MLBのワールドシリーズではアトランタ・ブレーブスがヒューストン・アストロズを4勝2敗で破って優勝を決めた。
アストロズは昔から嫌いだったが、「サイン盗み」疑惑でますます嫌いになった。だからアストロズの敗北には「ざまあ」と思ったが、ブレーブスにも大いに引っ掛かるところがあった。「ブレーブス」というのは、かつて阪急球団も使っていたニックネームだが、阪急はどうだったか知らないけれどもあちらでは原住民(「インディアン」)の勇者を指す。そして、7回裏のラッキーセブンだったかには勇者が「ウォー、ウォー」と叫びながら斧を振り下ろす「トマホーク・チョップ」という応援スタイルがある。ヤクルトファンなら傘(これも凶器になり得るが)を振り回すところを、手刀を振り下ろすわけだ。
私がこの応援スタイルを知って「何だこれは。アメリカ先住民に対する差別じゃないか」と思ったのは、確か1996年か97年だったと思う。ブレーブスはそれに先立つ1995年にワールドシリーズを制していた。グレグ・マダックスという大エースを擁しての優勝だったが、「世界一」を争った相手チームのクリーヴランド・インディアンズもその名前通りの先住民差別球団だった。
それから四半世紀以上が経ち、クリーヴランドは来季から「ガーディアンズ」に改められることになったが、ブレーブスは来年も「トマホーク・チョップ」を改めるつもりはないようだ。下記は日刊スポーツへのリンク。
ワールドシリーズがアトランタに移りトマホークチョップ論争勃発
[2021年10月30日11時40分]
<ワールドシリーズ:ブレーブス-アストロズ>◇29日(日本時間30日)◇第3戦◇トゥルーイストパーク
ワールドシリーズがアトランタに舞台を移し、ブレーブス地元ファンの名物応援スタイルである「トマホークチョップ」が全米から注目を集め、論争を巻き起こしている。
トマホークチョップはネーティブアメリカンを象徴し、なたを振るような動作で片手を上下する動きによって表現される応援スタイル。1991年ころに始まったという説があり、近年ではネーティブアメリカンに対して差別的であり、やめるべきとの声も上がっていた。
アトランタで行われているワールドシリーズでは、このトマホークチョップ応援が従来通り行われている。そのタイミングに合わせるように、米メディアの間で批判が再燃。CNN電子版は「ブレーブスの応援スタイルはレイシストであり、非人道的である」と断じ、スポーツ・イラストレイテッド電子版は「MLBはなぜ、いまだにアトランタでチーム公認の差別を続けさせているのか」と批判した。USAトゥデー紙のベテラン野球記者ボブ・ナイチンゲール氏は「私はトマホークチョップを止めることもアトランタの球団名を変えることもできないが、無視することはできる。球団名が侮辱的だと感じ、記事に球団名を使わないようにしている」と書いた。
MLBでは、インディアンスが来季から球団名をガーディアンズに変更すると発表するなど配慮の動きが出ているが、ブレーブスは球団名もトマホークチョップも継続の方針。マンフレッド・コミッショナーはこのワールドシリーズ期間中「ブレーブスという球団名は、ネーティブアメリカンに配慮し変更された他のチーム名とは違う。全米には30球団があり、地域差がある。ブレーブスは、地元のネーティブアメリカンのコミュニティーとよく連携し、サポートを受けている」と擁護する発言をしている。
(日刊スポーツより)
出典:https://www.nikkansports.com/baseball/mlb/photonews/photonews_nsInc_202110300000265-0.html
あの「トマホーク・チョップ」が1991年頃に始まったらしいことには驚いた。そんなに古いことではない。90年代にまだ平気でそんなことをやり始めることができたのかというネガティブな驚きだ。
「アトランタの球団名を使わないようにしている」というのは、おそらく "Braves" を自らNGワードと決めてこれを使わず、"Atlanta" とのみ表記しているという意味だろう。骨のある記者もいるものだと感心した。
