某所でリツイートされた日本共産党大和高田市議会議員・向川まさひで氏のツイートを見かけて、そうだよなあと思った。
私は消費税引き下げの立場ですが「税金は安ければ安い方がよい」という立場はとりません。況や「無税国家」論は、国民の経済活動が生む富(及びそれに裏付けられた債)の分配ではなくマネーゲームや国家間のパワーゲームに財源を依存し、国民が国づくりの自主権を失うディストピアに繋がると思います。
— 向川まさひで (@muka_jcptakada) 2020年6月18日
「無税国家」論と聞いて私が連想するのは、松下幸之助と北朝鮮だ。前者は野田佳彦ら松下政経塾出身の議員たちに強い影響を与えた。野田佳彦や、松下政経塾とは関係ないが小沢一郎らが、10年ほど前によく持ち出していたのが「民のかまど」だった。そこに名古屋の地域政党「減税日本」の河村たかしが加わった。2010年9月27日に当時メインブログにしていた「きまぐれな日々」で彼らを批判した下記記事を公開した。
それよりもっと昔には、北朝鮮が「無税国家」を誇り、小田実や日本社会党がこれを称賛したことがあった。大平正芳が一般消費税を争点にして衆議院を解散しようとしていた1979年*1に社会党が北朝鮮の「無税国家」を称賛して漫画で宣伝していたことが最近発掘され、Twitterで流布した。
その消費税は1989年の創設後、1998年、2014年、2019年の3度税率が引き上げられたが、うち2回は安倍晋三が総理大臣の時代だ。
以前からこのブログでしばしば主張してきたように、私はリフレ派の一部が「安倍政権の経済政策はリベラル」だと言ってきたことは誤りだったと考えている。安倍は、政権に返り咲いた直後こそ所得税率の最高税率を引き上げたり証券優遇税制を廃止したりする一方、積極財政を目指したりもしたが、そういう方向性は長続きせず、税収は消費税主体の税制として消費税率を上げて法人税率を下げ、歳出は米露とお友達以外に対しては緊縮というのが「安倍政権の経済政策」の財政政策面でのベースになった。唯一買えるのは金融緩和だけだが、それだけでは大した成果が挙がらないことが示された7年半だったといえる。ベッド数削減など医療の緊縮化は、100人に1人も新型コロナウイルスに対する抗体を持たないのに東京や大阪で医療崩壊を引き起こす貧弱さを招いた。
そのリフレ派の一部は「MMT派」に鞍替えした。その移行過程において「私はMMTerではない」と言っていたはずの学者も、ほどなくMMT派の代表的論者と目されるようになった。現段階ではMMT派には「信者臭」が強すぎると感じるので、私は近づかないことにしている。どのみち素人なのだから、知るのは学説に検証がなされて評価が定まってからでも遅くないと考えているのだ。だから「無税国家」からMMTなど連想もしなかったのだが、向川まさひで市議のツイートでは下記のやり取りがあった。
「無税国家」論がMMTのことを暗示してらっしゃるんだとすれば、それが無税国家を志向するというのは俗論だし誤解です。
— mememenme (@mememenme) 2020年6月18日
ただ、そうした誤解に基づいてMMTを支持する流れは一定あると思います。同様に新自由主義支持にも、またコミュニズム支持にも一定存在する、理論というよりは俗信としての無税国家論を指しています。
— 向川まさひで (@muka_jcptakada) 2020年6月18日
そういえば、現在東京都知事選に立候補しているMMTerであられるらしいある候補者が、10年前に「民のかまど」論をブチ上げていた河村たかしが引き起こした「あいちトリエンナーレ」の一件をなかなか批判できなかった*2ことを思い出した。
MMT派にも新自由主義支持(ネオリベラリスト)にもコミュニズム支持(共産主義者)にも、「無税国家論」への幻想が「俗信として」一定存在するという向川市議の指摘は、その通りだろう。