今年の4月は昨年の同じ月と比べて倍以上の仕事があったので、一昨日(22日)と昨日(23日)は更新もできなかった。政府と4都府県で協議したという3度目の緊急事態宣言の期間(4月25日から5月11日まで)がやけに短いなあと思ったら、IOC会長のバッハとかいう昔の神崎川みたいな悪臭を発していそうな*1おっさんの来日が5月17日らしく、その時期には宣言が解除されている日程にしたらしい。先月には五輪の聖火リレーのために新規陽性者が増えている段階で宣言を解除するなど、菅義偉と小池百合子が五輪の都合しか考えていないことがよくわかる。
以下は京大・西浦博教授のツイート。
Thomas Bach氏の来日が5月に予定されていて、それまでに宣言が終わるよう必死に政治調整しているのなら、僕はこの国って現時点で終わりなんだと思います。僕たちの代表は何を守ろうとしているのか。国民の生命と財産の保護はどうなるのか。どうか、どうか、根も葉もない噂話であって欲しいと思います。
— Hiroshi Nishiura (@nishiurah) 2021年4月21日
国民が感染者を減らす必要性とオリンピックとの間をリンクして疑うことは、個々が接触を減らして協力すべき宣言の効果にとって好ましくないです。第3者的ではありますが、国内の予防接種状況や医療体制と世界の流行状況を見るとオリンピック2021開催が足枷で有り続けるのは健康的でないのでしょうね。
— Hiroshi Nishiura (@nishiurah) 2021年4月23日
「好ましくない」と書く西浦教授自身が明らかに「リンクして疑っている」わけだが、昨年以来五輪はずっとコロナ対策の足枷であり続けている。思い出せば、安倍晋三が昨年2月末に小中学校を休校にしたのも五輪の実施を決めることになっていた3月までに感染を抑えるためだったが、当時の従来型ウイルスは子どもには感染力が弱かったので、休校には感染抑止の効果がほとんどなく、昨年3月には感染急増の局面を迎えていた。それなのに休校の終了が人々の「緩み」を招いた時期が昨年3月下旬の3連休だった。しかもその時期には、安倍も小池百合子も五輪をどうするかが決まるまでは動かなかった。それが五輪の1年延期が決まった途端に小池が「コロナファイター」に豹変したのだった。そして今年3月の緊急事態宣言のタイミングは、なぜか聖火リレー開始の直前だった。これらをリンクして考えない方が不自然だ。
大阪の吉村洋文もひどい。維新の不正、もとい府政がこれまでにベッド数を削減しまくったり金を出さなくしたりなどの新自由主義施策を行ってきたことや、吉村自身が年初にテレビ番組で「医療の限界まで経済を回す」などとほざいていたことを棚に上げて、個人に罰則を科すべきだなどと言い出した。私は罰則ならまず誰よりも先に課されるべきは吉村自身ではないかと思うのだが。少なくともテレビ出演はいい加減に止めて仕事をすべきだろう。こんな人間を、大阪のメディアや住民は昨年の今頃「吉村寝ろ」などと甘やかしていたのだからどうしようもない。「吉村ネロ(暴君)」ならまだ話はわかるが。
昨年からの「新型コロナ日本三悪」は菅、小池、吉村だろう。昨年夏までは彼らに加えて安倍晋三がいたが、菅の醜態はあの「何とかのマスク」をかすませるほどだ。もちろんこの3人または4人だけのせいではないが、日本国内の新型コロナウイルス感染者による死亡者数は、間違いなく今月中に1万人に達する。
以下、NHKのデータ*2に基づく新規陽性者数と死亡者数のグラフを2枚示す。上が昨年3月以降の7日間移動平均の対数プロット、下が昨年10月以降の週間値のリニアプロット。
特に最初のグラフで、新規陽性者数及び死亡者数が増えたり減ったりを繰り返しながら、長期的にはどんどん増えていることに注目すべきだ。
私はよく思うのだが、これは抗がん剤の投与とは全く逆のパターンだ。がんの化学療法は人体に与える負担が大きいので、抗がん剤を投与する期間と投与を止める期間を繰り返す。がん細胞は初回の抗がん剤投与で大きく減るが、投与しない期間には再び増える。それが増えすぎないうちに第2回の抗がん剤を行い、最初の投与よりもがん細胞を少なくするのだ。がん細胞の増減も指数関数的に変化するので、グラフは対数プロットで表示される。そして何段階かの抗がん剤投与を経て寛解に至る。がん細胞の数が少なくなると、人体に備わった免疫力に負けて再発する可能性が下がり、それ以上の抗がん剤投与の必要がなくなる。
ところが日本政府の緊急事態宣言は、前記の抗がん剤投与とは逆に、宣言を解除して新規陽性者数が宣言前よりも多くなっても政府や自治体が何もしないから、最初より悪い状態から再び宣言を行う羽目になり、同じパターンを繰り返す。だから感染状況はどんどん悪くなっていく。結局頼りはワクチンだけになってしまったのが現在の日本の惨状だ。感染症対応としては典型的な悪い見本に違いない。
4月17日(土)から4月23日(金)までの1週間の新規陽性者数は32,047人(前週比25.3%増)、死亡者数は280人(同23.3%増)だった。先週は前週比の新規陽性者数と比べて28.4%の増加だったから、今週は増加率が先週より少しだけ下がった。前回の緊急事態宣言発出後もっとも新規陽性者が少なかった2/20(土)から2/26(金)の1週間と比較すると新規陽性者数は4.49倍になった。また、第3波でもっとも新規陽性者が多かった1/9(土)から1/15(金)の1週間と比較すると新規陽性者数は74.2%であり、第3波の4分の3に迫った。
過去3回の波と比較すると、対数プロットでの新規陽性者数の増え方は爆発的とはいえないがさりとて微増では全くない、かなりの勾配での増加が長く続いている。また東京都では変異株の比率が9割を超えたというが、変異株の半分近くはまだE484Kらしい*3。この変異株は感染力や毒性はN501Yより弱いとされるが、意外としぶといようだ。このE484Kの減衰が遅いことが、N501Yの立ち上がりが緩やかであるかのように錯覚させているのかもしれない。逆にいえば首都圏などではN501Yの脅威はこれからが本番という可能性がある。もしかしたらバッハが来日する頃にN501Yが東京でも本格的に猛威をふるうかもしれない。
週間の死亡者数を新規陽性者数で割った値は0.87%で、前週の0.89%をわずかに下回った。このところ毎回書く通り、この数値が低いうちはまだ感染の波の初期なので、現在は引き続き第4波の初期にあるとみられる。
*1:バッハとはドイツ語で「小川」という意味らしい。なお東京では荒川(放水路)の悪臭もものすごかったらしい。
*2:https://www3.nhk.or.jp/news/special/coronavirus/data-all/