2月最初(今年5タイトル目、2013年以降43タイトル目)の松本清張本は『天才画の女』(新潮文庫)。2月6日読了。
- 作者: 松本清張
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1982/09/28
- メディア: 文庫
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こんなまだるっこしいトリックは今なら必要ないってとこかな。異色作ではあるが。なおタイトルからは清張得意の「悪女もの」を思わせるが、本作では「天才画の女」そのものには魅力はない。つまらない本ではないけれど、あまりハラハラドキドキはしない。1980年に竹下景子主演でドラマ化されたことがあるらしい。アマゾンカスタマーレビューに小谷野敦が書いた酷評のレビュー経由で知った。
この本は本筋の興味よりは、美術に造詣の深い清張が美術評論家や美術記者の生態を戯画化しているところに面白さがあるかもしれない。これは評論家や新聞記者に対する清張の意趣返しでもあるだろう。私が思い出したのは、2012年に亡くなった著名な音楽評論家にして美術にも造詣が深かった吉田秀和が物故した某画家をこき下ろした文章だ。この日記で昨年取り上げた(下記)。
- 北岳と煙草と新幹線と(串田孫一と吉田秀和を読む) - kojitakenの日記(2016年9月18日)
小説家は他のジャンルの評論家を叩き、音楽評論家は他のジャンルの芸術家を叩く(たまたまジャンルは同じ美術だった)。そのあたりの人間心理にも興味深いものがある。