kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

立民右派支持層の人間が、酒井菜摘氏は「区長選からほとんど票伸ばせてないからね この固定票頼みなら、5万強集められたら負けてしまう」などという嘘八百のXをリポストしていた(怒)

 Xを見ていると、何やら立民右派支持の連中の中には東京15区の結果をあまり喜んでいないかのように見える人たちが結構いることがわかる。

 それは立場の違いだから仕方がないが、事実を捻じ曲げるのだけは止めていただきたい。下記がその悪例。

 

 

 本当かよ。

 昨年12月の区長選で、酒井菜摘の得票数は34,292票、得票率21.0%だった。候補者は5人。

https://www.city.koto.lg.jp/610102/kuse/senkyo/kekka/kotokucho/r5kuchosenkyokaihyo.html

 

 昨日の衆院東京15区補選で、酒井菜摘の得票数は49,476票、得票率29.0%だった。候補者は9人。

 

www3.nhk.or.jp

 

 昨年12月の江東区長選と比較すると、酒井氏の得票は得票数にして44%、得票率にして38%増えている。これのどこが「区長選からほとんど票伸ばせてない」のだろうか。でたらめを垂れ流すのも大概にしてもらいたい。投票率40%の選挙で得票5万弱なので、投票率が上がる本選では相手に5万強の得票があったとしても、その程度なら上回れる数字だ。前回2021年衆院選での柿沢未途の票を上回れるかといえば、これはかなり難しいけれども、今の東京15区に当時の柿沢に匹敵する集票力を持つ政治家など誰もいない。

 上記Xをリポストしたのは「ちょろ」という人だ。どうやら地方在住らしいこの人は一昨日にこんなポストをしていた。

 

 

 そりゃ島根の方がより重要だというのはその通りだが、都ファの脅威にさらされている東京、しかも隅田川の東側、特に江東区に住むリベラルにとっては今回の補選は死活問題だった。城東地区は非常に保守的で、リベラルが弱いのだ。

 私も江東区地方自治に詳しいわけでは全くなく、昨年4月の区長選をめぐる一件に大嫌いな柿沢未途が関与していたことからやっとこさ少しは関心を持つようになったレベルに過ぎないから偉そうなことは全くいえないのだが、江東区の立民は昨年12月の区長選で酒井菜摘氏が都ファの大久保朋果と選挙戦をやったために分裂してしまったらしい。

 

note.com

 

 記事に書かれた錯綜した事情はいまだに理解できていないが、立民区議が属する「江東新時代」という会派には、音喜多駿の妻を含め右派系野党の人たちが結構いるらしい。彼らは昨年12月の区長選ではたぶん大久保現区長を応援したのだろう。一方、立民の人たちは酒井氏を支援したが、今年1月にその立民会派は分裂した。酒井氏はその前に区長選出馬のために区議を辞職しているので、現在は立民の区議は高野勇斗区議ただ一人しかいないらしい。高野氏は今回の補選で全力で酒井氏を応援したけれども、分裂して現在も音喜多の妻たちと同じ会派にいる人たちは、昨年の区長選では酒井氏を応援していたというのに、今回は中立を守ったようだ。さすがに乙武を支援したりはしなかったようだが。私は、小池百合子系列の区長に楯突く真似を続けていたら区議としてやっていけないから、そのようにしたい人たちとは袂を分かつことにしたとか、そんなところではなかろうかと勝手に想像しているが、それが当たっているかどうかは全くわからない。

 なお、現在の「江東新時代」のメンバーは下記URLで確認できる。

https://www.city.koto.lg.jp/650103/kuse/kugikai/shokai/kaihabetsu/7841.html

 

 そして都議会では、都ファと自公とが一体となって立民と共産の都議の小池都知事批判の発言を議事録から削除する動議を出すなどしている。おそらくこれは小池百合子の差し金であって、小池が強権的な姿勢をむき出しにしている。これに特に強硬に反発しているのが武蔵野市選出の五十嵐衣里都議だが、リベラル政治家には特に有利な武蔵野市選出の人だから先鋭になれるという側面も、もしかしたらあるかもしれない。

