今頃知ったのだが、MMT(現代金融理論)を山本太郎に吹き込んだといわれている池戸万作が10日ほど前にこんなツイートを発していた。
自治体別のれいわ新選組の得票率ランキング。今日はまだ公開していなかった兵庫県です。
— 池戸万作 (@mansaku_ikedo) August 19, 2019
1位 神戸市中央区(1区)6.02%
2位 神戸市灘区(1区)5.38%
3位 神戸市東灘区(1区)5.04%
4位 芦屋市(7区)5.04%
5位 西宮市(7区)4.67%
見事に神戸市中心地と高級住宅街が上位。せれぶ新選組です。
6位~10位です。
— 池戸万作 (@mansaku_ikedo) August 19, 2019
6位 宝塚市(6区)4.40%
7位 神戸市兵庫区(2区)4.14%
8位 神戸市垂水区(3区)3.91%
9位 丹波篠山市(5区)3.86%
10位 尼崎市(8区)3.84%
山本太郎代表の出身地である宝塚市は6位でした。上位は阪神地域が並ぶ中、9位の丹波篠山市が謎でした。
これは参院選比例区の得票率なのだろうが、全国平均の4.55%と比較して、山本太郎の出身地である宝塚市でさえそれを下回っているが、兵庫県内では相対的に阪神間や神戸市中央部・東部で山本元号党の得票率が高かったことがわかる。つまり、山本党は典型的な都市型政党であり、比較的「生活に困っていない、余裕のある人たち」が支持層の中心であるといえる。
こう考えると、山本党の得票率が兵庫県において全国平均をかなり下回る理由がわかる。この地域では大阪維新の会が大阪府内ほどではないが非常に強いのだ。兵庫県内では阪神間や神戸市中央部・東部が維新の金城湯池であることはよく知られているが、山本党の支持層は維新の支持層と強く被っているのだ。そして、維新の支持層は、2017年の衆院選では兵庫県どころか大阪府においてもかなり立憲民主党に流れた事実がある。つまり、一昨年の衆院選で立民の得票層を押し上げ、今年の参院選で山本党の得票率を押し上げたのは、それらの党の存在がなければ維新のような政党に心惹かれる人たちであって、一昨年の立民にせよ今年の山本党にせよ、「本当に困っている人たち」には、訴えがさほど響いていない可能性が高い。もちろん個々には響いた例があるだろうがそれは少数派で、むしろ「意識高い系」*1だかなんだかの「リベラル」が立民や山本党の得票源だと考えた方が良い。
池戸は、上記のツイートを発した2日後、下記のツイートを発信した。
むしろ、生活が苦しい人達は、れいわ新選組には投票していないのが特徴的です。そういう人達は公明党や共産党に投票しています。選挙期間中だけ綺麗ごとばかり言っていても、生活が苦しい人達は投票しません。彼らの人生の「伴走者」にならない限り、生活が苦しい人達を取り込むのは難しいと思います。 https://t.co/VtT29Nr1ie
— 池戸万作 (@mansaku_ikedo) August 22, 2019
これにも「そうだよなあ」と思う。特に、最近ではかなり浮動票が流れ込むようになった共産党(この党は一昨年の衆院選では立民に、今年の参院選では山本党にその浮動票からの得票をずいぶん奪われた)よりも公明党にその傾向が顕著だ。少し前にこの日記にも、東京23区内では比較的「生活が苦しい人たち」の比率が高いと思われる東京東部の足立区、江戸川区、葛飾区で山本党の得票率が低く*2、公明党の得票率が高いことをデータで示したことがあった。ちょうど池戸万作が上記3件のツイートを発信した直前くらいに公開したエントリだ。
現在、私が大いに関心を持っていることが一つある。
それは、消費税減税または消費税廃止のワン・イシューの訴えがどれくらいアンダークラスに訴求するかという命題だ。
現在、特に山本党支持層の間では、それこそがアンダークラスの心に響く政策だとされる傾向が強いように思うが、私の意見ではそれは単なる仮説に過ぎない。それが山本党支持者たちの間ではドグマ(教義)と化して硬直化していることは大いに問題であり、この件に関するアンダークラスを対象とした研究者等による調査で実証される必要があるのではないか、あるいはそのような調査は既になされているのではないかと思うのだ。
もちろん、再来月(もうすぐ「来月」)に予定されている消費税増税は、日本経済にダメージを与えて人々の暮らしを悪くする愚策であると私も考えているが、消費税減税または廃止が本当にアンダークラスの人たちに強く響く政策であるかどうかは別問題だ。アンダークラスの人々が求めるのは、もっと総合的な「格差縮小・階級解消」に向けての政策パッケージではないか。山本太郎の訴えがシングル・イシューであるとも思わないが、シングル・イシューに見える政治手法を山本太郎が用いている傾向は確かにあり、それは野党間の権力抗争の駆け引きに使われている*3ように見える。しかしそれが選挙での得票に有効であるためには、大前提として「消費税減税または廃止が本当にアンダークラスの人たちに強く響く政策である」ことが必要だ。その大前提を私は疑っているのだ。
直観的に、消費税が10%から8%に減税されたところで、たかだか2%くらいの減税で欲しいものが買えるようになるわけではない、それよりもっと根本的に暮らしを楽にする政策を実行してもらいたい、そう強く願う人たちが多いのではないかと思う。そして、日々「人生の『伴走者』」になってくれている公明党の方が、実際には安倍政権に追随するだけで政策が良いとはとても思えないにもかかわらず強く支持されているのではないかと思う今日この頃なのである。