kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

鈴木エイト「自民党安倍政権と統一教会」を読む(第1回)安倍晋三は2006年には統一教会との関係にさほど深入りしていなかったが、2012年の文鮮明の死と自らの政権復帰を機に本格的にズブズブの関係になった

 故安倍晋三と旧統一教会*1との関係は、これまで安倍は単に母方の祖父・岸信介や父・安倍晋太郎から引き継いで「お付き合い」程度の関係だったと「思い込んでいた」が、それは間違っていた。弊ブログが安倍と統一教会との関係を書き立てていた2006年頃までは確かにその程度だったが、その後2012年に文鮮明が死んで自らが政権に復帰したあと、安倍は本格的に統一教会とズブズブの関係になっていたのだった。時期的には山上徹也の母親が統一教会に巨額の献金をした結果破産して、山上が大学中退に追い込まれたと思われる時期(2000年代初め頃)とはずれているが、少なくとも報道ステーション大越健介が「勝手な思い込み」だの「妄想」だのと切り捨てるのはフェイク・ニュース以外の何物でもない。安倍銃殺事件のあと、報棄てを再び少し見るようになったが、この番組の堕落ぶりは信じ難いくらいであって、安倍の神格化に大きく寄与している。まだ局自体があまり番組に力を入れていないことが看て取れるnews23の方がずっとマシだ。

 2011年頃から安倍と統一教会の関係をずっと追ってきたのが鈴木エイト氏だ。私は氏のお名前も存じ上げなかったのだからあまりにも迂闊だった。2006年頃には統一教会との関係にあまり積極的ではなかった安倍が、文鮮明の死と政権奪回後に統一教会と本格的にズブズブの関係になったことを、2019年に公開された下記記事に書いていた。「ハーバー・ビジネス・オンライン」に連載されたうちの第2回である。

 

web.archive.org

 

 以下引用する。

 

 前稿に記した統一教会と安倍政権との裏取引疑惑には重要なポイントがある。

 

 それは、安倍晋三自身が教団サイドと緊密な関係になったのは「いつからだったのか」という点だ。というのも、1968年に同教団系の政治組織・国際勝共連合の創設を後ろ盾して以降、教団と友好関係にあった祖父の岸信介や、教会員を自民党国会議員の秘書として紹介し各議員を教団のセミナーへ勧誘していたとされる父親の安倍晋太郎とは違って、安倍晋三にはそれまで統一教会とは一定の距離を置いていた形跡があるからだ。

 

UPF合同結婚式に祝電

 

 安倍晋三統一教会との直接の関係が最初に浮かび上がったのは2006年のことだ。

 

 同年5月、統一教会政治団体・天宙平和連合(UPF)が福岡で開催した合同結婚式併催イベント『祖国郷土還元日本大会』に、当時官房長官だった安倍晋三と元法務大臣衆議院憲法審査会会長の保岡興治(2017年引退)が祝電を贈ったことが発覚した。

 

 保岡については、妻が霊感商法商品の壺を購入し熱心に統一教会の集会に出席していたと言われており、2000年には法務大臣の秘書官として統一教会信者を登用したと指摘されている。弁護士でもある保岡は、統一教会顧問弁護士を務めた稲見友之と『敬天総合法律事務所』を共同運営している。

 

 しかし、保岡とは異なり、この時期の安倍晋三統一教会に対して現在ほどの密接な関係を構築していなかった形跡がある。

 

2010年参院選「有田退治」文書

 

 2010年の参院選前にも教団の政治組織・国際勝共連合の内部通達とされる文書が漏洩した。

 

 そこにはジャーナリストから政治家に転身し、継続して同教団の批判を続ける有田芳生参議院議員を名指しで落選させるよう指示が出されており「安倍先生、山谷先生なくして我々のみことばの成就はありません」との文言があった。(ただし、勝共連合は文書自体を「捏造されたもの」と主張している)

 

 当該文書に名指しで「有田対策ですが、くれぐれも宜しくお願いします。相対的に有田退治になります」と書かれた有田は、安倍晋三による祝電について当時、ブログにこう記している。

 

「わたしは安倍晋三氏と統一教会問題で会話を交わしたことがある。安倍氏は言った。『北朝鮮統一教会の関係はどうなっていますか』わたしは北朝鮮金正日体制と統一教会とが深い関係にあることを伝えた。安倍氏は『そうですよね』とうなずいた。『実は』と彼は統一教会がさかんに接触し、面会を求めてくると語った。『わたしは会わないですよ』と安倍氏は言った。北朝鮮に強硬な立場を取り、しかも有力な総裁候補である安倍氏が、自らの判断であえてこの時期に統一教会系の集会に祝電を打つことはないだろう」(出典:有田芳生の「情報の裏を読む」

 