 ともかく、昨年12月の酒井氏の区長選立候補によって、区の党会派が分裂するという代償を支払わされた立民が、再度酒井氏を立てて小池百合子が推す乙武洋匡と対決したのだから、これは絶対に負けるわけにはいかない選挙だったのだ。なお立民に残った高野区議は野田佳彦派の人で、野田自身も保守派でありながら共産党幹部(小池晃ら)と同じ演壇に立って酒井氏の応援演説をやった。私は野田の政策は全く評価しないが、こういう野田の側面だけは評価できる。こういう側面は泉健太にはないのではなかろうか。

 こういう背景のある選挙だったから、万一今回の補選で負けるようなら、墨東の6区での立民は再起不能の大ダメージを受けたのではないかと私は思っている。それを「東京で負けても痛手は少ない」とは、いったい何を言ってくれるんだよと腹が立つ。

 しかも、データを無視した思い込みだけで「酒井氏は区長選からほとんど票伸ばせてない」などと書かれた嘘八百のXをリポストする始末だ。これには頭に血が昇った。

 東京15区の立民と共産との共闘は、立民にとっては共闘をやらなければ勝てないくらい党勢が弱いからであり、共産にしても昨年春に社民と一緒に支援した区長選の候補(私も投票した)が得票率12.8%で「おっさん東大生」の17.3%に負けるくらい弱くなったから、両党とも勝つためにはこの形態しかないからやったまでの話だ。私自身は立民の右側は嫌いだし、共産党も支持しない、あえていえば社民党寄りで(比例票はたいてい社民に入れる)、立民リベラル派にも一定のシンパシーを持つという人間だが、こうしなければ勝てなかったことはよく理解できる。

 そのくらいはわかってほしいと、リベラル不毛の地である東京都江東区に住む人間としては強く思う。

 確かに右側の三分裂に助けられて勝った選挙ではあるが、次の本選でまともに戦うためにはこのチャンスを逃すわけには絶対にいかなかった。しかも今回の選挙結果を見る限り、本選では保守がすんなりまとまれるとは到底思われない。私としては、一番脅威なのは、自民と日本保守党が手を引いて維新の金沢結衣を保守統一候補として出してくる場合だと思うけれども、それが実現するとは思えない。橋下徹なんか維新は東京15区から撤退しろなんて言ってるしね。自民はといえば、7月の都議補選で山崎一輝が三戸安弥に勝てるかどうかも怪しいんじゃないか? 2021年の衆院選でも江東総支部が支援した今村洋史という愛知県から引っ張ってきた極右候補は、柿沢未途、井戸まさえ、金沢結衣に3人に負けて4位に沈む大惨敗だった。

 東京15区はそういう選挙区だ。確かに本選でも酒井氏が勝つことは決して容易ではないが、本選では決して勝てない選挙区かといえばそうでもない。補選を除く過去9度の衆院選で非自民の候補は4勝5敗だ。もっとも残念ながら本選でのリベラル候補の勝利は過去には一度もなく、今回の補選で勝った酒井氏はその最初の例になるべく本選で挑戦するわけだが。そのためにはその前段階である今回の補選には絶対に負けられなかった。さすがにこれだけ好条件が揃った補選でも勝てなければ本選で勝つことなど到底おぼつかない。

 今回の酒井氏の勝利はまた、他の城東5区にも勇気を与えるものではないだろうか。そのことは他地域の人たちにもわかってほしいと思うのだけれども。

超極右の日本保守党は百田尚樹と河村たかしの政党 (suterakusoさん)

 下記記事のコメント欄より。

 

kojitaken.hatenablog.com

 

 suterakuso

保守党、何かの記事を見て、ああ、そうだった、と思ったのですが、知名度的には、百田と有村の党というより、百田と河村たかしの党なのですよね。つまりは、愛知署名捏造事件で鉄砲玉に罪をぬすくりつけて(←この言い方でよかったかな?と思い、念のためググったら、どうも福岡、熊本、山口、愛媛あたりの方言っぽいですね。)、しらばっくれてる、見事までに美しい国、ニッポンな連中の政党ということですね。まあ、この調子で悪目立ちして、保守についての世間一般の正しい認識を広めつつ、先鋭化していってほしいとも思う一方で、やはり由々しき事態ではありますね。だからこそ、奴らと権力との繋がりが解明されるべきだと思います。

 

