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古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

高村正彦がまた暴言「9条2項守れは法匪」(しんぶん赤旗)

先日来、私は共産党がいつから立憲主義を自らの憲法観とするようになったのか疑問を投げかけているが、自民党についてはこの党が立憲主義を奉じたことは一度もないといえそうだ。

高村自民副総裁また暴言/「9条2項守れは法匪」

高村自民副総裁また暴言
「9条2項守れは法匪

 自民党高村正彦副総裁は24日、東京都内で講演し、政府による集団的自衛権行使容認の憲法解釈を批判し戦力不保持を明記した憲法9条2項の条文を守れと主張する政治家、法律家にたいし「憲法本来の目的を忘れた法律屋、法匪(ほうひ=法律の知識を自らのために悪用する者)だ」と非難しました。

 高村氏はこれまでも、「憲法学者は9条2項の字面に拘泥する」などの暴言を繰り返してきており、「反知性主義」などと厳しい批判の声が上がっていました。今回の発言にも批判が高まるのは必至です。

 高村氏は講演で、「国民の命を犠牲にしてまで、憲法9条2項の条文を守れというような考えをしてはならない。そのような解釈をする人は法律家ではなく、憲法本来の目的を忘れた法律屋、法匪だ」と言い放ちました。

 さらに、駐留米軍の合憲性を争った1959年12月の最高裁判決(砂川判決)は集団的自衛権など問題にしていないにもかかわらず、同判決が「憲法上、国民を守るために必要な措置を取ることは許容されていると明言したものだ」と強弁。「これがもっとも重要な法理だ」として、砂川判決さえあれば憲法9条の解釈変更はすべて許されると絶対視しました。

 高村氏は、「100の学説より一つの最高裁判決だ。これが立憲主義だ。憲法9条3項となったと言っても過言ではない」などと暴論を展開しました。

しんぶん赤旗 2015年11月25日)


どっかの「リベラル」の言葉を借りれば「イッちゃってる系」のトンデモ「立憲主義」である。もっともその「リベラル」が「イッちゃってる系」と評するのは、もっぱら安倍晋三ら「超保守」であって、高村正彦は「イッちゃってる系」の対象にはならないという大甘ちゃんぶりであるのだが。もちろん私にいわせれば高村は「イッちゃってる系」の極右政治家である。もはや高村に安倍晋三と変わるところは何もない。

ところで昨日、水島朝穂著『はじめての憲法教室 - 立憲主義の基本から考える』からいくつか引用した記事を書いたが、書き忘れていたことがあったので追加しておく。それは、安倍晋三が第2次内閣発足早々に言い出したものの世論の反対に遭って沙汰止みになった憲法96条改正について、安倍にそれを教唆したのはその当時「立憲主義を理解している」と「リベラル」氏がキャーキャー嬉しそうに言っていた、もとい評していた橋下徹であったとの事実だ。私の見たところ、橋下がTwitterで「立憲主義」という言葉を使っていたというそのことだけで、大甘ちゃんの「リベラル」氏は「橋下くんは立憲主義を理解している」と自分に都合良く解釈してしまっていた。

しかし、同じ2013年に憲法学者の水島氏は橋下に対して前記「リベラル」氏とは全く異なった見方をしていた。以下『はじめての憲法教室』から引用する。


 これもゼミ生から教えられたのがきっかけだが、大阪市長橋下徹氏のツイッターに見る憲法認識の危うさである。安倍首相は九六条改正の理由として、「世論調査で五割以上の人が壊憲に賛成しているのに、改憲発議を国会議員の三分の一で阻止できるのはおかしい」と、繰り返し述べている。安倍首相が「九六条先行改正」に前のめりになっていた時期は、衆院五三議席の「日本維新の会」共同代表・橋下氏の強いプッシュが影響していたとわたしは見ている。ゼミ生のひとりが、タブレット端末で、橋下氏をフォローしていて、四月一六日八時一八分のツイートをわたしに教えてくれた。そこには「憲法九六条改正だ。九六条は、国民の判断を問うこともできない規定となっている。憲法改正する権限は国民主権そのもの。憲法九六条は国民主権を制限し過ぎだ」*1とあった。かくもおおらかに「民意」や国民主権の絶対性を主張できる橋下氏は、司法試験の知識としては格別、国民主権などの憲法の原理的問題について本気で考え、悩んだことがないのではないか。学べば学ぶほど、人は悩むものだからである。

 憲法立憲主義について真剣に考えていけば、民主主義だから、あるいは国民主権だから何でも正当化できるわけではない。あえて単純化すれば、民主主義は「民意だから」、立憲主義は「民意にもかかわらず」ということになる。橋下氏や安倍氏は「民意だから」を突出させ「民意にもかかわらず」の仕組みをもつ憲法の改正ハードルを下げようとしているのである。

水島朝穂『はじめての憲法教室 - 立憲主義の基本から考える』(集英社新書,2013)177-179頁


安倍や橋下は立憲主義を蔑ろにしている、というわけである。そんな橋下がTwitterで「立憲主義」の文字を使っただけで「橋下くんは立憲主義を理解している」と好意的に解したのが「リベラル」のブロガー氏だったわけだが、そんなことを言ったら高村正彦だって

「100の学説より一つの最高裁判決だ。これが立憲主義だ。憲法9条3項となったと言っても過言ではない」

と言っているのだから、「立憲主義を理解している」ことになってしまうのである。