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古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

山本由伸の故障は投球過多の代償か 「年間180イニング超」で故障者続出のデータも(NEWSポストセブン)

 プロ野球日本シリーズは、第2戦の内山と第3戦の山田のそれぞれの3ランが効いてヤクルトが2勝1引き分けとリードしたあと、オリックスが連勝して2勝2敗1引き分けになった。ヤクルトは第5戦でマクガフが昨年の第1戦を思い出させる炎上で、シリーズ通算3敗となり、これは救援投手の最多敗戦の新記録らしい。第3〜5戦は平日だったのでスポーツニュースで見ただけだが、吉田正尚サヨナラ本塁打のスイングには恐れ入った。

 このシリーズの第1戦で4回4失点と打ち込まれ、5回に異状を訴えて降板したオリックスの山本由伸は、やはり故障だった。このシリーズでの登板はもうないと言われている。シリーズ開幕前に、どっかの記事の脚注で今年は投手力が違いすぎて勝負にならずヤクルトは完敗するだろうと書いたが、それはもちろん山本由伸がいるからだ。これまでの5試合は、その山本の故障でやっと五分になった感がある。ヤクルトは1年通して奥川恭伸が使えなかったことを考えると、昨年の第1戦の先発投手を両チームとも欠くことになった。これで初めて条件が五分になった。やはり山本の故障がなければ今シリーズはオリックスの圧勝だったに違いない。

 ところで、今回故障した山本について、投球過多だったのではないかとの指摘がある。

 以下、NEWSポストセブンの記事から引用する。

 

山本由伸の故障は投球過多の代償か 「年間180イニング超」で故障者続出のデータも

10/28(金) 19:15配信

 

 オリックス山本由伸の故障は2年連続で200イニング近くを投げた代償なのか──。昨年に続いて沢村賞を受賞した山本が日本シリーズ第1戦で左脇腹を痛め、4回途中で降板した。その後の経過も思わしくなく、今シリーズの登板は絶望的と見られている。

 

中嶋聡監督は『行くかもしれへんで?』と登板の可能性を匂わせていますが、あくまでカモフラージュでしょう。もし本当に投げさせたら、故障が悪化し、選手生命に関わってくるかもしれない。無理はさせないと思います」(プロ野球担当記者。以下同)

 

 山本は昨年193回、今年193.2回を投げており、クライマックスシリーズ日本シリーズにも登板した。疲労は確実に蓄積していたと思われる。過去10年、パ・リーグで投球回数180以上を記録したのはオリックスの金子千尋楽天田中将大楽天則本昂大、ロッテの涌井秀章ソフトバンク武田翔太、西武の菊池雄星ソフトバンクの千賀滉大、オリックスの山本由伸と8人いる(球団は当時)。実は、彼らの多くが2年以内にケガをしているのだ。

 

「投手に故障は付きものですが、データとして突きつけられると考えさせられます。2016年に183回投げた武田は翌年に右肩の違和感を訴えた。3月のWBCに選ばれ、急な調整をしなければならない影響もあったでしょう。この年以降、2桁勝利から遠ざかっています。

 

 2017年に187.2回投げた菊池雄星は2018年に左肩の張りを訴えている。それでも14勝して翌年にメジャーに行きましたが、期待されたほどの成績は残せていない。千賀は180.1回を投げた2019年オフに右肩、翌年1月に右ふくらはぎに違和感を覚えています。金子は2013年に223.1回、翌年に191回とフル回転しましたが、オフに右ヒジの骨棘の除去手術をしてメジャー行きを断念しています。その後は以前のような投球ができなくなりました。

 

 2013年に212回を投げて24勝0敗1セーブで楽天を日本一に導き、ヤンキース入りした田中も翌年7月に右ヒジの違和感を訴えています。則本は2014年の202回から始まって、5年連続180回以上放っており、現代では驚異的なスタミナを誇っていました。しかし、2019年の春に右ヒジ関節鏡視下のクリーニング手術を行い、その年から2年連続5勝に終わっています。涌井は2年連続188.2回を投げた翌年の7月に右太もも裏を吊ったような状態になって途中降板しましたが、その後もローテーションを守り続けた。ただ、その年は5勝11敗と奮いませんでした。則本や涌井のタフネスぶりはあくまで例外の範疇です」

 

「140キロで速球」昭和のプロ野球との違い

 

 昭和の頃は数年連続で200イニング以上放る投手も珍しくなかった。なぜ、現代の投手は故障に見舞われてしまうのか。

 

「当時は140キロを投げれば速球と言われた。今は150キロを超えるピッチャーがたくさんいる。その分、体に負担が掛かっているという見方はできるでしょう。160キロを投げる佐々木朗希が過剰に思われるほど球数制限をしながら登板しているのも、それが理由です。

 

 山本由伸も最速159キロのボールを放りますし、2年連続で優勝のかかった厳しい試合で投げた。それも相当な負荷があったでしょう。また、パ・リーグ指名打者制のため、気楽に投げられる回がほとんどなく、負担が大きい。セ・リーグの場合、打撃力の弱いキャッチャーとピッチャーが打席に入る回は力をセーブして投げられることもありますからね」