 そうそう、百田尚樹の印象ばかり強いですが、河村たかしの党でもありましたね。河村といえば元祖「減税真理教」の親玉ですから、敵意がますますかき立てられます。河村はもはや誰も覚えていないであろう「鍋パーティー」にとってのラスボスで、そもそもあれは河村の「減税日本」に対抗するつもりで立ち上げたのでした。その途端に東日本大震災と東電原発事故が起き、私もそちらの記事ばかり書くようになってうまく立ち上げらなかったのですが。しかも河村は極右だし小沢一郎一派だしと、本当に良いところが何一つありません。

 なお「ぬすくりつける」は大阪・兵庫でも岡山でも香川でも聞いたことがありません。確かに中国・四国の西部と九州北部の方言のようですね。ネット検索では特に山口と福岡が目立ちますかね。ご存知でしょうが、標準語では「なすりつける」と言います。

 

自民党が東京15区に候補者を立てなかったことで、自民党が被るネガティブな影響はいろいろあるが、最大のポイントは日本保守党に場所を与えたことだろう。(中島岳志氏のXより)

 検索語「乙武 5位」でググったら、中島岳志のXがヒットした。私はこの人があまり好きではなく、ブログでもしばしば批判してきたけれども、いつだったか白井聡を批判した時のように(残念ながらこの時にはせっかくの批判を寸止めにしてしまったのだけれど)、たまに的を射た指摘をすることがあるので、無視できない学者だ。

 

 

 従来は、三春充希氏が指摘していて私も追随した通り、自民党が極右の支持層まで押さえていたので極右政党が進出できなかった。都知事選であれほどの得票があった石原慎太郎をもってしても。

 でも現在は、岸田文雄が中途半端な権力闘争を安倍派に仕掛けている。岸田はなぜか森喜朗萩生田光一には手をつけないで、塩谷立などの集票力の低い議員をターゲットにして離党に追い込むなど、いかにも岸田らしくせこいことをやっている。その上、東京15区で自前の公募候補を立てよようとした江東総支部に待ったをかけて、小池百合子の息のかかった候補を15区に押しつけようとした。この主犯はドリル小渕優子であって、この一件は彼女の無能さをよく示しすものだ。ところがその候補がなんと乙武洋匡だった。これによって、立民の酒井菜摘候補が突如本命にのし上がるとともに、超極右政党である日本保守党につけ入る隙を十分に与えた。自民党選対(ドリル小渕)が犯したたった一つの失着からこんなことになるのだから、政界はまさに「一寸先は闇」だ。まあ今回は同時に光、つまり酒井菜摘氏の当選ももたらしてくれたわけだけれども、それはあくまでこちら側、つまり自民党にとっては敵から見ればの話だ。ドリルが自民党江東総支部に当初の予定通り候補者の公募をやらせておけば、ここまで保守党に侵食を許す結果にはならなかっただろう。

 そう考えると、「自民党が被るネガティブな影響はいろいろあるが、最大のポイントは日本保守党に場所を与えたことだ」という中島岳志の指摘には説得力がある。

 

 

 私がNHKの画面から見る限り、「ほとんど」というほどではなく3分の2くらいだったように思ったが、想像していたよりもずっと歩留まりは高かった。それより、島根1区で「公明票は半々に割れている」というのが驚きだ。実際の出口調査の詳細なデータにはまだ接していないけれども、開票速報が始まる前に下記三春氏のXを見て、島根1区は接戦になるかもな、と私は思っていたのだった。

 

 

 一般に補選は本選よりも投票率がずっと低くなるので、島根1区の「1.17ポイント減」という数字は脅威ではないかと思ったのだ。しかし選挙結果は大差だった。東京15区は島根と長崎の中間だったので、公明票がかなり動いたものの、その絶対数はやや不足気味、つまり寝てしまった人たちが結構いるんだろうなと思って、酒井候補を応援する私としてはポジティブに捉えていたのだが、公明票乙武への歩留まりの高さにはさすがに驚いた。つまり中島が書く通り、「現在の自民党執行部よりも、小池知事に尻尾を振った形になっている」。実際、ドリル小渕は江東総支部の意を汲む意向を同支部に伝えていたので、本当に動かなかったのだろう。その結果、自民党支持層から乙武にはたいした票が流れなかった。この理由は弊ブログで再三指摘してきた通り簡単な話で、下手に乙武に当選されてしまうと本選でも出てきて自分たちが推したい候補が入り込めないからだ。しかし公明党はそんな江東区自民党支部の意向よりも、小池百合子に尻尾を振る方を選んだわけで、この党の執行部の腐敗堕落ぶりは本当にどうしようもないと思う。

