kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

読売、清武英利との「私闘」を口実に、小出版社の新刊出版差し止めを要求

読売新聞とプロ野球読売球団の元社長・清武英利、それに朝日新聞が絡んだ騒動が続いている。


http://mainichi.jp/select/news/20120527k0000m040064000c.html

巨人資料流出:「清武氏の可能性高い」…球団調査委


 内部資料に基づくとされるプロ野球・巨人の入団契約に関する朝日新聞の報道を巡り、調査委員会(座長・高野利雄弁護士)を設置していた巨人の桃井恒和球団社長は26日、東京都内の球団事務所で記者会見し「内部資料を流出させたのは清武英利元球団代表の可能性が最も高いとの結論に至った」と発表した。【武藤佳正】

 ◇書類、地裁管理に

 調査委の報告書によると(1)少なくとも24件の資料が外部流出し、朝日新聞に持ち込まれた(2)内部資料を全て持ち出せた可能性があるのは桃井氏と清武氏の2人に限られる(3)清武氏は記者会見した翌日の昨年11月12日以降、社有携帯電話から朝日新聞記者に電話をかけている−−などと認定。そのうえで内部資料を流出させたのは清武氏である可能性が最も高いと結論づけた。

 また、巨人は、清武氏が解任された昨年11月18日に球団事務所から段ボール箱が東京都内の出版社・ワックに発送されたことを確認。清武氏は今年3月、ワックから著書を出版している。そのワックで、東京地裁が26日、球団所有の書類を執行官の管理に移す民事執行をしたと発表した。

 桃井社長は「新戦力獲得費用一覧や球団取締役会議事資料が確認され、(清武氏が)流出させたということが裏付けられた」と語った。巨人は5月16日、書類の移転を禁止する仮処分を同地裁に申し立て、18日に主張が認められた。

 朝日新聞社広報部は「取材源秘匿の原則に関わる内容で、報道倫理上からもお答えは控えます」とコメントした。

 ◇清武氏は再度否定

 清武氏と代理人弁護士の吉峯啓晴弁護士は26日夜、取材に応じ、民事執行で確認された書類が4点のみだったことを明らかにした。吉峯弁護士は「これだけで清武氏が流出させたとする巨人の発表内容には首をかしげる」と憤りを示した。これまで、清武氏らは資料流出については一貫して否定してきた。

 吉峯氏によると、この日、裁判所が提示した資料には126点の書類名が記載されていたが、確認されたのは4点のみ。「いずれも球団代表として所持していておかしくないもの」と説明している。

 清武氏も「私への出版妨害をはじめ、読売新聞側が論理をすり替えて、私を追い落とそうとしている。ジャーナリズム、表現の自由の観点からしても、読売新聞が自殺行為に走っている」と訴えた。

 ◇出版報道への挑戦

 ワックは「東京地裁の仮処分は大変不当であり出版報道の自由に対する挑戦だ」とのコメントを出した。

毎日新聞 2012年05月26日 22時08分(最終更新 05月27日 00時56分)


清武英利がどう否定しようと、朝日新聞がいかに沈黙しようと、朝日の「スクープ」のニュースソースが清武英利であったことは明らかだ。

あの朝日の「スクープ」を私は評価していない。当の朝日に載った元ヤクルト球団関係者のインタビューなどから判断して、「氷山の一角」に過ぎない。たとえばヤクルトでさえ高橋由伸を獲得するために、朝日が報じた「読売の裏金」を上回る金額の裏金を準備したにもかかわらず、最終的に「ヤクルトファン」だったはずの高橋は読売入りした。このことから推測して、朝日が報じた以上の莫大な裏金が高橋側に流れたことはほぼ間違いない。だが、あまりにすべてを明らかにすると、当事者である清武自身も非難を受けるから、ほんの一部しか明らかにしていない。読売は、朝日が報じた程度にはとどまらない、本当の「巨悪」なのだ。

そう考えると、「読売と清武のバトルなんてどうでも良い」と思えてしまう。

しかし、某所で教えていただいたのだが、この件に関連して、本当に許されない「読売の横暴」が行われようとしている。5月19日のスポーツニッポンの記事より。


http://www.sponichi.co.jp/society/news/2012/05/19/kiji/K20120519003280800.html

読売VS七つ森書館 清武氏関与の書籍裁判“全面対決”


 プロ野球巨人の球団代表を解任された清武英利氏が取材に関わった書籍をめぐり、読売新聞東京本社が「七つ森書館」との復刻出版契約の無効確認を求めた訴訟の第1回口頭弁論が18日午前、東京地裁であり、同書館は請求棄却を求めた。

 問題となった本は「会長はなぜ自殺したか」(98年)で、七つ森書館側は清武氏解任以前の昨年5月、著作権を持つ読売側と出版契約を締結したが、読売側は契約書の有効性に疑問があるとして契約の無効を主張。また七つ森書館側がこの日、同書の出版を開始する方針を示したことで、読売側は東京地裁に販売禁止の仮処分を申し立てた。

[スポーツニッポン 2012年5月19日 06:00]


同じ件についての読売の報道。


http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20120518-OYT1T00874.htm

七つ森書館相手取り、販売禁止の仮処分申請…本社


 読売新聞東京本社は18日、「著作権者の意向を無視して本を販売するのは許されない」として、七つ森書館(東京都文京区)を相手取り、著作権法に基づき、販売禁止を求める仮処分を東京地裁に申し立てた。

 申し立ての対象は、かつて新潮社から単行本、文庫本として出版され、その後絶版になった「会長はなぜ自殺したか――金融腐敗=呪縛の検証」(読売新聞社会部)の復刊本。著作権読売新聞東京本社にある。

