kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

戦争の原因をNATOだけに求めるのは間違い/日本はチェスのプレイヤーではなく駒の側(小泉悠; ハフポスト日本版,2023/1/1)

 昨年(2022年)の大晦日に、ロシア軍がウクライナの首都・キーウ(ロシア名キエフ)にミサイルを撃ち込み、1人が死亡し、朝日新聞の関田航記者が軽傷を負うなどした。大晦日に軍事施設でもなく各国の報道関係者が多数泊まっていたらしいホテルにミサイルを撃ち込むとは、侵略者・プーチンはなりふり構ってなどいられないようだ。

 

www.asahi.com

 

 以下引用する。

 

キーウにミサイル攻撃か 1人死亡、朝日新聞記者1人含む20人負傷

真田嶺 2022年12月31日 23時42分

 

 ウクライナの首都キーウで31日、ロシア軍のミサイルによるとみられる攻撃があった。朝日新聞の記者2人が滞在するホテルも被害を受け、映像報道部の関田航記者(36)が足に軽傷を負った。病院で治療を受けている。

 キーウのクリチコ市長はソーシャルメディア「テレグラム」で、今回のキーウの複数の地区に対する攻撃で1人が死亡、日本人記者を含む20人が負傷したとしている。

 記者2人はキーウ中心部のホテルに宿泊していた。関田記者によると、攻撃があった当時、ホテルの敷地内の屋外にいて、がれきの破片があたり、右足のふくらはぎにけがを負ったという。

 自室にいた国末憲人編集委員(59)によると、31日午後2時(日本時間午後9時)ごろ、ホテルの外で2回ほどミサイルを迎撃するような音が聞こえた。その後、「ドカン」と大きな音がして、部屋の窓ガラスが粉々に砕けたという。(真田嶺)

 

朝日新聞デジタルより)

 

出典:https://www.asahi.com/articles/ASQD07RB8QD0UHBI01G.html

 

 しかし、この期に及んでロシアを擁護するのが伊勢崎賢治であり、伊勢崎は×××新選組と長周新聞との三者で「アホのトライアングル」を結成している。

 

 

 当然ながら、伊勢崎は非難の十字砲火を浴びた。

 

 

 伊勢崎は『長周新聞』でプーチンが引き起こしたウクライナ戦争を「侵略は許されないことだが、そこには理由がある」とかなんとか抜かしやがったもんな*1。侵略者を批判しないどころか侵略を正当化している。

 

 

 

 年が明けて元旦付の各メディアのウクライナ戦争関連記事では、ハフポスト日本版の小泉悠氏へのインタビューが大きく注目されている。何しろ4桁のはてなブックマークがついている。

 

www.huffingtonpost.jp

 

 記事を引用する前に嘆かわしいブコメについて触れておくと、小泉氏が、

今回の戦争に関しては日本のリベラル層は、ロシアを擁護する人が妙に多いんです。

と語ったことが妙に注目を浴び、リベラルがロシアを擁護したか否かがブコメで激論になったようだ。その影響で、下記ブコメが人気筆頭になっている。

 

ウクライナを見捨てれば、日本も同じ運命になりうる。軍事研究者の小泉悠さんは警告する【ウクライナ戦争】

日本のリベラルサイドがロシアを擁護しているというのは、このインタビューでも語られている /「我々はチェスのプレイヤーの方じゃないですよ、明らかに我々はチェスの駒ですよ」は肝に銘じるべき

2023/01/01 13:58

b.hatena.ne.jp

 

 しかし、上記ブコメで「日本のリベラルサイドがロシアを擁護している」というのは明らかなミスリードだ。小泉氏は「日本のリベラル層は、ロシアを擁護する人が妙に多い」とは確かに書いており、私もその通りだと思うが、間違っても主流ではない。朝日・毎日・東京各紙はロシア側には全く立っておらず、前述の『長周新聞』という毛沢東主義新左翼紙があるくらい、また政党でも親露系は弊ブログが「『右』も『左』もないがどちらかといえば右派ポピュリズム政党」と位置づけているものの、『長周新聞』の熱烈な応援を受けている×××新選組があるのみだ。ただ、一般の「リベラル」諸氏や想田和弘ら文化人の中に親露派が少なからずいるのは確かだから(弊ブログのコメンテーターの中にもおられる)、小泉氏の発言は間違ってはいないのだ。