 

 

 そりゃ大阪万博なんかにあんなに執着したらそうなるに決まっている。

 

 

 上記Xに下記の反応があった。

 

 

 そりゃ中にはそういう人もいるだろうがしょせんn=1であって何の反論にもならない。公明支持層の多数が乙武投票に動いたことは出口調査の結果にはっきり示されている。それでも乙武は大大大惨敗したのだ。

 

 

 この八王子市長選についてはよく知らないが、調べてみると自公候補と元都ファの2人による事実上の三つ巴で、その片方に立民や共産を含む野党がついた。滝田氏というその候補のリードが一時伝えられたものの、小池百合子が元都ファの2人を敵に回して自公に助太刀し、その効果で自公候補が勝ったとされているようだ。

 八王子市長選当時、私は中央線沿線の八王子だから墨東の下町とは違って小池の影響力も限定的なのかと思っていた。なぜなら同市長選は、都ファ候補の圧勝だったやり直し江東区長選とは違ってかなりの接戦だったからだ。

 しかし衆院東京15区補選を終えた今思うのは、時間の経過とともに自民党への支持も小池百合子の神通力も、かなり激しい勢いで落ち続けているのではないかということだ。八王子市長選は江東区長選と衆院東京15区補選の間のタイミングで行われたからああいう結果になったのではないか。それに土地柄としては、萩生田光一が君臨する八王子は中央線沿線とはいっても武蔵野市などとは全然違って、むしろ東京東部に近い保守優勢の地域らしい。そして江東区長選で3万4千票だった酒井菜摘は、東京15区補選で一部は須藤元気に票が流れたと思われるにもかかわらず4万9千票強を得た一方、小池に推された乙武は2万票にも届かなかった。

 つまり私は、八王子市長選ではまだ残っていた小池百合子の威光が、目黒区長選や衆院東京15区補選ではすっかり神通力を失ってしまったのではないかと考えている。

日本保守党に関する宮武嶺さんとの賭けは弊ブログの敗色が極めて濃厚。白旗を掲げます

 そういえば日本保守党の評価をめぐって宮武嶺さんと賭けをしていたのだった。

 

blog.goo.ne.jp

 

 以下引用する。

 

 古寺多見さんと国政選挙で1議席取れるか賭けている?!(笑)日本保守党の極右飯山候補が4位に滑り込み、この人やこの人を推した百田尚樹代表や有本香幹事長あたりが比例で出たりしたら、衆院選参院選で本当に議席を取るかもみたいな勢いを見せたのは嫌な感じでしたが。

 

 この件では白旗を掲げておきます。まさかこんな結果になるとは、それも地元の東京15区の国政選挙でこんなことになるとは悪夢にも思いませんでした。この結果だと、少なくとも参院選比例区での日本保守党の議席確保はどう考えても不可避ですね。それも複数議席を獲る可能性があります。それどころか衆院比例ブロックでも議席を獲る可能性があります。いくら飯山が保守党で突出した候補で、他にたいした候補がいなくとも、衆参の比例で何議席か獲れてしまいそうですね。

 過去、私が今回ほど入れ込んだ選挙はありませんでしたが、その結果がまた、夢にも思わなかった「東京の城東(墨東)地域の国政選挙でのリベラル候補者当選」と、悪夢にも思わなかった「ど真ん中トランプ的右派、イスラエル万歳」(by さとうしゅういちさん)の超極右政党の本格的躍進とが同時に起きるなんて。なんという強烈な光と闇のコントラスト!

 信じられません。

さとうしゅういちさん(広島)曰く、衆院東京15区補選での乙武洋匡(小池百合子)の惨敗は「アメリカンポストモダニズムの終焉」

 下記記事に広島のさとうしゅういちさんからコメントをいただいた。コメントにお礼を申し上げます。

 

kojitaken.hatenablog.com

 

 生存ユニオン広島 (id:lifeunion)

