kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

村山政権時代の「戦後50年決議」の審議で、侵略行為や植民地支配という言葉を認めず、「おわび」も削除せよと強硬に主張していた小沢一郎の新進党(呆)

かつて存在した小沢一郎の「自由党」について、「小沢信者」ブログがこんなことを書いている。
http://sensouhantai.blog25.fc2.com/blog-entry-1277.html(2013年6月18日)

ほぼ小沢一郎さんの個人票ともいえる600万人の強固な票が、かつてはあった。

この時代のことは私は詳しくないが、おそらく自民党支持層の中の穏健派や、自主独立派など小沢イズムに賛同した人たちを核にして、なんぼ何でも自民党の長期独裁はもうダメだろうと2大政党を指向した人たちなどが集まったものと想像する。


このブログ主の認識は誤りである。自由党にせよ、それ以前に存在した新進党にせよ、自民党よりもさらに「右」に位置する政党だった。先日ブックオフで買った中村政則著『戦後史』(岩波新書, 2005年)より。


戦後史 (岩波新書 新赤版 (955))

戦後史 (岩波新書 新赤版 (955))

 戦後五〇年決議

 一九九五年六月九日、衆議院で「戦後五〇年決議」が採択された。重要箇所のみを引用すると、先の「戦争等による犠牲者に追悼の誠を捧げる。また、日本の近代史上における数々の植民地支配や侵略的行為に思いをいたし、我が国が過去に行ったこうした行為や他国民とくにアジアの諸国民に与えた苦痛を認識し、深い反省の念を表明する」。ちょっと読んだだけでは、すぐ頭に入ってこない、あいまいな文章である。

 当時の内閣は村山連立(社会党)政権で、自民党は与党に属していたが、自民党内には「大東亜戦争肯定論」の立場にたつ「民族派」と日本は敗戦で生まれ変わったとする「戦後改革派(ニュー・ライト)」との対立があって意見がなかなかまとまらなかった。他方、野党の新進党(九四年一二月結党、党首海部俊樹、幹事長小沢一郎は、侵略行為や植民地支配という言葉を認めず、「おわび」も削除せよと強硬に主張した。与党の社会党や野党の共産党は、侵略戦争、植民地支配は歴史の事実であって、そのキーワードを盛り込まない決議は意味がないと主張した。両党の違いは、共産党が謝罪と補償を強く主張し、社会党は明言を避けた点にあった。

中村政則『戦後史』(岩波新書, 2005年)277頁)


小沢一郎の立場は、自民党保守本流よりも安倍晋三歴史修正主義勢力にずっと近かった、いや歴史修正主義者そのものだったのである。「小沢信者」は、たった18年前の歴史さえもまともに認識できないらしい。


なお、中村政則の『戦後史』からは、出版後まだ8年しか経過していないとは思えないほど無惨に色あせてしまった本、との印象を受けた。「郵政総選挙」の4か月前、2005年5月に刊行された本だが、経済や労働問題に対する目配りが弱い。引用文は第4章第4節「新国家主義の台頭 − 『戦争』『歴史』『教科書』」の冒頭に置かれているが、新保守主義に対する批判は強くとも、新自由主義に対する批判は通り一遍のものにとどまっているのである。

著者の中村政則は、Wikipediaを参照すると、

「最後の講座派」と呼ばれていた。

とあるが、少なくとも『戦後史』を執筆した時点では転向済みだったようだ。


Wikipediaには、『沖縄タイムス』2010年3月9日付記事を出典として、こんなことも書かれている。

国立歴史民俗博物館展示プロジェクト委員(新常設展示室「現代」担当)。沖縄戦における集団自決問題で、「最高裁でまだ判決が出ていないので、慎重にするべきだ」と発言(→大江健三郎岩波書店沖縄戦裁判、家永教科書裁判)、展示から軍命や強制があったとする説明が削除される一因を作り、高嶋伸欣から「大いに反省すべき」、林博史から「レベルが問われる」など、批判を受けた。


中村政則は、

九条の会」傘下の「九条科学者の会」呼びかけ人を務めている

そうだが、その人にしてこのていたらくである。これでは日本の右傾化がどんどん進むはずだ。


中村の『戦後史』では、2002年の小泉訪朝あたりまでは小泉純一郎に若干の期待を寄せていたらしいことを告白していたり、関岡英之の『拒否できない日本』(文春新書, 2004年)を肯定的に引用していたりして目を覆いたくなる。もっとも後者に関しては私も以前同じ誤りを犯していたから偉そうに批判できる筋合いはないのだが、「最後の講座派」だった人がこのていたらくで良いのかとは言いたくなる。

こんな「戦後民主主義」支持の「左派」の脇の甘さが、中村の『戦後史』出版の7年後にイザヤ・ベンダサンサン(山本七平)の名を冠した賞の受賞歴を誇る孫崎享が書いた『戦後史の正体』のようなトンデモ本をベストセラーにしてしまったのではないかと思える今日この頃である。