kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

「ピケティ氏『ギリシャ債務減免を』 独首相に公開書簡」(朝日)

ギリシャの債務問題の件、書く機を逸していたが、主にTBS、テレビ朝日朝日新聞といった、私が日常接している「リベラル」のメディアの報道のひどさに呆れ果てている。テレ朝もTBSも「ギリシャのわがまま」なる、EU側、というより(ギリシャに比べて「経済強者」である)ドイツやフランスの体制側からの一方的な見方を垂れ流すだけで、二言目には「株価ガー」と言い出すのだ。朝日新聞クルーグマンとピケティという2人のリベラル派の経済学者のコラムをそれぞれ月1回掲載しているが、クルーグマンやピケティのこの問題のとらえ方は朝日新聞の(あるいはテレビ朝日やTBSの、それに読んでいないが毎日新聞東京新聞の、とりわけ長谷川幸洋のような)記者たちとは全く異なる。

下記の報道は、昨日(7/8)の朝日新聞夕刊とテレビ朝日の『報道ステーション』で報じられたが、テレビ朝日の普段の報道とは正反対の意見であるせいか、古舘伊知郎は何もコメントしなかった。

http://www.asahi.com/articles/ASH781SQDH78UHBI005.html

ピケティ氏「ギリシャ債務減免を」 独首相に公開書簡

ベルリン=喜田尚

 ギリシャ政府は銃を頭に突きつけ、引き金を引くよう求められている――著書「21世紀の資本」で知られるフランスのトマ・ピケティ氏ら財政緊縮政策に批判的な経済学者ら5人が7日、ドイツのメルケル首相にギリシャの債務減免を求める公開書簡を出した。

 書簡に署名したのはピケティ氏のほか、中道左派シュレーダー前政権時代の初期にドイツ財務省次官を務めたハイナー・フラスベク氏や米国の大学教授ら。

 書簡は「ギリシャに債務問題を生み出す役割を果たしたのは腐敗や税逃れ、歴代政府の財務政策だ」とする一方、「欧州がギリシャに強いている緊縮政策」を厳しく批判。「(緊縮を基本とする)政策は、1929〜33年以来見たこともなかった大恐慌をもたらしただけだ」と主張した。

朝日新聞デジタル 2015年7月8日13時20分)


この短い記事さえなんとかデジタル無登録者には読ませない朝日には本当に頭にくるので、「残り:229文字/本文:553文字」とあるその「残り」を紙面から転記する。

 また、「欧州が1950年代、特にドイツに対し債務を免除したことが戦後の経済成長を促し、平和と民主主義の基礎を築いた」とも指摘した。

 書簡はユーロ圏首脳会議が開かれた7日、ドイツ国内のメディアに公開された。(ベルリン=喜田尚)

朝日新聞 2015年7月9日付夕刊 2面掲載記事より)


テレビ朝日の報道を瞥見する限り、ピケティらの書簡にはもっと具体的な表現でドイツに対する辛辣な批判が書き連ねられていたようだ。朝日は、自紙にコラムを載せ、昨年末から今年の年始にかけて日本でも大ブームを引き起こした人気経済学者の意見表明だから、重い腰を上げて記事にしたようにしか見えないが、ピケティの意見はリベラル派なら当然の主張であるように思われる。

しかし、日本の「リベラル」たちの反応は鈍く、「はてなブックマーク」のコメントを見てもろくなものがない。唯一光ったのが下記のブコメである。

vox_populi 学者が自らの専門性を背景に政治的提言を行なうことはもっとあってよい。日本でも圧倒的多数の憲法学者が政府提出の法案に対して異議申し立てを行なっている。政治の側がこれに傾聴するかどうかが問われている。


立憲主義に関する記事は尻切れトンボの第1回を書いただけで中断しているが、政権が恣意的に憲法解釈を変更すること自体、「立憲主義」に反することを今回学んだ。

これを敷衍していえば、昔から(少なくとも2012年に毎日新聞の「えらぼーと」に回答した時までずっと*1)「集団的自衛権の政府解釈」を「変更すべきだ」と回答してきた小沢一郎も、「立憲主義」に反していたことになるし、政権交代を「期限付き独裁」と言い放った菅直人ももちろん「立憲主義」に反していた。菅直人よりさらに露骨に「選挙はある種の白紙委任」だとほざいた橋下徹も「立憲主義」に反しているのは当然と思われるが(現に橋下は安倍晋三が狙う安保法案の成立に協力している)、なぜか「立憲主義を理解している橋下くんを、自民党のアブナイ改憲案に対抗する勢力として活用したい」と書いた「リベラル」がいた。

こうした、立憲主義に反する主張をしてきた小沢一郎だの菅直人だの橋下だのといった政治家を「リベラル」がもてはやした末に権力をトリモロしたのが、「究極の『立憲主義』への挑戦者にして『反知性主義の帝王』」であるところの安倍晋三だった、というのが現時点での私の考えである。

立憲主義と安保法案に関してはこのくらいにしておくが、参議院で審議が始まった労働者派遣法の改悪案に対する「リベラル」の関心の低さにも失望させられる。ギリシャの債務問題に関しても、日本の「リベラル」の脆弱さに呆れ返るばかりの今日この頃なのである。

*1:2014年の衆院選の時には「えらぼーと」に集団的自衛権の政府解釈に関する質問はなかった。小沢一郎は現時点でも意見を変えていないのではないかと私はみている。