嘘みたいな本当の話だが、大阪府と東京都は、まるでプロ野球の「伝統の一戦」の阪神タイガースと読売ジャイアンツみたいに、熾烈な戦いを演じている。現在は大阪府に勢いがあるところまでプロ野球と似ている。
きっかけは、下記の吉村洋文に対する批判ツイートだった。
大阪維新の会所属の中谷恭典(67)府議会議員が15000人ぶち抜いて入院出来た説明が先だろう?
— 通報 (@z_k20z) 2021年5月14日
茨城と兵庫の町長ワクチン先行接種問題に吉村大阪府知事「後から発覚すると権力を使った不正と思われる」 : スポーツ報知 https://t.co/lhayqEITiM
「スポーツ報知」なる事実上の読売の機関紙から記事を引用するのは癪なので省略するが、吉村は、大阪維新の会に属する不義、もとい府議がコロナに感染した時に病院にねじ込んで入院させた件を棚に上げて、茨城県城里町と兵庫県神河町の両町長が65歳未満なのに優先してワクチンの接種を受けたことを非難した。
このところ高橋洋一や嘉田由紀子など厚顔無恥な人たちの悪口ばかり書いているが、高橋や嘉田と比較しても吉村の恥知らずぶりは突出している。小池百合子や安倍晋三、菅義偉らとなら張り合えるかもしれないが。
その吉村と小池とは仲が悪く、この間などは二人で悪口の言い合いをしていたので、対消滅してくれと思ってしまった。同感の人は多かったに違いない。
そして、新型コロナによる死亡者数でも、大阪府は東京都を猛追し、今日にも首位を奪還しようとする勢いだ。
5月14日時点発表からコロナで亡くなった方の月別数大阪・東京比較をグラフに。同発表で大阪は33名,東京は2名の方が死亡。累計で大阪1901名,東京1940名に。5月は14日間累計で大阪445名に。月別で1月の347名をさらに越えて、なお増加中。今月一体何人の方が?大阪は医療棄民の惨状。 pic.twitter.com/R853UL0SZu
— Jun K (@JK42779153) 2021年5月14日
上記ツイートに貼り付けられたグラフを見ると、5月に入って大阪府が発表した死亡者数は実に445人で、東京都の49人を引き離している。通算でも東京都の1940人に対して大阪府は1901人と、2000人の大台をどちらが先に突破するか、現在の勢いだと2000人には大阪の方が先に到達しそうな勢いだ。余談だが、プロ野球の読売対阪神戦は凶、もとい今日の対戦で通算2000試合だそうだ*1。
もっとも東京都の方も、死亡者の過少申告というか報告が遅いのではないかとの疑念も持たれている。
東京の死者数のグラフは随分不自然だな。感染者が増えてるのに全く増えてない。いくら死者数は遅れて出てくるとはいえ、どういうことだ。 https://t.co/DHPdFbfvsM
— ふす (@fusu3) 2021年5月14日
私は不自然とまでは思わない。上記ツイートに引用された右下のグラフを見ると、東京都の死亡者数は既に底を打っており、今後急増すると思われるからだ。「Jun K」氏のツイートのグラフを参照すると、第3波の時も先に感染爆発を起こした大阪よりも遅れて、東京の死亡者数が急増した。いざ東京が増えると、人口が多いだけあって大阪を圧倒してしまう。このことは今年2月(東京490人、大阪191人)と3月(東京394人、大阪67人)に示された。ただ単に大阪府が第3波の感染の波に早く襲われただけの話だったのに、吉村洋文は第3波による死亡者が急減した時に第4波が立ち上がった頃、「大阪は感染を抑えすぎた」などと妄言を発して人々を唖然とさせたことは記憶に新しい。今回もおそらく大阪が東京を逆転するだろうが、その後遠くないうちに東京が大阪を再逆転して、再び大きく引き離すことは目に見えている。なお、東京都の新規感染者数は現在高止まりで、ピークアウトの可能性も言われているが、下記ツイートを参照する限り、東京都はピークアウトしないと私は予想している。