アメリカンポスモダニズムの終焉だと感じました。
ここで言うアメリカンポスモダニズムとは米国で言えばヒラリー・クリントン、欧州ならマクロン、日本なら小泉純一郎さんや立憲民主党右派、旧みんなの党あたり。区長だと渋谷区の長谷部区長ですね。同性パートナーシップ推進の一方で野宿者排除女性トイレ削減。副区長の野党女性区議侮辱。
多様性尊重と新自由主義の組み合わせ。広島で言えば湯崎英彦知事もそうでしょう。あくまでお金持ちや中国米国などの外資第一の枠での多様性尊重。関東大震災で殺された朝鮮人や野宿者には冷淡。
基本、多様性尊重と新自由主義の組み合わせが小池知事や乙武洋匡さん。それがど真ん中のトランプ的右派、イスラエル万歳の保守党に負けた。どちらもろくでもないがこういう流れは不変でしょうね。

 

 そういえば今年の米大統領選で「もしトラ」が現実化する可能性が現状の延長線だと半分以上あって、何とか逆転してもらいたいものだけれどもバイデンもバイデンだしなあ、という状況なのだった。

 綱渡りの日々が続くというか、なんというか。

衆院3補選で立憲民主党対日本維新の会の「野党第一党」争いにひとまず決着がついたが‥‥

 衆参3補選は立民の3戦全勝、自民の2不戦敗を含む3戦全敗、維新の2戦2敗に終わった。昨年4月に行われた衆参5補選での立民4戦全敗、自民4勝1敗、維新1勝とは大きく様変わりした。

 三春充希氏は島根1区がもっとも重要で、自民がここを落とすと衆院選の10議席を失うことになる一方、立民は支持率の桁が変わる(これまで1桁だったのが2桁になる)と言っていた。

 三春氏は島根を立民が取るなら3選挙区は立民の全勝になるだろうと予測していたフシがある。実際その通りになったが、3選挙区の中で立民の勢いが一番弱かったのは東京15区だった。同区(というか私が居住する選挙区)で当選した酒井菜摘候補も確かに圧勝ではあったが、それでもその勝ちっぷりは他の2選挙区ほどではなかったのだ。

 東京15区に関しては、選挙戦前から真偽不明の噂が飛び交っていた。曰く、自民党の調査だと立民の酒井菜摘候補がものすごくリードしているとか、立民の調査では一番集票力があるのは須藤元気だったので彼を野党共闘候補にしようとしたが共産党に断られたので酒井候補を立てたとか、維新の調査結果によると、投票先に酒井候補と立候補を予定していた共産党の小堤東氏を挙げた人を合計すると20%になり、日本保守党の飯山陽を挙げた人も9.2%いたとか、いろんな話があった。

 そしてそれらはことごとく当たっていた。仮に須藤元気野党共闘候補として受け入れられて立候補しても当選したに違いないと思わせる選挙結果だった。だが須藤氏はリベラル左派か保守か不明の人で(本人は元号新選組と参政党の2党に親近感を持つと言っている)、かつおそらく日本版MMT理論に基づく長谷川羽衣子流のものと思われる須藤氏の経済政策は共産党のそれとは相容れなかった。少し前の『しんぶん赤旗』に新選組の経済政策を批判した記事が掲載されたことを想起されたい。また須藤氏はワクチン陰謀論者でもある。このような人が「野党共闘」候補になれなかったのは当然といえば当然だ。結局、オーソドックスなリベラル系候補である酒井氏が「市民と野党の共闘候補」として擁立された。この「市民」表現に懸念や違和感を表明する向きもあったが、酒井氏はそんな懸念を蹴散らす圧勝という結果を出した。これに関しては、「市民」の意識もあれば、もう10年以上も住んでいるため「区民」の意識も少なからず持つようになった私には、そんなのはどっちでも良いじゃないかとしか思えないのだが、こだわる人はこだわるようだ。選挙でものをいったのは酒井氏が持つ不思議な浸透力の強さで、2度の区議選でもそれにものをいわせて高位当選した。また昨年12月の区長選でも、当選した都ファ系の大久保朋果には完敗したものの得票率21%の2位につけた。それらの選挙で区民から好印象を得ていたために、立民の内部調査で酒井氏が高スコアを出したといわれている。そして酒井氏は、区民の「反共」意識など懸念するほどもないことをはっきり示した選挙結果を勝ち取った。

