「外務省機密漏洩事件」は別名「西山事件」、西山太吉氏に言わせれば「日米密約事件」とのことだが、あの事件が毎日新聞社を一度倒産に追い込んだ(1977年)とはよく言われることだし、実際その通りだと思う。
しかし、前々から私が疑問に思っていたのは、毎日新聞の部数がもっとも大きく落ち込んだのは1974年であり、「西山事件」の起きた1972年ではなかったことだ。そのことから、毎日新聞倒産の真の理由は購読料値上げと石油ショックだと言われることもある。
私が見落としていたのは、「西山事件」で実は毎日新聞は二度大きなダメージを受けたことだった。一度目は西山氏と蓮見喜久子元外務省事務官の起訴状に「ひそかに情を通じ」と書かれた1972年。しかし、実はもっと大きかったのは1974年1月31日の一審判決の時だった。西山氏無罪、蓮見氏有罪という判決に世論は反発し、名文家として知られた朝日新聞記者・深代惇郎(1929-1975)の『天声人語』もそうしたトーンのコラムを書いた(1974年2月1日付朝日新聞)。蓮見元事務官は『週刊新潮』に掲載された「手記」をはじめとするいくつかの週刊誌に登場し、それどころかテレビのワイドショーにも出演した。
この蓮見氏の「テレビ出演」こそ大きかった。先月来、毎週日曜日の21時台になると当ダイアリーのアクセス数が目立って増えることからも明らかなように、テレビの影響力は絶大で、それは70年代の昔も2010年代の現在も変わらない。テレビに蓮見元事務官が出演したことが、毎日新聞に最大のダメージを与えたのではないかとの仮説を、いま私は立てている。
[追記](2012.3.4追記)
当記事とあわせて、下記5件の記事もご参照いただければ幸いです。
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