昨日公開した下記エントリのコメント欄より。
普段はROM専の20代
コメントありがとうございます。
「日本が本格的に世界から孤立していく決定的な出来事になるんじゃないかと不安になりました」とのことですが、間違いなくそうなりますね。
この件でいつも思い出すのは、20年前に経済学者の故森嶋通夫(1923-2004)が書いた『なぜ日本は没落するか」(岩波現代文庫 2010, 単行本初出は岩波書店1999)です。
6年前に、当時運営していたブログ『きまぐれな日々』(現在は更新停止中)に書いた記事の中で、上記森嶋の著書から引用しましたが、それから以下に孫引きします。
(前略)日本人はいまだに中国や韓国を蔑視し、嫌悪している。こういう感情は、日本の前途が上り坂から下り坂に転じたならば一層強くなるであろう。事実、「東京裁判史観批判」や太平洋戦争の「自虐史観」的解釈を拒否する「自由主義史観」や古典的な「大東亜戦争肯定論」の動きは、日本軍の戦争中の暴虐を肯定する方向にある。このような動きは日本を単にアジアで孤立化させるだけではなく、不法で残酷な扱いを受けた他の諸国−−たとえばビルマでのイギリス、フィリッピンでのアメリカ−−をも中国、韓国側に与させてしまうだろう。そういう状況になれば、アメリカはアジアで現在パックス・アメリカーナ(アメリカ支配に基づく平和)を推進していく上で(引用者註:原文ママ)、日本をとるか中国をとるかの岐路に立たされるであろう。過去にもアメリカは何回かそういう選択をせまられ、太平洋戦争直前には中国を選んだことを忘れてはならない。
同じようにアメリカが、将来中国を選ぶようになるならば、日米関係は一挙に悪化し、日本はアジアで孤立するであろう。ビルマ戦線での英軍捕虜虐待に対する日本政府の対応に満足していないイギリス人は決して、そのとき日本支持に立ち上がることはない。こういう事態が生じれば、それは明らかに激しい逆風である。いかに巧妙に船を操っても、船は風下に流されてしまう。それは明白な日本の没落を引き起こす強風である。
(森嶋通夫『なぜ日本は没落するか』(岩波現代文庫,2010=初出岩波書店,1999) 60-61頁)
日本の没落はもう相当に進んでいて、安倍晋三はもはや中国と張り合おうとする努力を放棄したように見えますが、その分韓国を集中的にターゲットにしています。
それは参院選でも自民党に票を集めるための人気取りとして使われましたが、一部では参院選が終われば政権は矛を収めるだろうとの見方もありました。
しかし、安倍政権はそうはせず、逆に対決姿勢をエスカレートさせました。それを朝日新聞は、政権には韓国に屈すれば支持が下落するとの思惑があるとの記事を書いています(下記URL)。これには、10月の消費税増税を控えて、もはや安倍政権の経済政策で内閣支持率を浮揚させることが不可能になっている事情もあるのでしょう(今やネトウヨの代名詞的な存在に堕ち果てた阪大の物理学者・菊池誠が現在何を言っているのかは知りませんが)。
https://www.asahi.com/articles/ASM825J6JM82UHBI02B.html
朝日の記事には「強気の姿勢の背景には、安倍政権の支持層の存在もある」などと書かれていますが、実際には安倍政権の支持層にとどまらない、「リベラル」層も含めた異様なまでの韓国に対する反感が現在のこの国を支配しています。TBSの『サンデーモーニング』やテレビ朝日の玉川徹記者なども、こと日韓関係になるとタカ派に変身します。
立憲民主党や国民民主党がこの件では安倍政権に追随してしまうのも、彼らの支持層である「リベラル」たちに意を受けたものだと考えています。
この件に関しては、下記に示す一連の醍醐聡氏の論評が妥当かと思います。
①立憲https://t.co/1F91XzcBHC
— 醍醐 聰 (@shichoshacommu2) August 2, 2019
「福山氏は会談で、悪化する日韓関係について『日本政府の主張に一定の理解はしている』と述べ、野党としても政権の対応を支持する姿勢を示した。」
→対韓国となると挙国一致。他国民の人権より、国益になびくのでは「立憲」の看板が泣く。
②国民民主https://t.co/gcwCFH0D7V
— 醍醐 聰 (@shichoshacommu2) August 2, 2019
「請求権協定守ってほしい」
→玉木氏は、請求権協定は国家間の協定、徴用工問題は韓国の個人と日本の民間企業の問題(その背景には日本の植民地支配があるが)という基本、行政と司法の分立の意味が理解できていない。党首として大丈夫か?