 ただ酒井陣営は先行逃げ切り型の戦いで、あと伸びはそんなになかったように思われる。選挙戦の終盤では維新の金沢結衣が無能な党代表・馬場伸幸の「立憲共産党」連呼に足を引っ張られる形で失速したのに対し、その手の極右的なあり方ならもっと純粋な形でそれを示している日本保守党の飯山が伸びた。維新の失速は良かったが、保守党の予想だにしなかった伸びは、今後の日本の政治にとって大きな懸念材料となる。私は選挙の前には飯山など泡沫候補としか見ておらず大いにみくびっていたので、多大なショックを受けた。この流れは私には読めなかった。自民党支持者のうち、故安倍晋三を熱狂的に支持する極右層は、維新にでも都ファにでもなく主に保守党に流れたとみられる。そしてその極右層は私の予想をはるかに超えて分厚かった。一方ライトな自民党支持者は、支持できる人が誰もいないなら地元の須藤さんでも、という感覚で相当の割合が須藤氏に流れたのかもしれない。

 ここで三春氏のXをリンクして、3選挙区の最終結果を示す。

 

 

 

 

 最後の東京15区は埋め込みリンクだと途中までしか見えないので、以下に全候補の得票を改めて示す。

 

酒井菜摘 49,476票(得票率29.0%)

須藤元気 29,669票(得票率17.4%)

金澤結衣 28,461票(得票率16.7%)

飯山陽  24,264票(得票率14.2%)

乙武洋匡 19,655票(得票率11.5%)

吉川里奈   8,639票(得票率 5.1%)

秋元司    8,061票(得票率 4.7%)

福永活也   1,410票(得票率 0.8%)

根本良輔   1,110票(得票率 0.7%)

 

 改めて書くが、飯山陽の得票率14.2%という数字は大きな衝撃だ。私が思い出すのは昨年4月の区長選であって、その選挙で私が投票した共産・社民支援の候補の得票率12.8%を、今回の補選での飯山の得票は上回っている。極右の脅威はここまできたか、との思いだ。しかも維新の元親玉の一人である松井一郎*1都ファの女帝である小池百合子などもまぎれもない極右なのだ。

 とはいえ東京15区で酒井候補が勝った影響も、島根1区の効果には及ばないながらも相当に大きい。仮に酒井候補が金沢候補に負けていたら、立民と維新との野党第一党争いは1勝1敗で決着がつかず、維新の脅威が強い状態が続いたに違いないからだ。だが酒井候補が圧勝したことによって、野党第一党争いには決着がついた。三春氏が予想したように、今後は立民の政党支持率が維新に水を開ける可能性が高いと私も思う。

 立民の場合は、これらの流れに代表の泉健太が対応していけるかどうかが大きな課題になる。

 また声を大にして言いたいのは、今年9月の立民代表選でも3年前と同じようにリベラルと保守のガチンコ対決をやってもらいたいということだ。現状だとどうしても現職の泉健太が有利になってしまうかもしれないが、妙な同調圧力が強く働くような事態だけは絶対に避けるべきだ。

 最後に、橋下徹の下記Xについて少しコメントしておく。

 

 

 橋下はここで、維新は東京15区から撤退せよと言っている。

 これに喜ぶ立民支持者がいたとしたらその人は馬鹿である。橋下は上記Xに続いて、下記2件のXを発信したからだ。

 

 

 上記Xの最後に「もちろん立憲候補者を応援することもない」と橋下が言っているところがポイントだ。

 

 

 実際にこれをやられたら最大の打撃を受けるのは酒井氏である。なぜなら今回の東京15区補選は右側が都ファ・民民連合軍、維新、超極右に三分裂してくれた上に、小池百合子が所詮は補選だからと候補者をケチって乙武洋匡を出してくれたためにたまたま勝てた選挙であって、これは宮武嶺さんや私が好む言い方でいえば典型的な「勝ちに不思議の勝ちあり」の結果に過ぎないからだ。仮に金沢氏に東京15区から撤退されてしまうと、その分だけ自民あるいは保守党のチャンスが増え*2、酒井氏には不利になってしまうのである。

 激戦を勝ち抜いた酒井氏は現在は疲労困憊かもしれないが、次のピークへの登攀(とうはん)はこれまで以上に険しいと思われる。周囲の人々にも十分なサポートが求められるのであって、変な政局的な動きにかまける余裕など全くないと指摘しておきたい。

