kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

「気候変動にせよ、コロナの感染防止にせよ、日本は個人の努力で左右されると思っている節がある。しかし実際は、どちらも個人の努力ではなく、政策によって左右される課題。政策のみがポイント。」(平河エリ氏のツイートより)

 国内の新型コロナウイルス感染症第5波の新規陽性者増加率の再加速は、前の記事で推測したような先週の3連休による見かけ上のものではなく、本当に起きている可能性がある。

 8月1日に新規陽性者数の7日間移動平均値が前週比125%増加(2.25倍)だったのが、前週の3連休の効果が認められる8月16日の19.3%増加を除外しても、8月11日から15日までは21〜27%増加だったのが、8月17日以降の3日間で30.6%, 36.6%, 37.8%と跳ね上がっているのだ。

 もちろん7日間移動平均値だから8月9日の3連休最終日(月曜日)の影響が残ってはいるのだが、連休明けの日々の陽性者数によってその影響がキャンセルされはじめても良いはずなのにそうなっていない。これは感染が再加速している恐れが強いというほかない。なお今日はグラフは示さない。明日が土曜日で、毎週グラフを公開する日になっているからだ。

 よく感染は指数関数的に増加するといわれる。実際、基本的にはその通りだし、特に第4波では感染拡大期に片対数グラフの傾きが直線的で、文字通り絵に描いた(ような)指数関数的増加を示していた。

 しかし、第3波では指数関数からの外れがかなりあった。そして今回の第5波では前週比の陽性者数の増加率が非常に大きく変動している。増加率が極大値をとったのは8月1日、つまり7月29日を中心とした7日間だったが、実際にはその10日から2週間前の感染状況を反映していると見られる。学校の夏休みが始まり、東京五輪の開催強行が確定的になった頃だ。政府(菅義偉)や東京都(小池百合子)が五輪開催強行の姿勢を明確にしたことが人々の行動パターンに大きな影響を与え、それが感染拡大に直結したとみられる。菅義偉は「人流が抑制されている」などとほざいているが、五輪会場の周りに集まった人たちの数は、開会式が行われた7月23日よりも閉会式が行われた8月8日の方がずっと多かったと報じられた。この人流の増加や、第5波が首都圏から日本全体へと広がった影響が相俟って、7月29日をピークとする新規陽性者増加率の急増に続いて、今回の新規陽性者数の再加速を招いた可能性がきわめて高い。

 なお第3波で新規陽性者数の増加率が大きく変動した最大の要因は菅義偉政権が今回の東京五輪と同様に強行した「GoToキャンペーン」だ。ことに、キャンペーンの中断を決めた時に菅政権が猶予期間を設けたために、駆け込みでキャンペーンを利用した人たちが増えたことが大失敗だった。これが今年年始の陽性者数の急拡大を招き、菅義偉は大晦日の緊急記者会見に追い込まれた。この第3波ではGoToキャンペーンの停止と緊急事態宣言発出が陽性者数の劇的な減少をもたらした。この時のウイルスは従来型だったので、緊急事態宣言が昨年4〜5月ほどではなかったとはいえ大きな効果を発揮したのだ。しかし、新規陽性者数が少し減少しただけですぐに何もやらなくなってさらに大きな感染の波を招くというのが、安倍政権時代から現在の菅政権までずっと続く自公政権の悪しき行動様式だ。

 新型コロナウイルス感染症に与える政策の影響を、ツイートを使って短い言葉で述べたのが平河エリ氏だ。

 

 

 これは至言だ。ことに「政策のみがポイント」と言い切っているところが良い。本当にその通りだと、強く共感した。一方、上記ツイートに対する下記の反応は全くいただけない。

 

 

 これだと、「生活者」が動けば「政策」がそれに反応してくれる、そんな状況を期待しているかに読める。しかし間違ってもそんなことにはならない。このことは、昨年4月に政権が「8割削減」を強く打ち出した時、企業や役所などが週1日出勤で残りを在宅勤務にすることを決定し、勤め人はそれに従うほかなかったことからも明白だ。それがなし崩しにされているのが現状だ。安倍・菅政権は緊急事態宣言が効くとわかれば「いざとなったら緊急事態宣言を出せば良い」と考え、ワクチンの有効性が確認されれば「ワクチン一本化打法」に走る。そしてひたすら「経済を回す」ことばかりを考える。「政策、企業、生活者、全部が足並み揃える未来」など、小池百合子がコロナ対策に必死であってほしいと念じる某都会保守氏と同様、空しい願望でしかない。政府や都知事は人々に強制力を行使できる権力者であって、彼らは人々の願望などには決して動かされない。政策には強制力があることが最大のポイントだ。世界には、デルタ株の陽性者が1人出ただけで全土のロックダウンに踏み切ったニュージーランドのような国もある。

 

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 しかしニュージーランドの全国民がアーダーン首相を支持しているわけではない。現に同国は、国内の強い反対を押し切って東京五輪に選手団を送り込んだ。これまでニュージーランドでコロナの感染拡大を抑え込んできたのは「政策のみがポイント」だった。

 平河氏のツイートに戻ると、気候変動を引き合いに出していることも良い。気候変動もコロナも両方とも、同じ政策要因が引き起こしたものだよなあというのは、ここ数日私が強く感じていたことそのものだった*1

 そして、西浦博教授の奮闘が目立つ「理論疫学」あるいは「数理疫学」と呼ばれる分野が、その名前とは裏腹に、理系と文系の境界分野というより、むしろ文系に近い学問分野なんだよなあ、ともつくづく思うのだ*2。いうまでもなく、以上述べたように感染状況は政策をはじめとするヒューマン・ファクターに大きく左右されるからだ。統計学が人文・社会科学の分野で広く用いられることも忘れてはならない。現代においては、理系だろうが文系だろうが数学と無縁で済まされる分野はそう多くない。そんな時に、専門知を全く顧慮することなく、自らの信念、いやそれどころかおのれの願望で政治を行う菅義偉安倍晋三のような人間はまさしく百害あって一利なしであって、直ちに政界から追放しなければならない。

 今後の自民党総裁選や秋の衆議院選挙、それに来年夏の参議院選挙などは、今後の日本を大きく左右することになる。

*1:その原因としてさらに「土台」を考えなければならないというのがマルクス系の人たちの主張だろうし、それには理があると私も思うけれども、本記事ではそこには突っ込まない。

*2:私は生物学系の人たちがしばしば西浦教授ら数理疫学の研究者たちを「統計屋」などと半ば見下したようなツイートを発信しているのを目撃して、「純粋理系」(?)の人たちの妙な優越感には困ったものだよなあと思った。専門馬鹿とはああいう人たちのことをいうのだろう。