 当時の報道を見ても「私人の立場で地元事務所から『官房長官』の肩書で祝電を送ったとの報告を受けている。誤解を招きかねない対応であるので、担当者によく注意した」との安倍のコメントを共同通信が伝えている。

 

 その安倍が7年の時を経て、前回書いたように、なぜ教団トップに会って組織票支援を「じきじきに」依頼するまでに変節していったのか。

 

出典:https://web.archive.org/web/20190205091247/https://hbol.jp/183496

 

 上位引用文中からリンクされている有田芳生のコラムは私も2006年当時に読み、有田芳生はなぜ安倍晋三側に立って「火消し」に走るのかと腹を立てたものだ。従って2006年当時の安倍と統一教会との関係が、果たして有田氏が書いた下記コラムの内容程度のものだったかどうかについても検証が必要ではないかと思うが、安倍殺しの犯人・山上徹也を激怒させたのは2019年に安倍が旧統一教会に送ったビデオメッセージ(ビデオレター)であり、それは「事務所が(付き合いで)送った祝電」程度のものとは全く異なる本格的な安倍自身の関与だ。従って2006年当時の安倍と統一教会との関係がどの程度だったかについてはここでは深入りせず、以下に有田氏のコラムを引用するにとどめる。

 

安倍晋三氏に接近する統一教会

 安倍晋三官房長官などが統一教会系の「天宙平和連合(UPF)祖国郷土還元日本大会」に祝電を送ったことが話題となっている。総裁選前に、これを政治問題化させようという動きもあるが、過大評価である。安倍氏からの祝電を報じたのは韓国の「世界日報」5月14日付。統一教会系の新聞である。大会は5月後半に国内12か所で開かれており、13日に福岡で行われた集会で安倍氏の祝電が披露された。この「天宙平和連合祖国郷土還元日本大会」は、統一教会文鮮明教祖と妻の韓鶴子が共同総裁で、合同結婚式の儀式も行われている。霊感商法を行い、最高裁でも違法と認定された合同結婚式を催す統一教会は、反社会的集団だ。

 その集会で本人が挨拶したのなら国会でも問題となるだろう。しかし、祝電となると問題はまた違う。国会議員の地元事務所が依頼を受けたならば、祝電を送るかどうかはそこで判断するのが通例だ。結婚式や葬式への電報とほとんど同じ水準の判断だろう。祝電を送った安岡興治元法相の事務所が「出席依頼があったので電報を送った」というレベルのことだ。さらにいえば自分たちの集会に権威を付けたいときには勝手に政治家を装って祝電を送ることさえ行うのが統一教会である。ましてやもし仮に統一教会信者が私設秘書として働いていれば、祝電を送るぐらいは簡単なこと。

 わたしは安倍晋三氏と統一教会問題で会話を交わしたことがある。安倍氏は言った。「北朝鮮統一教会の関係はどうなっていますか」。わたしは北朝鮮金正日体制と統一教会とが深い関係にあることを伝えた。安倍氏は「そうですよね」とうなずいた。「実は」と彼は統一教会がさかんに接触し、面会を求めてくると語った。「わたしは会わないですよ」と安倍氏は言った。北朝鮮に強硬な立場を取り、しかも有力な総裁候補である安倍氏が、自らの判断であえてこの時期に統一教会系の集会に祝電を打つことはないだろう。

出典:https://web.archive.org/web/20190517005847/http://www.the-journal.jp/contents/arita/2006/06/post_10.html

 

 上記有田氏のコラムは、現在安倍晋三の擁護者がしばしば持ち出し、「安倍さんは統一教会とは『お付き合い』程度の関係だった」と主張する根拠になっている。しかしそれは2006年にはそれほど深い関係ではなかった*2との主張を補強する文献でしかない。その後安倍は統一教会と本当にズブズブの関係になったことを、鈴木エイト氏は克明に記録している。それが山上を激怒させた2019年のビデオメッセージにつながった。安倍批判側の人間は、右派が前記有田氏の2006年のコラムを持ち出して反論してきたら、それにきっちり反論できなければならない。その材料を鈴木エイト氏が豊富に提供してくれている。

 鈴木氏の記事には紹介したいものが多い。今回取り上げたのも、氏が「ハーバー・ビジネス・オンライン」に連載した第2回のうち最初の3分の1でしかない。しかし時間がないので別の記事に回す。

 それにしても、第2次安倍内閣成立後に安倍と統一教会との関係が書かれた記事に注意を全然払わず、「ああ、安倍と統一教会との関係の件か」と流してしまっていたことは大いなる痛恨事だった。安倍に対する批判をずっと持っていたはずの私だったが、2012年以降の反動の流れに呑み込まれていたと自己批判するしかない。

*1:統一協会」とも。弊ブログでは従来主に「統一協会」と表記してきたが、原則として一般的に使用される「統一教会」を使用することに改めた。

*2:これは本当にその通りだったかもしれない。