*1:橋下徹の場合はやや「商売右翼」的な印象を受ける。橋下は極右色よりも新自由主義の色合いの方が濃い。

*2:昨夜も書いたが、7月に行われる東京都議補選で自民党山崎一輝が上田令子系の三戸安弥に負けた場合、自民党の江東総支部からはまともな候補が出せないとみなされて、本選では今回に続いて立候補しそうな飯山が最大の敵になる可能性がある。万一酒井氏が飯山に負けるような事態になれば目も当てられない。

乙武洋匡は酒井菜摘の得票の半分にも満たずに5位に沈むことがほぼ確実

 NHKの開票速報が進んでいる。

 

www3.nhk.or.jp

 

 出口調査では2位以下が須藤>金沢>乙武>飯山だったが、今の開票速報だと乙武はどうやら5位に沈みそうだ。

 そうなってくれたら、自民党が「困った時の小池百合子頼み」に出る手も今後は通用しなくなる可能性が出てくるのではないか。

 もちろん、単に乙武が弱すぎるカードだった可能性もあるが、小池の神通力が失せる方向に進めば、維新の惨敗(あれはどう見ても党代表の馬場伸幸が金沢結衣の足を思いっきり引っ張ってたよな)と合わせて、右側の政治勢力分布が大きく変わるかもしれない。

 その際、厄介な存在になりそうなのが日本保守党だ。あんな超極右というか極右ポピュリズム政党をのさばらせてはならないと思うが、あの党のかなりの程度の勢力伸長はどうやら避けられそうにもなさそうだ。

 それと、7月の都知事選と同日に行われる都議補選に自民党山崎一輝が出馬を予定しているが、その対立候補上田令子系の三戸安弥が出てくるようだ。上田令子系は都ファからの分派だから反小池百合子の右派新自由主義政治勢力と思われるが、補選で三戸が当選すれば、こと「反都ファ」の一点で、最近都議会で都ファと自公の連合軍に目の敵にされているらしい立民・共産と共闘する可能性も出てくるかもしれない。三戸は2019年の区議選初当選が16位だったが2期目はトップ当選だった。今回衆議院議員になることが決まった酒井菜摘は三戸と同じタイミングの区議選初回当選がいきなり6位で、2期目は選挙カーを使わずに3位だったが、1期目から2期目への伸びでは三戸はその酒井をも上回っている。Xで調べたところ、三戸には「信者」までついているようだから、今後江東区内の若手右派かつ反小池系都議として頭角を現す可能性がある。右派の人だから、今後手強いライバルになるかもしれない。気の早い話だが、7月の都議補選では三戸が山崎一輝に勝つのではないだろうか。そうなると「御三家」(柿沢家、木村家、山崎家)の残り1つも手痛いダメージを受けることになるから、長年因襲的な「御三家」の支配でよどんでいた江東区の政治状況が大きく変わるかもしれない。

 また、西の維新、東の都ファという二都を壟断する二大右派地方政党にも今後衰退の傾向が現れ始める可能性がある。

 国政でも、維新はどうやら立民の野党第一党を脅かすことに失敗し、大阪万博の問題も抱えているから、今後の維新は久々に本格的な退潮のトレンドに入りそうだ。維新はこれまで極右と新自由主義の二刀流でやってきたが、こと極右の分野ではそれに特化した日本保守党に敵いそうにないことが今回の東京15区補選で看て取れた。

 私はともに門前仲町で行われた最終街宣で、保守党の伸勢と維新の衰勢を感じた。馬場伸幸の「立憲共産党」連呼は聴衆には刺さらず、候補者の金沢結衣に自らダメージを与えただけだった。私は馬場がこの言葉を発した場面には居合わせなかったが、保守党と比較してあまりにも勢いの感じられない維新の最終街宣を見て、ああ、これは酒井候補が金沢候補に負けることはまずないな、と思ったのだった。あとの懸念は、執念で電話がけをしてきた小池百合子に支援された乙武洋匡(なにしろ私の家にはこの2人のそれぞれの音声が録音された電話が一度ずつ、計2回かかってきた)がどこまで伸びるかだったが、江東区民は賢明な判断をした。つまり小池や乙武には大して動かされなかった。乙武は酒井候補の得票の半分にも満たない大大大惨敗に終わることがほぼ確実な情勢だ。

 今回の補選が、自民や維新ともども小池百合子の「終わりの始まり」になるかもしれないと思った。