kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

「村神様」村上宗隆が「渡辺をマウンド上にしゃがみ込ませた」ブライアント再来を思わせる3連発で阪神の連勝を止めた

 野球で弱いチームは「勝ち味が遅い」特徴がある。もとは相撲で言う言葉らしく、得意な体勢になるのが遅いためにそれ以前に攻め込まれて負けることが多い力士を指すとのことだ。

 オールスター明けの阪神との3連戦の2戦目で、ヤクルトの先発投手・小澤(こざわ)が序盤で好投し、打席でも無死一、二塁で送りバントを決めながら先制できず、相手打線が二回り目に入った4回に小澤が打ち込まれて5点を失った。5回に救援投手がさらに2点を失って0対7となった場面で、「村神様」こと村上宗隆の34号2ランが出たのだった。結局ヤクルトは3対7で負けたが、「勝ち味が遅い」典型例だよなあと思った。

 阪神はヤクルトとは対照的だった。ヤクルトは3連戦の初戦で手も足も出ない完敗を喫していたが、初回に阪神打線がヤクルト先発の小川から3点を奪った速攻が効いた。それは2週間前の中日戦で阪神が柳に勝った時と同じパターンで、先頭打者からの連打を中軸が返したあと、重盗を決めて3点目をもぎ取った*1。中日戦では2回から7回までは柳に抑え込まれたが、両軍の初回の得点だけで3対1で勝った。ヤクルトの小川は柳ほどの力はないので、4回に追加点を与えて降板した。今や中日よりも弱くなったか、先が思いやられるなあと思った。とはいえ小川もヤクルトではエース格であり(長期離脱している奥川恭伸はコロナにまでやられている)、柳や小川から初回に3得点できる阪神が絶好調であることは間違いない。

 そして迎えた3戦目。先発の原樹理は通算成績で大きく負け越しているものの、阪神戦には通算5勝4敗と勝ち越しており、甲子園も苦にしていない。その相性を頼りに、なんとか相手先発のガンケルから先取点が欲しいところだと思っていたが、原も小澤同様相手打線の二回り目で連打を浴びて2点を先制され、5回途中に降板した。打線はガンケルを打てず、6回まで散発の3安打。相変わらず勝ち味が遅いなあという印象は、7回に村上が35号を放っても変わらなかった。あともう1回打席が回ってくるであろう村上が打つ以外勝ち目はないと思わないわけにはいかなかったが、村上は本当に同点本塁打を打った。それでもサヨナラ負けする可能性の方がまだ高いよなあと思ってそのまま不貞寝してしまったのだが、朝起きてスマホを見ると、延長11回に村上が3連発となる決勝2ランを放っていた。記事には投手がしゃがみ込んでいる写真が載っていたが、これを見て思い出したのが、1989年に近鉄のラルフ・ブライアントが西武との首位攻防戦で放った3連発だった。最初の2発は郭泰源から打ち、2発目は同点満塁ホームランだった。3発目はのち西武の監督になった渡辺久信から打ったもので、森監督はブライアントを打席に迎えたところで、2日前に先発して敗戦投手になった渡辺を救援に送り込んだ。ブライアントに滅法強かったからだ。しかしブライアントはその渡辺から3発目を打ち、打たれた渡辺はマウンド上でしゃがみ込んでしまった。

 実はスマホで見た記事に載っていた、村上に打たれてしゃがみ込んだ投手も渡辺(雄大*2)だった。彼は延長11回に決勝弾を打たれた投手ではなく、7回に村上を抑えるためだけに出てきた左のワンポイントリリーフで、それまで村上には1本の安打も許さず、3三振を奪っていたとのこと。阪神の矢野監督は、より確実に村上を打ち取るつもりでそれまで72球しか投げていなかったガンケルを下ろして渡辺を投入したのに打たれた*3。それで渡辺がマウンド上でしゃがみ込んでしまったのだった。

 他にも、2発目が同点ホームランだったことと3発目が決勝ホームランだったこと、一人で全打点を叩き出したこと、敵地での試合だったことがブライアントと共通している。

 球宴明けの初戦で阪神がヤクルトに圧勝した翌朝、東京でもデイリースポーツのみならずニッカン、スポニチ、サンスポの各紙が阪神を1面トップにもってきた紙面を作り、「阪神奇跡の逆転優勝」モードで売ろうとしていた。ほとんどその思惑通りになりそうだった3連戦最後の試合を「村神様」が一人で止めた。2年連続MVPを予感させる。

*1:中日戦では走者一、三塁からの重盗が3点目となり、ヤクルト戦では走者一、二塁からの重盗のあと3点目をとった。

*2:中日の大野雄大を連想させるが、大野は「ゆうだい」と読むのに対し、渡辺は「ゆうた」と読むらしい。以前中日に「雄太」と書いて「ゆうだい」と読ませる投手がいたことを思いだしたが、彼の本名は「川井進」だった。私は「なんだ、この『ゆうた』という投手は、と思ったら2009年に11連勝後5連敗をした川井だったのでひそかに彼に「ニセゆうだい」というあだ名をつけていた。阪神の渡辺雄大は「なべじい」と呼ばれる苦労人で、今年4月の読売戦でプロ入り初勝利を挙げた。

*3:ガンケルも村上が大の苦手としている投手なので、結果的には流れを変えた矢野の継投ミスだった。