変異株PCRのデータが更新されたので陽性率の推移を追加しました。中部北陸以西は全体的に置き換り済みです。九州も鹿児島以外は80%以上が変異株になり、このことが最近の九州の惨状を説明しているのかもしれません。北海道も78%で高水準です。変異株の猛威に日本全国が征服されようとしています。 pic.twitter.com/UBv4s7osI2
— Noguchi Akio (@Derive_ip) 2021年5月12日
この表を見ると、N501Yがみごとに大阪と兵庫(特に兵庫。神戸市あたりか)を中心に全国に広がっている様子がわかる。
上記ツイートには表で示されているが、これを三春充希氏がやっているように日本地図で表示すると、よりわかりやすくなると思われる。
私が直ちに思い出したのは、かつて大阪の朝日放送が「探偵ナイトスクープ」で取り上げて有名になった柳田國男の「蝸牛考」、つまり方言周圏説だ。柳田によると、方言は京都を中心にして同心円状に広がった。たとえば「みゃあみゃあ」が特徴的な名古屋弁は、やはり「みゃあみゃあ」の訛がある東京式アクセントで話される備後(福山、尾道などの広島県東部)の言葉と共通点が多いといった具合だ。
N501Yは京都ではなく阪神(もちろんタイガースのことではない)を中心として広がったところが方言とは異なるが、明らかに阪神で第4波がピークアウトした現在、愛知県と広島県が、ほぼ同じタイミングで阪神のあとを追うかのように第4波の新規感染者数が第3波を大きく超え始めたこと*2など、方言の広がり方と実によく似ているのだ。
この感染の広がり方からいうと、関東はまだN501Yの感染が遅れており、本番はこれからだと思われる。だから私は東京が大阪や兵庫のすぐあとに都合良くピークアウトするとはどうしても思えないのだ。
N501Yの感染がもっとも遅れているのは東北であって、ことに岩手県では上記ツイートの表を参照すると、N501Yの陽性者はまだ3例しか確認されていない。岩手ではどのくらいの比率でN501Yの検査をしているのかは知らないが。これもまた、去年コロナ死の発生が全国でもっとも遅かった時と同じように、誰かさんのおかげとか言い出す「信者」がいるのだろうか。
ところで、阪神を中心とした広がり方から外れているのは北海道であって、北海道では阪神とは独立して*3札幌を中心としてN501Yの感染が広がっていったと思われる。この北海道に対する緊急事態宣言の発出が遅れに遅れたのは、おそらく東京五輪に向けての札幌ハーフマラソン開催の都合と思われるが、菅政権の大きな失策の一つといえるだろう。
*1:但し2000試合到達は阪神対中日の方が4日早かった。私は1982年4月にこの3球団が対戦するカードが1000試合に到達した時のことを覚えているが、やはり中日対阪神、読売対阪神、読売対中日(いずれのカードも主催球団を先に表記した)の順に到達した。今回も同じだ。なお1000回戦の試合結果は読売2勝、中日1勝1敗、阪神2敗だったが、阪神対中日の2000回戦の結果は引き分けだった(しかも無観客試合)。なお私は1000回戦の時には読売対阪神戦についてのみ日本テレビが大はしゃぎしていたのでこの件を知り、実は中日対阪神の方が先に1000回戦に達していたことはあとから知った。当時「週刊サンケイ」に連載されていた阿部牧郎(1933-2019)のプロ野球に関するコラム「偏見球談」に、中日ファンがぶんむくれていたと書かれていたが、ホームゲームの阪神戦が1000回戦になることを宣伝しなかった中日新聞や中日スポーツが悪いとしか言いようがない(笑)。
*2:偶然だが、プロ野球でも中日と広島は阪神に大きく引き離され、同じような成績で下位に沈んでいる。
*3:プロ野球でも北海道日本ハムファイターズは阪神タイガースとは別のリーグに属している。