宮武嶺さんのブログに毎日新聞に載った佐高信のインタビューが紹介されている。
上記ブログ記事中からリンクされた毎日新聞記事への直接のリンクは下記。
このインタビュー中で、佐高は
と言っている。
その言葉には私も異論はない。2010年代の一時期を除いて、国政選挙の比例代表の投票先には社民党を選ぶことが大半だ。しかし、それは「社民党」という党名に対しての一票であって、社民党の掲げる政策には感心しないことが多い。
特に、福島瑞穂が社民党主に就任した2003年以来、どれだけ社会民主主義を訴えてきたかということが問題だ。
ほぼゼロだったというのが私の評価だ。
社民党といえば、時々資格取得のための勉強を中断してXをポストされるまことん氏を思い出すが、氏は参院選後に下記のポストをされていた。
私は参政党の躍進≒右翼排外主義への支持とは捉えておらず(※むろん彼らへの警戒・批判は必要)、社会や共同体全体の幸せより、よりパーソナルな幸せを志向する指向性が選挙結果に現れたとみています。そういう意味では、社民党、立憲のような社民・リベラルは、安易な減税主義とは一線を画し、続
— まことん@人生再構築中の就職氷河期 (@makotonch) 2025年7月21日
承前 公共性の重視、社会的連帯を軸とした相互扶助の路線を鮮明にすることこそが、ネオリベラルとも親和性が高いパーソナル至上主義へのアンチテーゼを提示する道になると考えます。
— まことん@人生再構築中の就職氷河期 (@makotonch) 2025年7月21日
しかし福島瑞穂が「安易な減税主義と一線を画し」たことなど一度もないのではないだろうか。
前にも弊ブログで紹介したことがあるが、福島は神野直彦の「ファン」ではあっても社民党の政策に社民主義を盛り込んだことは一度もなかった。
今年の夏は結構いろんな本を読んでいます。改めて神野直彦先生の本を読んでいます。中山千夏さんの本もたくさん読む。「芸能人の帽子」「幸子さんと私」「妖精の詩」「僕らが子役だったとき」「蝶々にエノケン 私が出会った巨星たち」「湿った火薬」「友だちの作り方」など。どれも本当に面白い。
— 福島みずほ 参議院議員 社民党党首 (@mizuhofukushima) 2017年8月30日
わたしは、神野直彦教授のファンで、社会民主主義の本を読んで来た。お弟子さんである井手英策さんの本を読む。多くの人が受益を実感できる社会へ! pic.twitter.com/Ck6WbemTUo
— 福島みずほ 参議院議員 社民党党首 (@mizuhofukushima) 2017年8月16日
このようには書くけれども、現実の社民党の訴えにはまず「消費税減税」が出てくる。まことん氏のいう「安易な減税路線」そのものだ。私は福島氏を「社民趣味者」に過ぎないとみている。余談だが私は宇沢弘文ほどには神野直彦を買わないし(菅直人政権時代に見せたような妥協的なところがあるため)、井手英策に対してはむしろ批判の方が先に立つ(某地方都市を「日本のスウェーデン」に擬した件や、前原誠司とつるんだことなどによる)。
税制については北守さん(藤崎剛人氏)のXが標準的な意見を時折ポストしている。
福祉国家を目指すうえでは負担の議論は避けられない。ざっくり言えば、税金は金持ちからしか取らん。そのかわりに貧乏人は死ぬも生きるも自己責任なのがアメリカ型。金持ちから多くをとるが、貧乏人も能力に応じて負担する。その代わり生存に関する基本的なニーズは政府が受け持つのがヨーロッパ型。
— 北守さん (@hokusyu1982) 2025年7月21日
福島社民党の政策はむしろアメリカ型に近いとしか思えない。まあ軍事費については明確に違うけど。
応能負担で集めて平等に分配すると、結果的に金持ちから貧困者への所得移転になるが、最初から金持ちから貧困者へ所得移転するのは(たとえば所得税や法人税の累進をきつくしたうえで分配に所得制限つける)は社会的な合意形成ができないのでほぼ不可能なようだ。
— 北守さん (@hokusyu1982) 2025年7月21日
単に上から下へ所得移転せよ、では、そうしなければならない強力なロジック、たとえばナショナリズムが必要とかそういう話になってくる。だから、みんなが能力に応じて負担するのだから皆がその果実を享受する権利があるという、情緒によらない分かち合いのロジックが重要。
— 北守さん (@hokusyu1982) 2025年7月21日
ヨーロッパの消費税が高いのはこの意味でも重要。いろいろな事情で生活ができなくなった場合、たっかい消費税払ってんだから生活保護受けたろ!となる。まあ現実はヨーロッパでも福祉バッシングはあるけど、スティグマ化については少なくとも日本よりはマシだと思う。
— 北守さん (@hokusyu1982) 2025年7月21日
ここらへんは納税者の側の動機づけに関する立論だけれども、あまりにも直接税ばかりに頼るとビルトインスタビライザー機能ゆえの税収の変動が大きいために税収の変動が大きくない間接税を組み合わせる必要が生じているのではないかというのが私の仮説だ。で、税収が増える時は主に好況期なのでインフレであることが多く、そこで減税だの臨時の給付だのをやったらますますインフレが加速するのではないかというのが最近よく言われることだ。だが現在は与野党ともにインフレを加速させる方向の政策ばかりを議論している。
福島瑞穂の話は戻ると、上記北守さんの一連のXと、未だに「消費税減税」が最初に出てくる福島社民党とは距離があるよなあと思わないわけにはいかない。
今回の参院選、福島氏が比例にラサール石井を出したこともあって、情勢調査結果からいっても得票率2%のクリアは間違いないだろうと思っていたが、結果は比例の得票率は2.06%であって、ラサールを出さなければ政党要件を失っているところだった。ここまでギリギリになろうとは正直言って思わなかった。
だからといって、既に書いた通り「ラサールを擁立して勝ちに行った福島瑞穂は偉い!」などと持ち上げる気には私には到底なれない。
現状の延長線で行けば、現在69歳の福島氏が引退する時が国政政党としての社民党の終焉の時であることは目に見えているからだ。
いや、3年後に72歳を迎える福島氏が2028年参院選で議席を守れるかどうかも怪しいかもしれない。
その時、ついに社会民主党は社会民主主義政党になれないまま終わってしまうのか。その事態を阻止するために福島氏は今後どう動いて次代の指導者にバトンタッチするのか。今後はそれが問われる。