部の「左派」が支持する。橋下に至っては右左を問わず大勢の人が支持する。

一体日本人はいつになったら目が覚めるのだろうかとずっと思っているのだが、いっこうにその気配はない。もう行き着くところまで行くしかないのかと、最近では半ば諦めている。