 ただ、上記ブコメの後半はその通りで、そこが小泉氏のインタビューの核心部だ。はてブの人気2位と3位のコメントはそちらにのみ焦点を当てている。

 

ウクライナを見捨てれば、日本も同じ運命になりうる。軍事研究者の小泉悠さんは警告する【ウクライナ戦争】

超大国ぶってんじゃないよ」という話だと思う。日本もいつ巻き込まれるかわからない、ウクライナのように

2023/01/01 14:02

b.hatena.ne.jp

 

ウクライナを見捨てれば、日本も同じ運命になりうる。軍事研究者の小泉悠さんは警告する【ウクライナ戦争】

ブコメではリベラルがロシア擁護したしないでもめてるけど、そんなことよりここが重要だよな、「我々はチェスのプレイヤーの方じゃないですよ、明らかに我々はチェスの駒ですよ」

2023/01/01 14:29

b.hatena.ne.jp

 

 これがポイントだというのは、自民党・岸田政権が掲げている「軍事費倍増政策」は明らかに身の丈に合わない「超大国ぶりっ子」の政策であるとして岸田政権とその政策を批判するに当たっても有効な武器となり得る内容のインタビューになっているからだ。

 インタビューは非常に長いので、記事をいくつかに分けた上で一部を省略しながら引用する。

 記事本文の引用を開始する前に小泉氏の経歴に触れておくと、氏は早稲田大学大学院政治学専門科修了の政治学修士で、民間企業勤務、外務省専門分析員を経て、一時、ロシア科学アカデミー世界経済国際関係 (IMEMO RAN) 客員研究員を務めていた。このことは氏がロシア政府に認められた研究者であることを意味している。Wikipediaを参照すると、「ロシア科学アカデミーの会員になることはロシアの学者、研究者にとって名誉である」とのこと。つまり氏は間違っても親米親NATOの「御用学者」の類ではない。氏はその後、公益財団法人未来工学研究所客員研究員を経て、現在は東京大学先端科学技術研究センター(グローバルセキュリティ・宗教分野)専任講師。専門はロシアの軍事・安全保障とのこと。

 

 以下、記事の冒頭部分より引用する。

 

(前略)ウクライナで戦争が始まって以降、テレビでたびたび目にする軍事研究者がいる。東京大学先端科学技術研究センター専任講師の小泉悠さんだ。ロシアの軍事・安全保障を専門としている。年末に新著『ウクライナ戦争』を出版。発売前から重版がかかり、1226日までに累計45万部の話題作となった。

 

(中略)ハフポスト日本版では小泉さんにZoomでインタビューをした。現在進行形の戦争を著書にまとめた理由については、「NATOアメリカに問題がある」などとロシアを擁護する日本の識者の一部の声への反発があったという。モスクワでの研究経験もある小泉さんだが「いろいろな理由があるにせよ、今回のロシアの戦争は擁護できない」と言い切る。

 

ウクライナ戦争を日本に生きる私たちはどう捉えるべきかを質問すると、興味深い答えが返ってきた。まるで日本を超大国のように誤解している人がいるが、実際には日本も「チェスの駒」であり、超大国のような「チェスのプレーヤー側ではない」と指摘。「もしロシアのウクライナ侵略が成功して、国際社会がウクライナを見捨てた場合には、日本だって同じことが起こりうる」として、「それで本当にいいんですか?」と問いかけた。

 

出典:https://www.huffingtonpost.jp/entry/war-in-ukraine_jp_63abb122e4b0cbfd55de3e0d

 

 小泉氏がアメリカの責任論やNATOの東方拡大論など、一部で指摘される理由に基づくロシア擁護論に反発した理由が以下に説明される。以下再び引用する。

 

■20年前のイラク戦争と比べたときのギャップとは?

 

―― ロシア軍のウクライナ全面侵攻が始まってから1年を待たずに、現在進行形の内容を書籍にまとめた理由は何でしょう?

