kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

ピケティ「トランプの政策によって不平等が生じる傾向がひたすら強まる」(朝日)

朝日新聞は、今朝(11/23)の社説でTPPについて「まず、トランプ氏に再考を促す努力を続ける必要がある」と書く新聞であって、その読売と全く変わらないTPP推進の姿勢は、かつて「地政学大好き」のタカ派の保守人士・船橋洋一主筆を務めていた時代(2007〜10年)からずっと一貫している。朝日が熱心に薦めたから菅直人がTPP推進に舵を切ったんだろうと私は思っている。

そんなどうしようもない朝日だけれども、東京新聞のような、2012年に小沢一郎嘉田由紀子をけしかけて作らせた「日本未来の党」を全力で応援したうえ、長谷川幸洋を今も飼い続けている論外の新聞と比較すると、消去法で購読を続けても良いかと思っている(毎日は、朝日と東京の中間みたいな印象がある。最近は、ネットですぐに記事が読めなくなることも毎日の印象を悪くしている)。それに朝日にはクルーグマンやピケティのコラムが載る。かつては夕刊文化面に載る加藤周一吉田秀和の文章が朝日の購読を続けるモチベーションになっていたが、近年二人は相次いで世を去った(ともに天寿を全うしたといえるが)。

今朝の紙面には、ルモンドから翻訳されたピケティのコラムが出ている。もちろんピケティもトランプを批判している。

ピケティは書き出しの部分で、トランプの勝因は「経済格差と地域格差が爆発的に拡大したことにある」としながらも、「民主党執行部が予備選でバーニー・サンダース氏に投じられた票がから教訓を引き出せなかった」として敗れた民主党を責めた上で、トランプを強く批判している。以下紙面から引用する。

 何より悲惨なのは、トランプ氏の政策によって、不平等が生じる傾向がひたすら強まることだ。現政権が苦労して*1低所得層にあてがったオバマケア(皆保険制度)を廃止し、企業の利益にかかる連邦法人税率を35%から15%に引き下げるという。米国はこれまで、欧州で始まった、企業を国内につなぎ留めるための際限なき減税合戦に持ちこたえてきたのに、財政上のダンピングに巻き込もうとしているのだ。

 米国内の政治的対立はいよいよ民族問題の色を濃くし、新たな妥協点が見いだされない限り未来は見通せなくなっている。多数派である白人の6割がある政党(共和党)に投票し、黒人やヒスパニックといった少数派の7割超が別の党(民主党)を支持する最悪の国なのだ。しかも、多数派の数的優位は失われつつある。2000年に投票者数の8割を占めていた白人は今回7割、2040年までは5割になる見通しだ。

朝日新聞 2016年11月23日付オピニオン面掲載「ピケティコラム『米大統領選の教訓 グローバル化 変える時』」より)

この日記で前回ピケティのコラムを引用した時にも書いたことだが、上記のようなことは何もピケティの意見を引用するまでもなく、あまりにも当たり前のことだ。しかし、このところ毎日のように非難し続けている通り、その当たり前が当たり前でなくなっているのが、日本の括弧付き「リベラル」界隈であり、そこで幅を利かせているのは「トランプはクリントンよりマシ」という大合唱なのだ。

風邪に戦ぐ草 - Living, Loving, Thinking, Again(2016年11月22日)より

植草一秀反グローバリズムがトランプ新大統領を誕生させた」http://uekusak.cocolog-nifty.com/blog/2016/11/post-e27d.html

風太「急がれる日本の新体制つくり」http://9123.teacup.com/uekusajiken/bbs/13985


植草一秀とあの風太によるドナルド・トランプ当選祝賀。それは同時に世界中の民主化運動に対する敵対宣言と解釈しても間違いではないだろう。それにしても、どちらも紋切型というか、情報量の少ないすかすかなテクストだな。出来の悪い人工知能が「小沢信者」やトランプ支持者がよく使いそうな鍵言葉をシャッフルして適当に繋ぎ合わせたみたいな。

「小沢信者」を含む一部日本の「リベラル」(その実態は腐った極右にほかならないが)は、「世界中の民主化運動に対する敵対宣言」*2をした。前の戦争を思い起こさせる、無謀な宣戦布告というべきか。

ピケティはアメリカを「多数派である白人の6割がある政党に投票し、黒人やヒスパニックといった少数派の7割超が別の党を支持する最悪の国」と評したが、アメリカが「最悪」といえるかどうか私には疑問だ。なぜなら、日本で同じ候補者による選挙があったら、保守も「リベラル」もこぞってトランプに投票してトランプの地滑り的圧勝になったに違いないからだ(小池百合子が圧勝した今年7月の東京都知事選を想起せよ)。明らかにアメリカよりももっと悪い。まさに「権力を批判した言説の絶え果てた『崩壊の時代』」の国、それが日本だ。

日本は2012年にいち早く極右政治家を総理大臣に返り咲かせて「崩壊の時代」に入った。アメリカも今年、2016年の大統領選でそれに続いた。来年大統領選が行われるフランスも日米に続く可能性がある。日本こそ「先進国」の先頭を切って政治・経済・社会の崩壊を推し進めている国ではなかろうかと思う今日この頃だ。

*1:誰かさんのおかげで、苦労してもクロウ、クロウなどというトンデモな歌詞(元読売・クロウマーティ=通称クロマティ=の応援歌の一節)が思い浮かんでしまった(苦笑)。

*2:http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20161121/1479707976 参照。