 この本をめぐっては、読売新聞東京本社社会部次長と七つ森書館代表取締役の名前で昨年5月に交わされた「出版契約書」は無効だとして、読売側が七つ森側を相手に契約の無効確認を求める訴訟を起こし、18日に第1回口頭弁論が開かれたばかり。弁論後、七つ森側が週明けに出版・販売することを明らかにしたため、読売側が仮処分を申し立てた。

 読売側は、〈1〉題材となった事件が約15年も前で関係者のプライバシーや心情を考慮すべきであること〈2〉原稿をまとめた清武英利氏が読売グループの中核会社、読売巨人軍の取締役を昨年11月に解任され、読売新聞グループ本社と巨人軍と係争中にもかかわらず、「読売社会部清武班」の著者名で、解任問題を含め自らの一方的な視点であとがきを書こうとしていること――などから、そのような本の出版は著作権者として認められないとして、出版しないよう求めてきた。

 七つ森側は契約無効確認訴訟を「出版妨害」と主張しているが、読売新聞東京本社広報部では「訴訟の弁論が始まったばかりであるにもかかわらず、出版を強行しようとすることは、司法手続きをないがしろにする暴挙です。著作権者が望まない本の出版強行は『出版の自由』とは無関係です」としている。

(2012年5月18日18時23分 読売新聞)

この記事には15件の「はてなブックマーク」がついているが、私のアンテナからは漏れており、全然知らなかった。


この件に関して、七つ森書館が声明を出している。


株式会社 七つ森書館

 一部で報道されましたが、去る4月11日、私たち七つ森書館読売新聞東京本社によって提訴されましたので、その経緯をご報告し、私たちの考えを、日本語と英語で述べさせていただきます。

  • 小さなアリは巨象に挑む

 読売新聞社は発行部数1000万部を誇るメディア界の巨象です。巨象が、内部告発者とスタッフわずか5人の小出版社に襲いかかったのですが、アリのように小さな存在が巨象に挑んでいるのです。

 2011年11月11日、読売ジャイアンツ清武英利球団代表・GMが、球団会長で読売新聞社主筆渡邉恒雄氏に重大なコンプライアンス違反があると告発する記者会見をおこないました。そのため、清武氏は解任されたばかりか、1億円の損害賠償訴訟をおこされたのですが、元気に闘っています。

 私たち七つ森書館はスタッフ5人の小出版社で、『高木仁三郎著作集』『原子力市民年鑑』『自然エネルギー白書』など脱原発系の本を中心に広く社会の問題を考える本を出版してきました。3.11後の時代にあって注目をあつめる出版社だと自負しています。昨年から「ノンフィクションシリーズ“人間”」の刊行を開始しました。ドキュメンタリーの良書を復刊し世に広める企画です。監修・解説は評論家の佐高信氏で、すでに6冊を発行しています。このシリーズに『会長はなぜ自殺したか──金融腐敗=呪縛の検証』(読売新聞社会部。1998年新潮社刊、2000年新潮文庫)を入れようと企画し、2010年12月から読売新聞社と交渉を始めました。交渉は順調に進み、著者名を「読売社会部清武班」とすることも合意し、2011年5月9日に出版契約を結んだのです。本書の取材記者もつとめた読売新聞社会部次長(当時)が交渉の窓口となって読売新聞社の法務部門と協議した上で結ばれた出版契約です。

 その半年後に、清武氏の内部告発です。2011年12月1日、読売新聞社七つ森書館に「出版契約を解除したい。補償はお金でする」と申し入れてきました。私たちは「良書を復刊するのが『ノンフィクションシリーズ“人間”』の目的です」と理解を求めました。読売新聞社代理人同士の交渉もうまくいかないと見るや「出版契約無効確認請求事件」として東京地裁へ提訴しました。2012年4月11日のことです。

 読売新聞社の主張は「読売新聞社において、出版契約は局長が了解・決定するのが通例であるが、今回はそのような手続きが実行されていなかった。権限を有していない社会部次長が署名しているから無効である」というものです。出版契約にいたるプロセスをまったく無視しているばかりか、読売新聞社内の規則にすぎないものを社会一般の論理と見せかけて押し通すものにほかなりません。出版差し止め訴訟へ持ち込めなかったのです。

 巨大メディアである読売新聞社が、小出版社の七つ森書館を訴えることによって出版を妨害したのです。多大な時間と訴訟費用の浪費を迫り、自らの主張を押し通そうとするものです。われわれジャーナリストにとって社会的正義は何よりも重く、言論・表現の自由は社会的正義を守り抜くためにあることを忘れてはなりません。

 この数十年で、どれだけの巨大企業が膨大な利潤を奪っていったことでしょう。どれだけ多くの貧困層が生まれていったことでしょう。このような社会の矛盾を監視していくのがジャーナリストの眼なのです。清武氏は本書執筆中に、経営陣に対して「おかしいじゃないですか」と叫んだ社員の声が忘れられないといいます。私たちアリのように小さな存在が、巨象のように大きな読売新聞社に対して、おかしいことはおかしいと言って誤りを正していくことが重要だと思うのです。少年少女のような考え方かもしれませんが、私たちは少年少女時代の美しい心を忘れません。

   株式会社 七つ森書館  代表取締役 中里英章


読売と清武「個人」のバトルなどはどうでも良いが、この読売の横暴は断じて許せない。読売は、言ってみれば清武英利との「私闘」を口実に、小出版社の新刊出版を差し止めようとしているのだ。しかもこの本はプロ野球とは何の関係もない。こういうところが読売の「巨悪」たるゆえんだろう。七つ森書館の闘いを応援したい。