 

筑摩書房さんから「何とか年内に出しましょう」って話があったのが大きいんですが、自分としても2つの思いから本にまとめたいと思っていました。

 

1つには、今回の戦争が始まる前の2021年秋ごろから、ロシアがかなり大規模な軍事的動きをしており、軍事研究者の間で一大トピックになっていました。なので、この本を書き終わった9月の段階では、ほぼ1年この情勢に付き合っているんです。その間、メディアからの取材も多かったし、テレビカメラの前で相当いろんなこと言ってきました。でも、テレビ放送はどんどん流れていってしまうし、その都度、データに基づいて詳しくものが言えるわけでもない。自分で資料に当たり直して「この戦争はそもそも何だったのか」「何で起こったのか」ということを、ちゃんと語っておきたかったんです。

 

もう1つは、個人的に非常なショックがありました。僕が大学生だった2003年にイラク戦争があったのですが、あのときに日本のリベラル層は「アメリカはけしからん」「帝国主義的である」という批判を展開しました。その意味では今回、ロシアがやっているウクライナでの戦争も、アメリカがイラクを侵略したのと同じぐらい理不尽だし、もっと非人道的だし、アメリカよりも遥かに責められるべきじゃないかと私は思うんです。

 

ところが逆に、今回の戦争に関しては日本のリベラル層は、ロシアを擁護する人が妙に多いんです。「アメリカのウクライナ政策にこそ問題がある」といった論調ですね。これを私は残念に思っています。まずは「侵略している側、つまり相手を殴りつけて人を殺している側を非難して止める」というのを最優先に考えるべきです。本にまとめる中で「いろいろな理由があるにせよ、今回のロシアの戦争は擁護できない」という話がしたかったんです。

 

戦争の原因をNATOだけに求めるのは間違い

 

―― たしかに今回の戦争に関して日本でも「ロシアもウクライナもどちらも悪い」「ウクライナが抵抗を諦めるべき」という論を唱える人も見かけます。そうではなくて「経緯をたどると端的にロシアが悪い」と証拠を示したかったということでしょうか?

 

僕の中では「ロシアが悪い」ということは、いちいち論証すべき問題でもないんです。ただ「ロシアは何を考えてこんな戦争を始めちゃったのか」を論じたかった。

 

ロシア擁護の論法でいうと「NATO北大西洋条約機構)の拡大を進めてきたアメリカが悪い」となりがちです。ただ、私はこの本でも書いているように「そもそもプーチンNATO拡大を本当に心配していたのか」という点に着目したいんです。開戦前のプーチンの言説とはもっと民族主義的なもの、つまり「ウクライナはロシアの一部でなければいけない」という情念に強く彩られていて、NATO拡大の話は、飽くまでもその文脈の中で出てきます。

 

プーチンは、スウェーデンフィンランドNATOに加盟しても別に問題視しないし、既にNATOに加盟しているバルト三国を攻撃するわけでもない。問題視しているのは、ウクライナだけです。ウクライナには直近でNATO加盟する見込みもないし、NATOがミサイルを置くという話もないのに、あたかも明日もそうなるかのようなことをプーチンは言って、ウクライナに攻めていきました。

 

もちろん現在進行形の出来事なので、決定的な証拠はありません。ただ、少なくとも「戦争の原因をNATOだけに求めるのは間違い」というつもりで書いた本です。

 

出典:https://www.huffingtonpost.jp/entry/war-in-ukraine_jp_63abb122e4b0cbfd55de3e0d

 

 このあたりは、昨年末に読書ブログに公開した記事でも紹介した黒川祐次著『物語 ウクライナの歴史』(中公新書2002)に描かれたかつてのロシア皇帝(ことにピョートル大帝)の所業と、帝政ロシアの再現を夢見るとされる極右政治家・プーチンの強い志向を重ね合わせると、非常に説得力の強い指摘であるというほかない。

 昨年夏に読んだ朝日新聞国際報道部編『プーチンの実像』(朝日文庫2019; 単行本初出朝日新聞出版2015)で、プーチンの経済顧問を務めたアンドレイ・イラリオノフが、2014年にロシアがクリミア半島に侵攻して「併合」した後に朝日新聞の駒木明義記者に語った言葉も思い出させる。その内容が駒木記者によって昨年3月に「AERA dot.」から再掲されているので、以下に引用する。

 

dot.asahi.com

 

「まさか本当に全面戦争を始めるとは」

 