 

 セ・リーグでは最近4年間で180回以上放った投手はいない。阪神メッセンジャーが2012年から5年連続、巨人の菅野智之が2016年から3年連続で180回以上を投げていたが、いずれも故障で記録が止まっている。

 

「山本の場合、昨年は11月末に日本シリーズが終わり、オフの期間も短かった。それでも中嶋監督が細心の注意を払って管理して、山本は2年連続で『投手5冠王』に輝いた。立派な偉業を達成しましたが、遂に故障してしまった。この例を見ると、来年以降、球界全体の完投数はますます減るでしょう。今後は200近い投球回数を放るピッチャーは出てこなくなるかもしれません」

 

 球界のエースの故障は、野球界全体の投手起用にも影響を及ぼすかもしれない。

 

(NEWSポストセブンより)

 

出典:https://news.yahoo.co.jp/articles/6912a6f35c30df551648a6a2ac15117ffd6f254a

 

 こういう記事に対して、すぐに「いや、昔のピッチャーは‥‥」と言い出す向きがあるが、昔と今とで違うのは、投手の球速に加えて夏に野外球場で行われる試合での異様な蒸し暑さがある。オリックスの本拠地はドーム球場だし、パ・リーグではソフトバンク日本ハムの本拠地もドームだが、西武はドームとはいっても外部と自然換気されているし、ロッテと楽天の本拠地は屋外だ。

 レギュラーシーズン中はライバルのことなので指摘するのを控えていたが、阪神のエース・青柳晃洋が夏場に調子を崩したのは、8月2日に東京ドームでの読売戦で12勝を挙げたあとの7試合中6試合が屋外球場での試合だった(1試合だけ京セラドーム)ことも関係しているのではないか。それでなくても矢野監督は先発投手に投げさせる投球数が多く、青柳も6月のロッテ戦で133球を投げていた*1ので、あれでは夏場持たないのではないかと思っていたところに、8月のローテの当たりが悪かったので、青柳の勢いは止まるだろうなあと予想していたらその通りになった。なお、岡田彰布も以前の阪神監督時代には投手を酷使する傾向があったので、来年以降にもそれを繰り返すようなら阪神の「アレ」の実現は限りなく難しいだろう。

 いや、ヤクルトでもかつての野村克也は矢野や岡田なんかよりずっとひどくて、岡林洋一伊藤智仁も野村によって選手生命を大幅に縮められた。

 私は現時点で既に、高津臣吾野村克也を上回る名監督になったと(今シリーズの帰趨がどうなるかに関わらず)確信しているが、高津が野村を凌駕しているのはひとえに無理な投手起用をしないところにある。だから来年は、かつて酷使に当たる投手起用をしていた岡田彰布率いる阪神(と読売)にだけは絶対に負けてもらいたくないと思っている。

 野村とともに高津監督の対極ともいうべきは、2013年の日本シリーズ第6戦で6失点した田中将大に160球完投を強い、翌日の第7戦に救援させた星野仙一だ。星野は中日監督時代の1998年のヤクルト戦で、野口茂樹に延長12回203球完投を強いたことがあり、これ以降1試合で200球以上投げた投手はいない。しかも野口はこの試合で敗戦投手になったのだから踏んだり蹴ったりだ。結局野口の選手寿命も短かったし、田中将大は日米通算190勝だかを挙げているとはいえ、星野に日本シリーズで酷使された翌年のメジャー1年目に、上記記事でも指摘されている通り肘を痛めたし、現在も年齢の割には衰えが早いのではないかと感じることもある。

 ダルビッシュ有大谷翔平がしばしば故障で長期間登板できない時期があることからもわかる通り、かつての投手たちより速い球を投げる現在の投手たちにかかる負担は昔の名投手たちより重いし、気候変動の影響で夏場の試合でのスタミナ消耗はかつてより厳しいと思われる。

 オリックスファンの少なくない割合の人たちは、今回の山本由伸の故障に関して、酷使などと言われるのは心外だ、投球間隔は十分開けていて大事に使っていると反論しているようだが、それでも投球数が多くなると故障が起きやすいといえるのではないか。それだけ投球術のメカニックが開発され、気候も厳しくなったために、「古き良き日本プロ野球」が戻ってくる日は来ないと考えるべきだろう。

 そういえば昨年のレギュラーシーズンでは読売が投手のローテーションを中5日で回そうとして失敗した。コーチを務めていた桑田真澄の発案だと言われているが、「信者」の多いらしい桑田の責任といえるのではないか。もちろん原辰徳の責任も重い。

 この原だの来年から阪神に戻ってくる岡田だのに、現代野球の要請水準に応える適応力があるかどうかは甚だ疑問だ。

 そういえば夏の甲子園高校野球だが、あれは今後気候変動が今よりさらに激しくなったら、もう開催が不可能になる可能性が高まってきたのではないか。奥川恭伸もそうではないかと疑っているが、高校野球で酷使された影響がプロに入って出ている選手は少なくないのではなかろうか。その点、佐々木朗希を甲子園に行かせなかった大船渡高校の國保陽平監督には先見の明があった。