私も読売球団の日本語の愛称を弊ブログの禁句にしているほか、ある国政政党も党名に冠している現元号(漢字・仮名を問わない)と、安倍晋三の経済政策を表す片仮名6文字の3つを「ブログ三大禁句」にしているが、個人ブログで細々とやっていることに過ぎず、引用文中にはこれらの禁句が出てくる。また読売球団の愛称でも「ジャイアンツ」は許容している。あの漢字2文字が「軍」を伴って右翼的に使われたり「常勝球団」なる言葉とともに全体主義的に用いられてきたことからNGワードにしている次第だ。
ところでアトランタ球団を取り上げようと思ったのは、あのアメリカ前大統領・トランプがワールドシリーズ第4戦の観戦のためにスタジアムに現れ、トマホーク・チョップをやったらしいことを知ったからだ。10月31日の記事だから、衆院選の投開票日に報じられた。下記はAFP配信を時事通信が翻訳した記事。
トランプ氏、先住民差別と物議の応援 大リーグWS観戦で
10/31(日) 13:04配信
【AFP=時事】ドナルド・トランプ(Donald Trump)前米大統領は30日、ジョージア州アトランタ(Atlanta)で行われた大リーグ(MLB)のワールドシリーズ第4戦を観戦し、米先住民に差別的だとして物議を醸している「トマホークチョップ」という応援を行った。
「トマホークチョップ」はアトランタ・ブレーブス(Atlanta Braves)の応援スタイルで、先住民側は文化や伝統に対する人種差別だとして強く非難している。
トランプ氏はブレーブス対ヒューストン・アストロズ(Houston Astros)の試合前、ホームのブレーブスファンと一緒に右腕でおのを振り下ろす動きをした。同席した妻のメラニア(Melania Trump)氏も一緒に行った。
MLBでは今年、米先住民に対する差別が問題となっており、クリーブランド・インディアンス(Cleveland Indians)も長年にわたり抗議を受けてきたチーム名を取りやめ、来季からはクリーブランド・ガーディアンズ(Cleveland Guardians)に改称することを決めている。【翻訳編集】 AFPBB News
出典:https://news.yahoo.co.jp/articles/35546f51778cb0bf3c19e1e28ec8d3e974828da7
トランプがなぜアトランタのスタジアムを訪れたのかは知らない。トランプは招待されたと主張しているが、MLBはこれを否定しているらしい。以下日刊スポーツより。
トランプ前大統領がWS第4戦観戦 招待主張もMLB否定「政治的意図ない」
[2021年10月31日9時20分]
<ワールドシリーズ:ブレーブス-アストロズ>◇30日(日本時間31日)◇第4戦◇トゥルーイストパーク
ドナルド・トランプ前米大統領(75)が、ワールドシリーズ第4戦をスイート席から観戦する。
トランプ氏は事前に文書で「今夜のアトランタでのワールドシリーズ観戦を楽しみにしている。MLBのマンフレッド・コミッショナーと偉大なヤンキースのランディ・レバイン(球団社長)には、招待して頂いたことを感謝する。メラニア(夫人)と私は、素晴らしい2球団による試合を観戦しながら過ごす素晴らしい夜を楽しみにしている」と声明を発表した。
ただしMLBは、米ヤフースポーツの取材に対し、トランプ氏を招待したことを否定し、同氏から観戦の申し込みがあったと説明。ブレーブスのテリー・マクガークCEOは「MLBは、トランプ氏から試合を観戦したいと連絡を受け驚いていた。我々に政治的な意図はない。誰でもウエルカムだし、彼が我々の試合を観戦したいと望んだのは、素晴らしいこと」とコメントしている。
(日刊スポーツより)
出典:https://www.nikkansports.com/baseball/mlb/news/202110310000135.html
何らかの政治的意図はあった可能性は高いだろう。しかも球場で「トマホーク・チョップ」をやるとは相変わらずだ。
こんなトランプが2016年の大統領選に勝った時に狂喜乱舞したのが植草一秀だったことや、その植草を山本太郎が経済政策のブレーンにしているとの噂があったことを思い出しておきたい。