③日本共産党https://t.co/fuZSKx2QS7
— 醍醐 聰 (@shichoshacommu2) August 2, 2019
4党の中では政府批判は徹底しているが、共産党まで「政治上の紛争解決は外交的な話し合いで解決すべきだ」と聞いて落胆。
旧徴用工問題は「政治上の紛争」ではなく、歴史認識、人権の問題。この核心を外すと、話し合いでといっても「一時休戦」を求めるに近い。
④れいわhttps://t.co/LDiLRtuSbM
— 醍醐 聰 (@shichoshacommu2) August 2, 2019
輸出規制を批判しているが、批判の論脈は支離滅裂
「韓国への輸出総額である約6兆円を国益として維持していくべき」
→ずれている。6兆円を失うのがもったいないから輸出規制に反対するのか?
「言いたいことがあるのはお互い様」
→ れいわも喧嘩両成敗?
⑤要約。対韓輸出措置、日韓請求権協定をめぐる野党の見解はまったくバラバラ。少なくとも立憲民主、国民民主の見解は政府・与党とほぼ同類。その理由は、問題の由来=日本が直視すべき植民地支配の罪責を日韓の政治対立にすり替え、「約束は守れ」という無知で稚拙な議論に浸っていることにある。
— 醍醐 聰 (@shichoshacommu2) August 2, 2019
⑥こうした史観を清算しないかぎり、世界の人権意識の水準に耐えうる政治(野党政権も含め)は望むべくもないし、野党共闘が掲げる立憲主義も眉唾ものである。また、安倍政権の戦後レジーム脱却政治を超えられないし、他虐を自虐と言いくるめる保守歴史修正主義政権にとって代わることもできない。
— 醍醐 聰 (@shichoshacommu2) August 2, 2019
上記の論評を記号で表記すれば、共産△(歴史認識・人権の問題の核心から外れかかっている)、山本太郎×(既成批判は良いが論拠が支離滅裂)、立民・民民××(安倍政権と同じであって論外)といったところでしょうか。妥当な評価だと私も思います。
蛇足ながら立民の福山幹事長について、山本党支持者が「帰化人だ」との難癖をつけたのは怪しからん、と論難している立民支持者のツイートを見かけましたが、立民支持者が真に批判すべきは他党の支持者ではなく、上記醍醐氏のツイートで批判されたような自らの支持政党の執行部のあり方ではないかと思いました。
実際山本党の支持層(その多くはかつての小沢一郎支持者または「信者」)にも、この件とかかわりが深いと思われる愛知芸術文化センターの「言論の不自由展」へのテロ行為を煽って展覧会を中止に追い込んだ極右レイシストたる名古屋市長・河村たかしを長年にわたって応援し続けたという重大極まりない問題を抱えており、私は誰かこの件に関して山本太郎に見解を訊かないものかと思っているのですが(まあ実際に誰かが山本氏に訊いているかもしれませんが)、自らが支持する政治家や政治勢力に対して率直な批判ができないことは、立民支持層と山本太郎支持層とに共通する、非常に大きな課題だと思います。両層の人たちとも、この課題を克服できないようではどうしようもありません。
以上、書き上げてから思ったのですが、結局安倍政権に対する批判より、野党及びその支持層に対する注文ばかりの記事になってしまいました。ご期待に添えずに申し訳ありません。もちろん、安倍政権が論外であることなど当然、との前提で物事を考えていますので、ついついその部分が漏れてしまう次第です。
いつも興味深くブログ記事を拝見させて頂いております。
私は野党4党(立民、共産、社民、山本党)の主張をバランスよくチェックして判断しようと心がけている無党派(ただし共産寄りの自覚有り)なんですが、山本太郎には期待したい側面がある一方で信者の盲信ぶりからくる危うさが懸念材料ですね…
今回コメントしようと思ったのは、kojitakenさん(と、このブログの読者層)にとって安倍政権のひどさは常識だから野党批評を中心とした記事が多いのは承知しているのですが、これは取り上げて強く批判すべきだと思った出来事がありまして。ホワイト国除外の件です。
馬の眼氏のツイート
https://twitter.com/ishtarist/status/1157242525045776384
上記や他の関連情報を見て、日本が本格的に世界から孤立していく決定的な出来事になるんじゃないかと不安になりました。しかも安倍政権の韓国蔑視をメディア総出で後押しして、さらに立民まで賛同するなんて…世論が韓国蔑視一色に染まってるのを見せつけられると「リベラル」の多くも歴史修正主義に毒されているんだなと痛感しました。
まとめると、安倍政権(ネトウヨ)の韓国蔑視に同調する野党や「リベラル」、歴史修正主義の問題について偶には取り上げてもいいのではと思った次第です。
長文失礼しました。以上です。