 ロシアがウクライナ侵攻に踏み切った224日、私はとても信じられない気持ちで一杯でした。同時に、今から7年前にこの事態を正確に予言した人物のことを思い出したのです。

 

 その名は、アンドレイ・イラリオノフ氏(60)。プーチン氏がロシアの大統領に就任した2000年から5年間、経済顧問を務めた人物です。

 

 当時の彼の主な仕事は、主要国首脳会議(当時はロシアも含めて「G8」と呼ばれていました)で、プーチン氏の代理として、事前の交渉や合意文書のとりまとめにあたる「シェルパ」と呼ばれる役どころです。プーチン氏からの信頼も厚い側近でした。

 

 私がイラリオノフ氏に会ったのは、201410月のこと。場所は、米国のワシントンにあるシンクタンクでした。このときまでに、イラリオノフ氏は完全にプーチン氏から離反し、最も厳しい批判者に転じていました。

 

 話は当然、プーチン氏が同年の3月にウクライナクリミア半島の併合を一方的に宣言したことに及びました。そのときに、彼は私に向かってこう断言したのです。

 

「侵略者は誰かに止められない限り、侵略を続けることを歴史が示している。ナチスドイツも、ソ連も、あなたには悪いがかつての日本もそうだった」

 

プーチンはこれでは終わらない。さらに先に進む」

 

「いつ、どこに向かって、どんな方法で進むかは予見できない。しかし、彼がここで止まることを示すような歴史の前例は一つもない」

 

 これこそが、今回プーチン氏がウクライナへの全面侵攻を始めたときに私が思い出した言葉でした。彼の予言は的中してしまったのです。

 

 正直に言えば、8年前の私は、彼の言葉にはまだ半信半疑でした。

 

 プーチン氏がウクライナクリミア半島を占領した理由として当時取り沙汰されていたのは、第1にかつてのロシア領を取り戻すことで国内の求心力を高めること、第2ウクライナとの紛争状態を作り出すことで、ウクライナ北大西洋条約機構NATO)に加盟できないようにすること――といったところでした。

 

 しかしイラリオノフ氏は、こうした説を一蹴しました。

 

「経済的理由、政治的理由、安全保障上の配慮、地政学的な理由で説明することはできない。すべてNATOが原因? そんなのは、ばかげた話だ!」

 

 イラリオノフ氏によると、プーチン氏を突き動かしているのは「そこに何か奪うものがあるから、奪う」という理屈であり、「それがどんなに高くつくかよりも、やったこと自体が重要」なのだという。

 

 突然権力と富を手に入れたものは「理性に従って行動するのではなく、子供時代のコンプレックスに突き動かされて振る舞うようになる」。その結果として、プーチン氏の場合は「帝国をつくりだそうとしているように見える」というのがイラリオノフ氏の見立てでした。


 今回のウクライナ攻撃をめぐって、私たちはさまざまな理由で説明しようとしています。
8年前にも言われたNATO拡大阻止。2024年の大統領選を視野に、求心力を高めようとしている。ソ連の再建。しかし、イラリオノフ氏の言うように、その根底にあるものが理性ではなく、プーチン氏自身の心の奥底に秘められた情念のようなものだとすれば、今回の戦争が最後ではないのかもしれない。

 

 そして、イラリオノフ氏が列挙した「侵略者」たるナチスドイツ、ソ連、戦前日本がたどった運命を思うとき、非常に暗い気持ちにならざるを得ません。

 

 イラリオノフ氏は、プーチン氏がクリミアを占領した後に、私たちが取材した20人以上の1人にすぎません。取材相手の共通点はただ一つ。プーチン氏と身近に接したことがある、ということです。

 

 旧国家保安委員会(KGB)の同僚、サンクトペテルブルクの改革派市長の右腕だったときのプーチン氏を知る人、モスクワで破竹の出世を遂げる様子を間近で見ていた人、日本の友人たち……彼らが語るプーチン氏の人間像は、驚くほど多様で「これが同じ人物のことだろうか」と思わせるほどです。

 

