kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

「投げるバース」3勝目で日本ハムが10年ぶり日本一

今夜は6回表の途中からテレビ中継を見た。日テレ系の中継だったが、あの嫌らしい語り口の日テレのアナウンサーではなく、広島テレビのアナウンサーが実況していたのが良かった。本音を言えば、黒田博樹大谷翔平の新旧対決になるはずだった第7戦が見たかったし、第7戦が行われるなら1回表から見ようと思っていたが、現実にはならなかった。過去6度の日本シリーズで1シリーズ平均7試合(6試合1度、7試合4度、8試合1度)を戦ったカープだから、必ずや3勝3敗のタイに持ち込んでくれると思っていたのだが、実現しなかったのは残念だった。だが、思うような結果にならないのがプロ野球観戦であるのは当たり前だ。何より今年の日本シリーズは、ひいきチームが出場した昨年の日本シリーズよりはるかに面白かった。昨年は、ヤクルトファンとしては第3戦の山田哲人の3連発しか見せ場がなかった。「赤勝て、白勝て」の中立の立場で見ていた今年は見どころが多かった。

同点で迎えた7回裏に、今シリーズのラッキーボーイだった「投げるバース」ことアンソニー・バースが登板した時、今夜もまたこの人が勝利投手になるのではないかと思ったらその通りになった。8回表、日本ハムは二死無走者から一挙6点を挙げたが、一番打者の西川遙輝がヒットで塁に出ると、盗塁を狙って広島の救援投手・ジャクソンにプレッシャーをかけた。今シリーズ第3戦と第4戦で2点ずつを失って第4戦には敗戦投手になったジャクソンはもろくも崩れていった。3連打を浴びて二死満塁で四番・中田翔を迎えると、ネクストバッターズサークルに大谷翔平が現れた。ジャクソンを動揺させるための日本ハム監督・栗山のブラフに違いなかったが、頭に血が上ったジャクソンは中田に押し出しの四球(一球もストライクのないストレートの四球)を与えると、大谷はベンチに退いて打順通り投手のバースが打席に立った。打者が投手だとはいえ、ジャクソンは冷静さを失っているに違いないから、バースにも打たれる可能性があるぞと思っていたら本当に打たれた。2点をリードされてなお二死満塁で、打席には第4戦でジャクソンから決勝2ランを放ったレアードを迎えた。この場面になると、もはやジャクソンが打たれる光景しか想像できなかった。なぜ広島ベンチは投手を代えないのか、このまま続投させたら必ず打たれるぞ、それを指をくわえて見ているつもりか、などと思っていたのだが、広島ベンチは全く動かず、案の定ジャクソンはレアードに満塁本塁打を打たれてしまった。これでこのシリーズは決着がついた。「投げるバース」はシリーズ3勝目を挙げ*1、シリーズ3本の本塁打を放ったレアードがMVPを獲った。

中立の立場で見ていたからあまり気にならなかったのだが、シリーズが進むにつれて、第3戦で広島ベンチがベストを尽くさずに負けたことがシリーズの流れを変えたな、と思うようになった。あれが広島でなくひいきのヤクルトだったら怒り心頭に発して、この日記でベンチワークをケチョンケチョンにけなしていたに違いなかった。

第3戦の8回裏、二死二塁でジャクソンが大谷を迎えた場面は、私は勝ち越しの走者を出すのは嫌だから大谷と勝負すべきだと思ったが、広島ベンチは敬遠策を選んで次打者の中田に打たれた。だが、これはミスとはいえないだろう。問題は、延長10回裏に大瀬良が二死一塁で大谷を迎えた時だった。カウント1-1から一塁走者の西川が二盗を決めたが、この時大谷は空振りしたので1ボール2ストライクと追い込まれた。大谷によると、西川がスタートを切ったのを見て、西川を助けるためにわざと空振りしたものらしい。ここでは広島は大谷を敬遠しなかった。追い込んでいたから欲が出たのだろうが、「ボール気味の球を投げて、大谷が振ってくれればもうけもの」という配球だった。しかし、なんと大谷は相手投手がストライクを投げてこないことを見越して、ボール球に的を絞っていたという。最初から悪球打ちを狙っていたからこそ、大谷はあの難しいボール球を一、二塁間に持って行くことができたのだった。つまり、広島の中途半端な勝負が裏目に出たのだった。その前の8回裏の大谷の打席では、解説の古田敦也が「くさい球で勝負などと考えていたら甘く入って打たれるから、敬遠するならはっきり外した方が良い」と言っていたが、10回裏の大谷の打席では、全然甘くない難しいボールだったのにうまく打たれた。しかし、広島ベンチが本当に責められるべきはそこではなく、ボール気味の球を使ってとはいえ大谷との勝負を選択したにもかかわらず、野手に前進守備態勢をとらせなかったことだ。このことは大瀬良が打たれる前に古田が何度も繰り返して指摘していた。「なぜ大谷と勝負するなら前進守備をとらないのか、1点取られたら終わりなのに」と古田は言った。広島ベンチは解説者にあからさまに指摘される采配ミスをやらかして、明らかに勝てる試合だった第3戦を落とした。あとの試合も接戦続きだったが、1試合ごとに広島の救援投手陣の打たれ方が派手になっていった。第4戦ではレアードの決勝2ラン、第5戦では西川のサヨナラ満塁ホームラン、そして第6戦では押し出しの四球と投手にタイムリーを打たれたあとにレアードの満塁本塁打を打たれてイニング6失点と、失点は雪だるま式に膨れ上がっていった。

「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」といつも言っていたのは野村克也だったが、今年の日本シリーズにもそれが当てはまった。今年の日本シリーズに、広島は負けるべくして負けた。

*1:日本シリーズ3勝って、もしかしたら1964年の南海・スタンカ以来じゃないか? もちろん58年の稲尾と59年の杉浦の各4勝があるわけだけど。なおMLBワールドシリーズでは2001年にランディ・バースならぬランディ・ジョンソンヤンキースから3勝を挙げたことを覚えている。