kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

"The Japanned Box" by Arthur Conan Doyle

これは知らなかった。昨日図書館でみつけて借りてきた新潮文庫の『ドイル傑作集 I ミステリー編』、これはシャーロック・ホームズの出てこないコナン・ドイルのミステリーの短編8つを収録したものだが、その4編目を読み終えて目次を見ると、英語のタイトルに目が釘付けになってしまった。"The Japanned Box" というのである。「漆器の箱」と訳されている。"japanned" とは、「漆器の」「漆塗りの」という意味らしい。これは知らなかった。


ドイル傑作集 1 ミステリー編 (新潮文庫 (ト-3-11))

ドイル傑作集 1 ミステリー編 (新潮文庫 (ト-3-11))


ネットの英和辞典の記載は下記。固有名詞ではないから、小文字で表記される。
Japanの意味・使い方・読み方 | Weblio英和辞書

japan
音節ja・pan 発音記号/dʒəpˈæn/

【名詞】【不可算名詞】
1 漆.
2 漆器.

【形容詞】
漆(塗り)の,漆器の.

【動詞】 【他動詞】
(ja・panned; ja・pan・ning) 〈…に〉漆を塗る,漆でつやをつける.
[JAPAN から]

ついでに知ったのだが、"china"という普通名詞があり、こちらも形容詞としても使われるが、動詞としては使われないようだ。

Chinaの意味・使い方・読み方 | Weblio英和辞書

china
音節chi・na 発音記号/tʃάɪnə/音声を聞く
【名詞】【不可算名詞】

1 磁器.
2 [集合的に] 陶磁器,瀬戸物,焼き物.

用例  a piece of china 1個の磁器.
【形容詞】【限定用法の形容詞】
(陶)磁器製の.

形容詞としての「china」のイディオムやフレーズ
a búll in a chína shòp

【語源】
ペルシア語「中国製の磁器」の意

この作品に高い評価を下しているブログ記事を挙げておく。

コナンドイルの話 : kyuzo7のブログ(2006年8月24日)

コナンドイルといえば皆さんホームズでしょうか?


もちろん、ホームズも大好きなのですが五十嵐が一番好きなのは「漆器の箱」ドイル短編集の中に入ってます。
ある屋敷に子供の家庭教師としてやってきた男は使用人達の中で囁かれる恐ろしい噂を知る。かつて悪事に手を染めていた屋敷主人の秘密とは…………
肝心の話をばらしてしまうのは如何なものかって感じなので
書きませんが。短いながらも凝縮された内容がみるものを引きつけます。

ちょっとだけ書いておくと、おどろおどろしい屋敷に住む主人にはベリルという名の妻がいた。すわ、『バスカヴィル家の犬』のごとき恐怖譚か。(以下略)

この短編集には他に、「甲虫採集家」という短篇もあって、昆虫採集家はロンドン郊外でデラミア荘という名の屋敷に住んでいる。これも『バスカヴィル家の犬』みたいな話かと思いきや。

短編集を半分読んだ限りでは、名探偵ホームズが出てこないせいか、謎に気づく探偵役がいるわけでもなく、ミステリー集とは言いながら謎解きの要素はあまりない。作者コナン・ドイル自身は嫌っていたというホームズものの方が面白いよなあ、やっぱり、ってとこ。とはいえ、短編集に収録されたそれぞれの作品は決して駄作ではない。特に、「The Japanned Box(漆器の箱)」は、謎解きの要素を評価の対象にしなければ*1、佳作だと思う。後半の4編の出来映えはまだわからないけど(中には訳者・延原謙が「およそドイルの作品らしくないもの」と評する「悪夢の部屋」という作品もある)。

なお、『ドイル傑作集 I』と並行してシャーロック・ホームズの第3短編集『シャーロック・ホームズの帰還』(河出文庫)も読んでいる。まだ冒頭の「空き家の冒険」を読んだところ。つまり、かの有名な「日本の(謎の)格闘技」"baritsu" に遭遇したばかりだった。まだ当ダイアリーに『シャーロック・ホームズの思い出』論を3分の1しか書いていないのだけれど、文庫本は10月まで毎月1冊ずつ容赦なく刊行される。


*1:この作品には結末を言い当てる手がかりは用意されていないが、それを言うならホームズものの最初の長編『緋色の研究(緋色の習作)』も、読者が犯人の名前を当てるのは不可能ではないか。そう思ったが、さらにネット検索をかけたら気づいた方がおられたことを知った。