kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

そう、それが諸悪の根源なんだよ!

そんなわけで、さっそくコメント欄の意見を批判する。

http://d.hatena.ne.jp/kojitaken/20170120/1484865244#c1484923754

id:breakwater3 2017/01/20 23:49

今世界で起きている対立は、既得権層VSそれに不満を持つ層。

トランプを支持してヒラリーが人気がないのもヒラリーはアメリカの既得権側の人間だからでしょう。トランプに票を入れた人も自分はトランプの発言を支持してるわけではないと言ってる。ヒラリーには期待できないからだと。

小池が支持される理由も同じ。小池は既得権打破してくれる改革派だと思われてるから支持されるわけで。もうオリンピックをやめろという声が大きくなってる理由も同じだ。

小池やトランプが実際に支持者が期待するような人物かは別問題ですが、今、どんな政治家が支持されるかというとそういうことでしょう。

そう、そういう物言いが諸悪の根源なんだよ!

資本主義というのは、放っておくと資本が暴走して格差を生み出す。それで規制が生まれる。しかし規制は「既得権層」を生み出す。

1970年代半ば頃までは、資本主義国は社会主義国の挑戦を受けていたこともあって、修正資本主義が普通だった。しかし、「社会主義国」が主に内部の矛盾によって弱体化していくと、新自由主義が修正資本主義に挑戦するようになった。

「既得権層」とは修正資本主義で利益を得た層であって、それを「ぶっ壊す」と主張するのが新自由主義勢力。1979年のサッチャーや1980年のレーガンはその流れに沿って現れた。日本でも1982年に中曽根康弘が総理大臣になった。

しかし、資本主義を放っておくと格差や貧困を生み出すから規制が生まれて「既得権層」を生み出したのだから、「既得権層」をぶっ壊すだけでは資本の暴走はますます苛烈になって格差が拡大して貧困が蔓延するのは当たり前だ。

2001年に小泉純一郎が総理大臣になると、日本中が熱狂したが、小泉はそれまでの自民党政権が束になっても敵わないほどの格差拡大の政治を行った(それまでに道筋をつけた中曽根や橋本龍太郎の悪行も忘れてはならないけれど)。

だから2006〜07年頃から日本でも新自由主義に対する批判が強まった。第1次安倍内閣が1年で倒れたのは、主に安倍が「小泉純一郎の後継者」として振る舞わなければならなかったことに起因すると私は考えている。つまり安倍は小泉の身代わりとして批判の集中砲火を浴びたようなものだった。小泉政権の末期には、人々は小泉の政策は気に入らなくても小泉の「キャラクター」は気に入っていたので小泉を批判することはできないというジレンマを持っていたが、同じ政策を安倍晋三が継続したら、安倍は小泉と違って「キャラクター」には人気がなかったので、たちまち批判の矢が安倍に向かったというメカニズムを私は考えている。新自由主義批判がピークになったのは2008〜09年で、当時は竹中平蔵がテレビに出演した時のテレビ欄に「そんなに私は悪いのか」というサブタイトルが書かれていたくらい、新自由主義批判が全盛だった。

しかし、またまたその反動が起きて、再び「既得権層への挑戦」を掲げる新自由主義の政治家が都市部で人気を得るようになった。それには地域差があって、早いのは大阪の橋下徹(2008年)だった。2016年の小池百合子は「8年遅い橋下徹」といえる。なぜ東京が遅れたかというと、長年「マッチョ系復古主義者」の石原慎太郎が居座っていたからだ。猪瀬直樹は石原の直系だったが、舛添要一は、もともとは新自由主義者だったが(自身の介護の経験などもあって)修正資本主義に傾きつつある政治家だったから、その「修正資本主義に傾きつつある」部分への人々の不満が新自由主義者小池百合子を生み出したってわけだ。

だが、新自由主義、というか剥き出しの資本主義への回帰は、さらなる格差の拡大しか生み出さない。そこがポイントだ。「ぶっ壊」してそのあと何もしなければ、格差や貧困は「既得権層」とやらが好き放題やっていた頃よりもかえって悪くなるので、格差や貧困を生み出さないような制度を作り変える必要がある。必要なのは良い制度なんだよ。日本でも2000年代の後半には人々がそのことを学びつつあるように見えたのに、そうではないことが橋下や小池の当選で明らかになった。だから、「その時の失敗から何も学ぶことができていない」と俺は書いたんだよ。「その時」とは2001年の小泉政権発足に人々が期待したものの、それが無残に裏切られたことを指している。id:breakwater3さんよ、あなたも何もわかっていないようだね。

余談だが、トランプの場合は石原慎太郎と同じ「マッチョ系復古主義者」の色合いが強い。「古き良きアメリカ」に対する白人中間層の郷愁をかき立てて当選した。トランプはレーガンを崇拝していることは周知だが、今では新自由主義政治家として語られることの多いレーガンももともとは「マッチョ系復古主義者」だ。

安倍晋三は自身にはマッチョ系の素質はあまり、というよりほとんどないが、母方の祖父・岸信介の威光が物を言っていて、安倍自身が熱中しているネトウヨ的世界観・政治観(それ自体はお粗末きわまりないものだ)と相俟って「古き良き日本」への郷愁を保守層にかき立てている。それが高い政権支持率に結びついていると私は見ている。2006〜07年に批判を浴びた新自由主義色よりも、復古主義の方が、小泉からの借り物ではない安倍本来の姿だ。さとうしゅういち氏が指摘する通り「4年早いトランプ」そのものだと思う。

だが、トランプも安倍も格差縮小・貧困の解消の処方箋を打ち出す政治家ではない。だから小泉純一郎橋下徹小池百合子らの過激な新自由主義者と同様、国民生活を良くしてくれる政治家ではありようがない。