 プーチン氏は本当に謎が多い人物です。「なぜNATOに敵意を向けるのか」「無名の官僚から驚異の出世を遂げた秘密はなにか」「蛮勇を振るう性格はいつからか」「病的とも言える被害者意識の起源は」――こうした疑問を一つ一つひもといていくことが、今回のウクライナ侵攻の動機を知る手がかりになると思います。私たちが取材した側近の証言からは、その一端が垣間見えるはずです。(朝日新聞論説委員・駒木明義)

 

出典:https://dot.asahi.com/dot/2022030700057.html

 

 アガサ・クリスティのミステリに繰り返し出てくる「殺人は癖になる」を地で行く話だ。しかもかつてプーチンの信頼が厚かった元側近が、ウクライナ戦争が起きる7年前にプーチンの凶行を正確に予測しており、それが2015年(単行本)及び2019年(文庫本)発行の日本語の本にはっきり書かれているのだから説得力は絶大だ。伊勢崎賢治がいかなる妄言を繰り出そうが、耳を傾ける気など起きるはずもない。

 なお上記記事の著者・駒木明義氏は朝日新聞論説委員であり、朝日のウクライナ戦争報道の方向性に決定的な役割を果たしている記者だ。その駒木記者がこのように書くのだから、日本の主要なリベラルメディアにおいて、伊勢崎賢治・×××新選組・長周新聞のような「アホのトライアングル」に与する報道機関はほとんどないことが理解されよう。

 小泉悠氏のインタビューに話を戻すと、氏が「戦争の原因をNATOだけに求めることは間違い」だと言っていることによって、氏の言説への信頼感が増している。つまり、小泉氏はいわゆる「NATOの『東方拡大』などない」とは言っていない。それどころか、NATOの「東方拡大」も無視できない戦争の要因の一つであり得ると示唆していると読める。しかし、それが主たる要因ではない、原因の大半はプーチンの情念にあると小泉氏は言っているわけだ。

 そのあとに、日本が関係する部分が続く。

 

我々はチェスのプレイヤーではない

 

―― 日本ではSNSを中心に「ロシアが唱える正義」と「ウクライナの唱える正義」のそれぞれに味方をする人に分かれて、言い合いが絶えない状況が続いています。まるで、それぞれの国の代理戦争のような現状をどう見ていますか?

 

私も複雑な思いがあるんです。ロシアのことをずっと研究してきたので、ロシアという国のことは嫌いではないんです。ロシアの人々が持っている「冷戦後の世界に対する不満」は分からないでもない。やっぱり、ロシア人の目から見ると「これはアメリカに対して頭に来るだろうな」という場面もあるんですよね。

 

その一方、私は無力な一個人であって、別に世界を動かす政治家ではない。だから、私はやっぱり今回の戦争では「クレムリンの中から世界地図をどう塗り替えるか」と考える立場ではなくて、ロシア軍が攻めてきたことで日常生活が破壊されているウクライナ人の側に、どうしても自己投影してしまう部分があります。

 

私の中に、今回の戦争に関してウクライナびいきな部分ってのは確実にあります。ネット上でのロシアびいきな人とウクライナびいきな人の論争を見てると、やっぱりウクライナの人になびく部分があることは間違いありません。

 

ただ少し分からないのは、ウクライナもロシアも日本にとっては他人ですよね。ネット上で、なぜあそこまでヒートアップするのかは、分からない。ロシア語ができてロシアに留学してて、ロシアという国に大変思い入れがあるという人ならまだ分かります。でも、「ロシア語も分からないし、おそらくロシアも行ったこともないだろうな」って人達が、ものすごく熱心にロシアを擁護する。彼や彼女の中に、何か現状の世界に対する不満があって、現状変更勢力であるロシアをすごく魅力的に見せるのかもしれません。そういう人達がかなりの数、ネット上にいることは僕にはなかなか驚きではありました。

 

ただ僕は感情的にロシアを擁護する人に対しても、あるいは戦略論的に「ウクライナが抵抗を諦めて緩衝地帯になれば平和が保たれる」という話をする人に対しても、一言申し上げたいことがあります。それは、「我々はチェスのプレイヤーの方じゃないですよ、明らかに我々はチェスの駒ですよ」ということですね。

 

だからモスクワとか、ワシントンD.C.とか北京からの視点で「チェス盤の上のどの駒を取った、取られた」「この国は緩衝地帯にしよう」といった言説があるわけですが、明らかに日本はチェスをプレイするポジションの国ではないです。特に我々のような一般庶民はチェスをプレイする側ではなく、プレイヤーが動かす駒の側なんですね。

 

だからこそ、日本が超大国間の都合で「もう日本はアメリカと中国の間の緩衝地帯ね」みたいなことを勝手に決められたり、それに日本が逆らった結果として、どこか別の国が攻めてきて、我々が兵隊として戦わなければいけなくなったり、我々の生活が破壊されたりすることになった場合を想定してみましょう。そのとき、本当に「それが冷徹なリアリズムだよね」と言い切れるかというのは、僕は大変に疑問なんですよね。

 

「我々は弱いものである」「小さいものである」という観点から、そもそもこの戦争をまずは見なければいけないのではないのか。そこから私の今回の戦争に関する思いが始まってる部分があります。

 

(中略)

 

日本の立場はウクライナに近い。だからこそ

 

――ウクライナ戦争を、日本にいる私たちはどう見るべきかでしょうか。先ほど、「チェスのプレイヤーではなく駒の側」という点で日本もウクライナと同じと指摘されていましたが、どのような教訓を読み解けばいいでしょう?

 

(略)やはり今回の戦争を放置すると、日本の安全保障にとって良いことはないと思います。「ウクライナを説得して戦争をやめさせる」とか、「土地を占領された状態でこの戦争を終わらせればそれで第三次世界大戦の危機は遠のく。これこそが安全保障だ」って議論もあるわけです。でも、私はこの議論は二つの意味で同意できないんですね。

 

一つは「それで一時的に戦争が戦闘が止まることは確かでしょう。だけどそれがいつまで止まるんですか?」って話ですね。2014年に結んだ第一次ミンスク合意は3カ月ぐらいしかもたなかった。その後、2015年に第二次ミンスク合意を結んだけど、これも7年しかもたなくて、またロシアが攻めてきた。もし今回、イスタンブール合意などを結んでウクライナに「一部占領されてるけど我慢してくれ」と、ロシアとの間で停戦合意を結んだら数年は停戦できるのかもしれません。だけど、結局プーチンはその数年を戦力を再建する期間としか思わない可能性が非常に高い。

 

なぜならば、彼が開戦前に発表した論文を読むと、戦争の背景にあるのは「ウクライナを中立化したい」「武装解除したい」「ゼレンスキー政権を退陣させたい」というテクニカルな物ではありません。根本的に「ウクライナがロシアから独立している状態が気に入らないっていう情念が滲んでいるんです。

 

やっぱりプーチンに一時的な停戦を飲ませる」ことが、根本的解決にならないんだと思うんですよ。「ウクライナを説得して戦闘を止めさせれば解決する」という人は、プーチンが戦争する動機を政治的・軍事的なものだという前提に立っています。ウクライナがここで戦闘をやめて「NATOに入りません」と約束すれば、プーチンは満足して解決するという前提での議論だと思うのですが、僕はプーチンの言説を見る限り、そうは思えない。その意味でここで、ウクライナが停戦することは意味がないと思っています。

 

もう一つは「大国が核で脅しながら侵略を行った場合には、周りの国は見放す」という前例を作ってしまうのではないかということです。

 

ここでさっきの「我々はチェスの駒の側であって、プレーヤー側ではない」ということの意味に、もう一度立ち戻りたいのですが、大国同士の手打ちでどこかの国を緩衝地帯あるいは属国とすることで、勢力圏を共存するというビジョンは超大国の秩序構想なわけですね。

 

この超大国の秩序構想に同調する人は、無意識のうちに「日本は超大国だ」という前提で話している気がするんですよ。戦前の大日本帝国のときのように、世界ビッグ5の中に日本が入っているという前提で物を言ってる気がするんですね。

 

でも実際の日本の立場は、どちらかというとウクライナに近いんです。もしロシアのウクライナ侵略が成功して、国際社会がウクライナを見捨てた場合には、日本だって同じことが起こりうるということです。「それで本当にいいんですか?」と思うんです。

 

もし仮に日本が他国から攻撃を受けた場合でも「もう抵抗やめなさいよ、相手の軍門に下れば戦闘が止まるんだから」「世界経済にも迷惑かけるからやめなさい」みたいなことを他国から言われても、おかしくないと思うんですね。でも私はそうは言われたくありません。その意味で、今この場で、我々がウクライナを支えておくということに意味があると思っています。そういう意味で、この戦争は他人ごとではないという思いを強く持っているんです。

 

出典:https://www.huffingtonpost.jp/entry/war-in-ukraine_jp_63abb122e4b0cbfd55de3e0d

 

 プーチンの凶行から得られる教訓の一つは、「良い独裁」などあり得ないということかもしれない。

 安倍政権時代、岩田明子だの櫻井よしこだのといった安倍晋三の提灯持ちたちが「良い独裁」論を唱えて安倍の独裁を擁護していた。安倍に言わせれば安倍とプーチンは「同じ未来を見ていた」らしい。しかしプーチンは自らの凶悪な正体を露呈し、安倍は射殺された直後から安倍の生前には権柄ずくで抑えつけられてきた統一教会自民党とのどす黒い癒着問題が一気に噴出した。

 そして、独裁者・安倍が「保守派」たちに甘い夢を見させ続けている間に日本の国力はみるみる衰えた。今の日本が軍事大国路線を歩もうとするなど、自殺行為でしかない。軍事費の大幅増額なる政策自体に強く反対する必要がある。伊勢崎賢治や×××新選組や長周新聞などに対する批判と、軍事費増額反対の主張を両立させなければならないと考える次第。

 

 以下は蛇足だが、引用を省略した部分の中に、唐突に

大砲を大きな作戦の中でどのぐらい有効に活用できるか、大砲を操作してる兵隊がどれぐらい優秀かというのは、もう目に見えない。そうすると「来期の中日が勝つのか負けるのか」みたいな世界になってくるわけですよ。

という文章が出てきたので面食らった。「来期の中日」って何なんだよ、まさかプロ野球のドラゴンズのことじゃなかろうなと思ったら、そのまさかだった。上記引用文には下記の文章が続く。

 

これって誰も予想できないじゃないですか。11人の選手のデータはわかる。でも、監督の采配がどういうものか?相手チームの采配はどうか?バッテリーの相性?という話ですよね。そういう要素が絡み合って、野球チームの勝ち負けが決まっていく。それが予想できたら苦労はないわけですよね。

 

 どうやら小泉氏は中日ファンであるらしい。

 わがスワローズは2011年に落合監督時代の中日に大逆転優勝をさらわれた。日本一になた一昨年はカモにしたが、昨年はリーグ最下位だった中日に10勝14敗1引き分けと負け越して再び痛めつけられた。ことに高橋宏斗投手には勝ち星なしの4敗を喫した(防御率2.59)。調べてみると、高橋投手はトータルでは6勝7敗で、他のカードはDeNA戦に最多の6試合に登板して防御率はヤクルト戦とほとんど変わらない2.65だったが1勝4敗、広島戦は防御率0.47ともっとも良かったが1勝1敗、読売戦には4試合に登板したものの勝ち星なしの1敗で防御率3.42、阪神戦は登板なしで、交流戦で西武戦とソフトバンク線に登板してともに防御率3.00、西武戦に負けがついていた。ヤクルトは高橋投手と投げ合った投手が好投した試合では高橋投手に抑え込まれ、高橋投手を打ち込んだ試合では先発投手が打たれて勝ち星なしの4敗を喫した。

 ヤクルトにとっては2011年の恨みが今も骨髄の中日だが、ヤクルトは今年は何が何でも中日に勝ち越さなければならない。今年も中日に負け越すようでは、阪神DeNAのどちらかに優勝をさらわれる可能性が非常に高い。阪神には監督の交代、DeNAには昨年の健闘による自信というプラス要因がそれぞれあるからだ。

 2011年は、落合監督を辞めさせるために自軍の足を引っ張ろうとした中日球団の姿勢がかえってドラゴンズの選手たちに「今年を逃したら優勝のチャンスは当分めぐってこない」との危機感をかき立てて発奮させてしまい、そのせいでヤクルトが負けてしまったと私は信じている。そして未だにその時のトラウマからくる情念によって、中日にだけは負けたくないと強く思ってしまう。情念が先立つ点でプーチンと共通点があるかもしれない。